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2011年版 自治体ソリューションの動向とユーザーニーズ調査 56.0%がセキュリティを懸念、地方自治体がクラウドに対して抱く期待と不安

  2011/05/18 00:00

市町村合併、財政状況の悪化、住民サービス要求の高まり。様々な課題を抱える地方自治体の世界でクラウドが大きな期待を集めつつある。今年以降、本格化を予測する声もある自治体クラウドとそれらを取り巻く環境について、「2011年版 自治体ソリューションの動向とユーザーニーズ調査」をまとめた矢野経済研究所の松枝氏に聞いた。

コスト削減の切り札として期待を集めるクラウド

矢野経済研究所 松枝秀如氏
株式会社矢野経済研究所
情報通信・金融事業部 
主任研究員 松枝 秀如氏

―昨今、ノンコア領域からコア領域へとクラウドが活躍の場を広げていますが、その代表的な例として自治体クラウドが注目を集めていますね。

一番の動機は、やはりコスト削減ですね。どこの自治体も財政が厳しい状況ですから、運用やメンテナンスに掛かるコストの削減を期待できるクラウドに期待を寄せている自治体が多いようです。現時点で実際に利用している自治体は少数ですが、5年以内に10倍程度にふくれあがると予測するベンダーもいます。当面は、都道府県、政令指定都市など、ある程度の人口と予算を持った自治体から普及が進んでいくと予想しています。

―勝手なイメージではあるのですが、なんとなく自治体とクラウドの間にはギャップも感じます。

業務内容こそ異なりますが、効率化を目的としてシステム導入が進んできた点では、一般企業と同じです。自治体によってシステム化の度合いは様々ですが、1万人程度の都市にもシステムは入っていますし、業務に必要不可欠な存在であることに違いはありません。メインフレーム、オープン化、という道を辿って、現在はクラウドに注目が集まっているという状況です。

-なるほど。自治体クラウドといった場合には、どのようなシステムが提供されるのでしょうか?

自治体やベンダーによって定義は異なりますが、本調査では、戸籍や印鑑登録などの情報を管理する住民情報ソリューション、電子申請や情報公開などを支援するポータル・ソリューション、人事給与や財務情報を管理する内部情報ソリューション、高齢者福祉や児童手当を扱う保健福祉ソリューション、水道や電子調達を管理する公共事業ソリューションの5つを自治体ソリューションと定義しています。この定義自体は、これまで各自治体が導入してきたシステムを区分したもので、クラウドとは直接関係ありませんが、今後、これらの機能(ソリューション)が提供されていくことになるでしょう。

―従来、パッケージとして提供されていたこれらのソリューションが、今後はクラウド上で提供されるようになるということですね。

いいえ、完全なパッケージと呼べるものはそれほど多くはありません。むしろ、基本的にはカスタマイズされたソリューションと考えるほうがよいと思います。例えば、一般企業であれば人事給与や財務情報などのシステムは多くの企業で共通しているので、パッケージ化は比較的容易ですが、現在のところ、住民情報システムの利用者はあまり多くありません。総務省が推進する住民基本情報ネットワークとの関係もあるので、完全なパッケージ化は現実的に難しい。

もちろん、ベンダーとしては同じ仕組みを流用できれば利益率は高くなりますから、可能な範囲で共通化を進めていることは事実です。ただし、一般企業で使われているソフトウェアとは異なり、最低限の機能をまとめたパッケージをベースに、各ベンダーが機能を追加したり、あるいは削除したりといったカスタマイズを行うことで対応しています。

クラウド普及、やはり課題はセキュリティ

―さて、今回は自治体クラウドについてのレポートをまとめられていますね。

もともと、今回の調査の目的は、自治体におけるクラウド導入やコンビニエンスストアでの納税など新しい動きが見られる自治体向けソリューション市場の実態について、ユーザー・ベンダー双方の視点から明らかにすることでした。自治体クラウドについては、導入を考える上での課題※について8つの選択肢から複数回答で尋ねましたが、最大の懸念は、やはりセキュリティ。調査対象である全国の300の自治体の56.0%が課題として挙げました。

これまで自庁内のサーバーに置いていた住民情報などを、県外、市外といった自庁外に出すことに抵抗を覚える自治体は多いようです。自治体によっては、市議会、県議会の承認を求められるケースもあります。自分達の市町村以外の土地に情報を出して良いのか、第三者に情報を預けて良いのかといったところが懸念であるようです。

―アンケート結果では、コストパフォーマンスを課題としてあげる自治体も多いのですね。

クラウド導入はコスト削減につながるものとの期待が大きいため、実際の価格を予想より高いと感じる場合もあるようです。もちろん、サービス自体が立ちあがったばかりなので、ベンダーの価格設定には改善の余地があるかもしれませんが、市場の構造を考えた場合に、大幅な値下げが難しいことも事実です。

現在、日本に存在する自治体の数は1,700あまり。獲得できる顧客の数には限りがあるわけです。値段を1/10にするなら、10倍の顧客を獲得しなければなりませんが、こと自治体向け市場においては難しい。現実的には、付加価値を付けて単価を維持するといった取り組みをしていくことになるでしょうが、自治体クラウドがビジネスとして成り立つか、ベンダー側も模索しているようです。

―クラウド化によって低価格化が進めば、小規模自治体の開拓を期待できるのでは?

コスト次第だと思います。自治体のなかにはシステム予算がほとんど付かないところもあるようです。そうした場合は、新しいシステムに置き換えることは容易ではないでしょう。例えば、今のシステムと比較してコストがどれくらい安くなるか、品質がどれくらい上がるのか、導入による効果を具体的に示すことができるか否か。ユーザー側のメリットをいかに打ち出せるかどうかがベンダー側の課題になるでしょうね。(次ページへ続く)

(※) 株式会社矢野経済研究所「2011年版 自治体ソリューションの動向とユーザーニーズ調査」

調査期間:2011年2月、調査対象(集計対象):全国の都道府県及び市区町村300団体

調査方法:電話アンケート形式、「導入を考える上での課題」および「導入の理由」は複数回答

 

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