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ノンフィクションライター・酒井真弓さんにとっての“推し活”!? 2年間の女性リーダー訪問を振り返る

 2022年8月、SUBARU 辻裕里さんへの訪問から幕を開けた連載「酒井真弓の『Enterprise IT Women』訪問記」。この連載では、まだまだ少ないとされる情報システム部門の女性リーダー(本連載では親しみを込めて『Enterprise IT Women』と呼んでいる)にスポットを当て、ノンフィクションライター 酒井氏が女性リーダーの取り組みやその企業の注力ポイントを探るものである。毎月更新を続け、2024年9月時点で第27回まで公開中だ。この間、Enterprise IT Womenを集めた「オフ会」も開催。本連載の編集を担当する編集部の小山が酒井氏とこの2年を振り返った。

最初は迷いがあったものの、異業種の状況に衝撃

──早いもので連載が始まってから2年が経ちましたね。毎月いろんな企業に行って取材してきました。まずは、この2年間を振り返っていかがですか?

 最初に「この連載をやりませんか」とお話をいただいたときに、率直に「なんで女性に限って取材をしなきゃいけないのか」という疑問がありました。男性も女性も子育てなど、いろんな制約がある上で働いているのは変わらないはずなのに、どうして女性に絞るんだろうかと。子育てや家庭のことなどを聞くことで、女性はそういうポジションなんだと色付けしてしまう気もありました。それに、私自身は子どもがいるわけではなく、家庭の制約がないので、そんな私でいいんだろうかとも思いましたね。

 正直、最初は迷いがある中ではありましたが、一番最初にインタビューした辻さんが新たな気づきを与えてくれたんです。取材で辻さんはある工場の資料に「高齢化・女性化」と書かれていたことを紹介してくれました。このときに初めて、まだまだ女性の活躍できる場が少なかったり、特別扱いされていたりと、私がいるメディア業界とは違う状況にあることを知りました。これだけでなく辻さんの取材を通して、女性のリーダーにフォーカスして記事を出すことは意義があることなんだと感じることができたんです。

 そこからは、取材対象の方の人生を想像したりして、お茶を飲みながらのようなインタビューができるようになりました。だから、今はやってよかったなとすごく感じます。

──辻さんとの取材で受けた衝撃が、原動力につながったということですね。

 その後に取材させていただいたみなさんも本当に魅力的で、女性だからではなく、ITの人材としてスペシャリティをもって頑張っている人たちなので、そういう人を応援したい気持ちになりました。私にとっては“推し活”に近い感覚です。

──酒井さんの取材に毎回同席していて、取材対象の方が心を開いてお話いただいているのも印象的です。

 実はこの連載をするまで、男性のCIOなどへの取材が多く、女性への取材回数がそこまで多くなくて少し心配もありました。でも、皆さんが真剣にお答えいただくので、今はむしろ楽しいです! 本当は取材後に、お茶に行ってもっと深く話を聞きたいと思うくらい(笑)。

──記事を書くときにどんな方に読んでほしいと思っていますか?

 情シス部門の女性の方はもちろん、女性を部下にもつ上司の方にも読んでほしいと思っています。私はもともと情シスを3年間していたのですが、情シスから別の部署に異動するときに男性の部長から「正社員として女性の部下をもつことは初めてだったんだよね。最初はびくびくしていた」と言われたんです。初めて女性社員を部下にもつことを心配する方もいるのかなと思うので、そういう方々の参考になればという思いでも書いていますね。

連載から他企画に発展 女性リーダーが集うイベントも開催

──これまで2年間取材してきました。印象に残っている回はありますか?

 毎回の取材を全部覚えているので、どれも印象に残っていますね。思い出深いものとしては、中学生の頃から大好きで愛用している資生堂に行けたのはうれしかったです。地方取材が多く、タクシーが見つからなくて炎天下を歩くことも少なくないので、肌ケアには欠かせないんです。

 それに、櫻井さんの取材では、公用語を英語にしてERP刷新に取り組んでいることにも驚きました。グローバルな会社なので、チームの中にグローバルな方もたくさんいるから、英語からやるという徹底ぶり。「これを必ず成功させるんだ」「グローバルと一丸となってやっていくんだ」という姿勢を感じられましたね。現場の方は大変かもしれませんが、いい取り組みだなと思っています。

 あとは、2年前の「Data Tech 2022」で、私がモデレータを務めたパネルディスカッションにパナソニックの黄地さんとセブン銀行の西嵜さんに登壇してもらったのも、楽しくて思い出に残っていますね。控室のときから初めて会った気がしないほど、盛り上がって、本番も和気あいあいとできて、とても楽しかったです。

──連載から派生したものでいうと、2023年末にはそれまで取材した方々を集めた「オフ会」を開催しましたね!

 本当に幸せな時間でした。取材だとどうしても皮をかぶってしまうこともあると思うのですが、「オフ会」ではそういうのもなく、みなさんお友達みたいな感じで話していましたよね。そんな光景をみて幸せな気持ちでいっぱいでした。

 「女性の情シスリーダーが社内に多くないからこうやってお喋りしたのも初めて」と言ってくださる方もいました。「明るい色の服も着た方がいいわよ」というアドバイスもあったりしましたが、社内ではなかなかない会話なんじゃないかなと思います。だから、情シスのリーダーとして奮闘している方々が横でつながる場を作れたのはすごく嬉しかったです。またやりたいですね!

──ぜひまたやりましょう。新たに取材した方もいらっしゃいますし、パワーアップしながら恒例のイベントにしていきたいですね。

 記事が“名刺代わり”みたいな感じで、皆さん初対面の方が多いはずなのに、会が始まる前から話が盛り上がっていたり、深い悩み相談ができたりしたんだと思います。みなさん、忙しいなか時間を作って参加してくださっているので、会話のショートカットに記事が役立っていたらうれしいです。

──これから取材してみたい方はいますか?

 最近は現場リーダーの方にお話を聞くことが多く、現場感ある話も大好きなのですが、大企業の情シス部長やCIO,CDO,CISOとして引っ張っていく女性にも会ってみたいです。私たちも知らない歴史のことも含めて、どうやって現在の地位を築いたのか聞いてみたいと思います。

 最近は、居酒屋で上司の自慢話を聞くのが苦手と感じる若手もいるようですが、私はむしろ聞きたい方なんです。だから、遠慮せずに自慢話をしてほしいですね。頑張ってきたことをもっと知りたいし、私自身にも取り入れたいし、読者に伝えたいなと思います。

情シス部門の女性リーダーを募集中! 酒井真弓さんが訪問します

連載「酒井真弓の『Enterprise IT Women』訪問記」で取材にご協力いただける方を募集しています。自薦・他薦問いません! 部長として組織を牽引している方、現場リーダーとして日々奮闘している方など、ぜひ心当たりある方はEnterpriseZine編集部宛にご連絡ください。確認後、取材をお願いしたい際には編集部よりご連絡いたします。

取材・寄稿企画をドシドシ募集中です!

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この記事の著者

小山 奨太(編集部)(コヤマ ショウタ)

EnterpriseZine編集部所属。製造小売業の情報システム部門で運用保守、DX推進などを経験。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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