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第2回 システム開発プロジェクトにおけるユーザの協力義務(後編)

  2014/08/01 00:00

 「紛争事例に学ぶ、ITユーザの心得」。今回は、前回ご紹介した東京地方裁判所 の平成16年3月10日判決を元に、ベンダのプロジェクト管理義務についてお話ししたいと思います。この連載は主としてユーザの方向けに書いていますので、中には、「ベンダの義務なんて知らないよ。」とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんね。でもベンダにきちんとしたプロジェクト管理をしてもらう為には、やはりユーザにベンダを選定する目とベンダに協力する姿勢が必要です。

ITベンダのプロジェクト管理義務

 まずは前回と同じ判決からベンダのプロジェクト管理義務について触れた部分をご紹介しましょう。前回も触れましたが、この裁判はあるユーザ企業が自組織の業務系システムをITベンダに依頼したが、要件の変更や追加を繰り返したことで、プロジェクトが頓挫してしまったというものでした。裁判所は、まずシステム開発におけるITベンダの責任を一般論として、以下のように述べています。

判決の要旨 (プロジェクト管理義務の基本的な考え方について)  

 被告ベンダは、自らの有する高度の専門知識と経験に基づき、本件電算システムを完成させる債務を負っていたものであり、開発方法と手順、作業工程等に従って開発を進めるとともに常に進捗状況を管理し、システム開発について専門的な知識を有しない原告国保のシステム開発へのかかわりを管理し、原告国保によって開発作業を阻害する行為がないように原告国保に働きかける義務を負う。

 専門家であるベンダは、素人のユーザが、どのようにプロジェクトに関わるべきか、どんなことに気をつけるべきか、ちゃんと管理しなさい、と言っています。そして、具体的に、ユーザが行なう要件の変更や追加についてのベンダの責任を以下のように述べています。

判決の要旨 (要件の変更や追加についてのベンダの義務)  

 原告国保が機能の追加や変更の要求をした場合で、委託料、期限、他機能に影響を及ぼす場合適時その旨を説明し、要求の撤回、委託料の負担、納入期限の延期等を求める義務を負う。

 例え”お客様”の要望でも、それが費用、納期、機能に影響がある場合は、ちゃんと断るか、費用、納期をお願いする、それがベンダの義務だと言っています。私は元々ベンダにいた人間ですが、自分の経験に照らしても、これはなかなか酷な話です。ベンダにとって、ユーザは”お客様”であり”神様”です。”ご要望”を無碍に断るのには相当な勇気が必要ですし、コストや納期も言い方を誤れば、「約束が違う! 」と大問題に発展しかねません。こんなことが原因で ”お出入り禁止”にでもなったら、会社としても個人としても重大な失点です。

 そうは言っても、ユーザの望む変更や追加が技術的、プロジェクト管理的に受け入れられるか、スケジュールや費用を守れるかの判断は専門家であるベンダでないと難しいことも事実です。ですからユーザにはベンダがこうしたことを言い出せる環境を作ってあげる必要があります。ベンダの言うことが納得いかない場合に、それを退けるのはいつでもできるわけですから、とりあえず調べることは調べてもらい、言いたいことを言ってもらう。その結果プロジェクト計画の変更が必要ならちゃんとやってもらう程度の度量は見せてあげましょう。具体的にどのようなことがあるか、一つずつ見ていきましょう。

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著者プロフィール

  • 細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

    ITプロセスコンサルタント 東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員 1964年神奈川県横浜市生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。大学を卒業後、日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステムの開発・運用に従事した後、2005年...

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