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事例から見えたOpenStackのビジネス優位性と人材育成の方向性―OPCEL ビジネスサミット開催


 OpenStackスキルの認定試験「OPCEL」の配信を2015年10月に開始したLPI-Japanは昨年の12月6日、東京・港区のコンラッド東京 アネックスにて「OPCEL ビジネスサミット 2016」を開催した。「新たなビジネスを切り開くOpenStack~クラウドネイティブなビジネスを活かした差別化と人材育成のために」と題したこのイベントでは、OpenStackの活用や普及に取り組む先進企業・団体から貴重な事例などが発表された。本稿ではその内容をレポートする。

OpenStack導入のメリットはスケーラビリティ・コスト・セキュリティ

 オープニングには、主催のLPI-Japanでテクロノジ-・ディレクターを務める和田真輝氏が登壇。OpenStackの利用には「スケーラビリティ」「コスト」「セキュリティ」の面でメリットがあることを紹介した。

LPI-Japan テクロノジ-・ディレクター 和田真輝氏
LPI-Japan テクロノジ-・ディレクター 和田真輝氏

 クラウドと聞くと大規模システムをイメージしがちだが、実際には数万人規模のシステムだけでなく、Web用途の中規模システム、研究・検証用途の小規模システムなど幅広いのだという。クラウド構築は、用途やビジネスに見合った規模から始めて、ビジネスの拡大に応じてスケールさせるのが現実的。OpenStackは一般に想像するより小規模から始めることができ、必要に応じてリソースを増加して容易にスケールできる。和田氏はこの点をもって、スケーラビリティをOpenStackのメリットの1つに挙げた。

 コスト面のメリットもある。OpenStackはオープンソースソフトウェア(OSS)であることに加え、OpenStack導入に向けた試用や機能評価にはハイスペックのハードウェアを必要としない。サンプルアーキテクチャでのハードウェア要件はCPU1~4個、メモリ8GB、NIC2枚、ディスク100GBであり、標準的な仕様のサーバで試用・評価することが可能だ。

 また、総務省の調査によれば、クラウドを利用しない大きな理由は「セキュリティへの懸念」だったという。海外にデータセンターを置くクラウドでは、その国の法律によっては情報開示が要求されるリスクもあると和田氏は言う。そのため、セキュリティが重要視される機密情報はOpenStackをベースに構築された国内クラウドサービスやプライベートクラウドの上で取り扱うことが望ましいと述べた。

 講演の最後に、和田氏はLPI-Japanが実施しているOpenStackスキルの認定試験「OPCEL」を紹介。その特徴を「ディストリビューションニュートラルであること」を挙げた。OpenStack Foundationによると、OpenStackが稼働しているOSはUbuntu、CentOSなどさまざまであり、特定のディストリビューションに依存していない。そのため、LPI-Japanが実施しているOPCELもディストリビューションニュートラルであるとした上で、OPCELはあくまで「OpenStackを利用してクラウドを構築、運用、保守を行う技術力を認定する試験」(和田氏)であるとアピールした。

OpenStackが稼働しているLinuxディストリビューションは多種多様
OpenStackが稼働しているLinuxディストリビューションは多種多様

OpenStackの最新動向~OpenStack Summitとコミュニティ活動の紹介

 続く基調講演では、日本電信電話株式会社 NTTソフトウェアイノベーションセンタ第三推進プロジェクト 主幹研究 水野伸太郎氏が、昨年10月にスペイン・バルセロナで開催されたイベント「OpenStack Summit Barcelona 2016」の内容を紹介し、OpenStackコミュニティの最近の動向を紹介した。

日本電信電話株式会社 NTTソフトウェアイノベーションセンタ第三推進プロジェクト 主幹研究 水野伸太郎氏
日本電信電話株式会社 NTTソフトウェアイノベーションセンタ第三推進プロジェクト
主幹研究 水野伸太郎氏

 そもそもOpenStackは、2010年6月にクラウド基盤を構築するOSS開発プロジェクトとしてスタートした。以来、全世界で188カ国から数多くの開発者が参加している。開発には個人でも法人でも、どのようなフェーズにでも自由に参加可能だ。現在は非営利団体OpenStack Foundationがコミュニティの中立性を維持し、多くの企業が公式スポンサーとして参加してその運営基盤を強固なものとしている。

 OpenStack Foundationは年に2回、OpenStackコミュニティの全体会議としてOpenStack Summitを開催している。直近はこの講演で水野氏が紹介したバルセロナ開催のもので、5,200名が参加した。

 OpenStack Summit Barcelona 2016の基調講演では「The World runs on OpenStack」をテーマに、さまざまな業種でOpenStackが利用されていることが発表されたという。5,500社に対して行ったアンケートによると、OpenStackを導入している企業の80%以上がIT以外の業種であり、従業員数が5,000名以下の企業も半数近くに上る。用途も、IaaS以外に、NFV(Network Functions Virtualization)、仮想ストレージ、ビッグデータ分析基盤など大きく広がっており、具体的な事例も紹介された。

OpenStack導入企業の80%以上が非IT企業
OpenStack導入企業の80%以上が非IT企業
中小企業での導入も進んでいる
中小企業での導入も進んでいる
用途も様々
用途も様々

 翌開催2日目の内容からはマルチクラウド対応のデモを紹介。OpenStackは、仮想サーバや仮想ストレージなどの管理層となるコントローラノードを中心に、APIを介して上位のアプリケーション層、下位の実行層を開発できるオープンなアーキテクチャをとる。共通APIが提供されているため、OpenStack準拠であればサービス業者が異なっても、複数のクラウドで横断的に稼働できるアプリケーションを実現できるのだという。

 そのほか水野氏は、OpenStackはこれまで4月と10月の年に2回リリースされてきたが、それが2017年からは2月と8月の年に2回に変更される発表があったことを、大きなニュースとして取り上げていた。

 OpenStack Summit Barcelona 2016の報告に続いて、水野氏はNTTグループにおけるOpenStackへの取り組みに話を進めた。NTTグループでは、プライベートウラウド、パブリッククラウド、SI・サポートビジネスなど幅広い領域でOpenStackを活用しており、積極的にコミュニティ活動も行っているという。自身が所属する研究所では3名のコアレビューアを擁しており、最新のリリースにも数多くの貢献。エンジニア育成の一環としてコミュニティ活動に参加しやすい環境を整え、勉強会なども実施しているとのことだ。

 OpenStackはOSSであるため、バグを見つけてもすぐに自分たちで修正できる。しかし、そうした独自パッチが増えると、バージョンアップ時の作業が増え、管理コストが大きくなる。バグ修正などでコミュニティに貢献し、プロジェクトを活性化することが、結局はコスト抑制につながるのだ。

 水野氏は最後に「開発者だけでなく利用者も積極的にコミュニティ活動に参加してほしい」と述べ、日本OpenStackユーザ会を紹介。2010年に発足した同ユーザ会は29の企業・団体社が協賛しており、会員は1,700名以上。MLを使った情報交換や各種イベントの開催などの活動を行っている。

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OpenStack導入により、迅速かつ標準準拠のIT基盤を実現

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この記事の著者

坂井 直美(サカイ ナオミ)

SE、通信教育講座の編集、IT系出版社の書籍編集を経てフリーランスへ。IT分野で原稿を書いたり編集したり翻訳したり。

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