クラウドAD推進の割合は全体では24%だが、従業員数2000人以上の企業では60%以上
クラウド(パブリック/プライベート含む)上における、アプリケーションのスクラッチ開発の実施状況について尋ねたところ、今後実施予定の企業も含め、クラウドADを推進している企業の割合は全体で24%となり、いまだ少数派だった。しかし、従業員数2,000人以上の大企業に着目すると、その割合は60%以上となり、従業員数2,000人未満の企業と比べると突出して多いことが明らかになった(図1)。
クラウドADの対象となるアプリケーションの選定基準を尋ねたところ、「社外向け」(14%)よりも「社内向け」(56%)、「基幹系」(26%)よりも「周辺系」(38%)という回答が相対的に多い結果となった。大規模な基幹系アプリケーションから着手するのではなく、比較的軽量な周辺系のアプリケーションからクラウドでの開発を試みる、あるいは影響の大きい社外向けアプリケーションではなく、まずは社内向けで試すという傾向が見て取れる。また、クラウドADについて、過半数の企業がIT部門主導で行うべきであると考えているものの(58%)、管轄部門がどこであるかをアプリケーション選定の「基準としない」企業も多く見られた(31%)。
クラウドADへの期待事項は、スピード、コスト削減、システム連携など
この調査では、今後実施予定を含めてクラウドADを推進している企業に対し、クラウドADへの期待事項(複数回答)、期待どおりに実施できたこと、できなかったこと(それぞれ3つまで選択可)についても尋ねた。期待事項の上位6項目には「ADのスピード」「ADのコスト削減」「他システムとの連携」「開発環境の維持負担の軽減」「ADの生産性向上」「ADの品質向上」が挙げられた。 クラウドADで期待どおり実施できたとする割合が50%以上に達した項目は、「他システムとの連携」「AD拠点の分散化対応」「ITスキルの低い開発者の参画」「ADプロセスの整備と標準化」の4項目だった。 一方、期待外れの割合が期待どおりを上回った、あるいは期待どおりという回答がゼロであった項目は、「ADの品質向上」「ADのコスト削減」「ADプロセス全体での複数ツールの統合労力の低減」「ADプロセス自動化率の向上」「DevOpsの実現」の5項目だった(図2)。
ガートナー ジャパンのリサーチ ディレクターである片山治利氏は、調査結果を踏まえて次のように述べている。
「ユーザー企業がクラウドADに取り組む際に最も重要なのは、その目的と期待事項を社内で明確にすることです。そして、その目的が達せられるかどうか、言い換えればクラウドADのメリットは何かを慎重に検証した上で、どのようなアプリケーションをクラウドで開発するかについて基準を設定すべきです。ガートナーが対話したユーザー企業 (大企業) の中には、クラウドADへの取り組みの初期段階においては、『乗せられそうなものはまず乗せてみる』というアプローチを取り、その1~2年後に、初期の経験を基に、クラウドで開発すべきアプリケーションの選定基準を設定した企業もあります。このように、まずは可能なところから着手し、結果を慎重に検証して次につなげるアプローチが有効でしょう。また、クラウドADを推進する際には、従来の方法を引き継ぐ方が新しい環境に移行しやすい面もあるとはいえ、クラウドAD採用を機に、新しい開発手法やツールなどの採用を積極的に検討すべきです」。
なお、ガートナーは3月15~16日に、「ガートナー エンタプライズ・アプリケーション戦略&アプリケーション・アーキテクチャ サミット 2018」を開催する。サミットでは、ガートナーの国内外のトップ・アナリストが、デジタル・トランスフォーメーション実現の鍵として「アプリケーション戦略」と「アプリケーション・アーキテクチャ」を柱に据え、最新の調査結果や事例を基に、知見を提供するという。