ガートナーでは、2021年までに、全世界における顧客サービス応対の6分の1近くがAIで処理されるようになると予測している。今後数年のうちに、AIの実践的な導入が進み、顧客サービスや顧客サポートにおけるAIの活用は当たり前になるとしている。
チャネル間でAIを活用することで、顧客サービス/サポートは、より優れたインサイトを獲得し、セルフサービスを向上させ、予測モデルを改善するとともに、音声自動応答(IVR)、インテリジェントなケース管理、フィールド・サービスの自動スケジューリングなどの既存の機能を強化することができる。
ガートナーの最近のサーベイでは、顧客サービス組織を持つ企業の36%がAIテクノロジを利用または試用していることが明らかになっている。2025年までに、マルチチャネル顧客エンゲージメント・プラットフォームにAIを採用する企業は、業務効率を25%改善すると、ガートナーは予測している。
会話型エージェント、インテリジェントなロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)をはじめとするAIソリューションが成熟することで、顧客応対におけるセルフサービスの割合は、2018年の50%から2022年には64%に増加するとみられる。
顧客戦略の策定に当たり、CXリーダーは、AI、チャットボット/仮想アシスタント(VA)、ゾンビ・アプリ、拡張現実/仮想現実(AR/VR)、リアルタイム・ケイパビリティ、データ・プライバシーなどについて、幅広い観点から見解を持つ必要がある。そのほかに知っておくべき予測として、以下が挙げられる。
2018年に提供が開始されるボット/VAアプリケーションの40%は2020年までに廃止される
チャットボットは、「日本におけるCRMのハイプ・サイクル:2018年」でも関心の高まりを受け、「過度な期待」のピーク期に向けて急激にハイプの坂を上昇している。ボットやVAの開発に使用されるテクノロジや方法論は、今後数年間で急速に進化し、成熟する。
こうしたテクノロジに対するユーザーの期待も高まっている。しかし、こうした強力なユーザー・エクスペリエンス・テクノロジの導入に伴う課題に備えていない企業は、ユーザーの反発を招く恐れがある。多くの企業にとって、ベスト・プラクティスと現実的な期待を社内で築くことは継続的なプロセスとなり、そのプロセスを管理する方法の決定が極めて重要となる。
2022年より前にCRMの不十分なプライバシー管理よるGDPR違反に最大規模の制裁が課される
2018年5月25日に発効したEU一般データ保護規則(GDPR)は、EU域内を拠点とする企業だけでなく、EU域外の多くの企業にも個人データの書類に関して厳しい要件を企業に課している。
プライバシー・リスクに影響を及ぼす主な要素としては、処理される個人データの量や、データの機密度、および個人データのライフサイクル期間の長さが挙げられる。一般に、CRMシステムには膨大な量の個人データが含まれ、長期にわたって保持されているため、GDPRに対する違反を引き起こす原因になる可能性がある。
2023年までにデジタル・ビジネス・エコシステムに参加する企業では、自社の顧客サービス案件の40%が、エコシステム内のパートナー企業によって開始されるようになる
デジタル・ビジネスを進める企業の中には、現在のビジネスを改善する業務改革から、新しい製品/サービスやエクスペリエンスを創出するビジネス変革のイノベーションへと移行している企業が見られる。そのような企業は、従来のビジネスモデルからプラットフォーム・ビジネスなどの新しいビジネスモデルへと変革している。
先進的な企業は、顧客サービスのニーズとセンチメントを感知してモニタリングし、より先取的なエクスペリエンスをエコシステムのすべてのパートナーに提供する。今後は、ネットワークでつながった顧客サービス・エコシステムの重要度が高まり、2023年までに、顧客サービス案件の40%は、エコシステム内の兆候やセンチメントを検出することで開始されるようになる(現在は5%未満)と、ガートナーは予測している。
なお、ガートナーは2019年2月19日(火)・20日(水)、東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)において「ガートナー カスタマー・エクスペリエンス&テクノロジ サミット 2019」を開催する。
サミットでは、「顧客戦略を極めよ ~顧客に選ばれる企業となるために~」をテーマに、CXに関する最新トレンドや最先端の知見、洞察が提供される。ガートナーのセッションでは、ガートナーの国内外のエキスパート10人による講演を予定している。
ここに掲載した内容については、「ガートナーによる2019年のCRMとカスタマー・エクスペリエンス関連テクノロジ予測のトップ10」(2月19日 12:30~13:15、11C)の中で詳しく解説される。