IDCでは、IoTの基本アーキテクチャとして「IoTの3層モデル」を定義している(参考資料1)。IDCでは、IoTの3層モデルを基に、IoTコアインフラストラクチャ市場とIoTエッジインフラストラクチャ市場を定義し、それぞれの市場について分析と予測を行っている。
本調査では、IoTエッジインフラストラクチャ(IoTエッジインフラ)に着目し、IoTインフラバイヤーおける、IoTエッジインフラベンダーの選定基準とIoTエッジインフラの利用形態について調査した。
- IoTの3層モデルに基づき、クラウドまたはデータセンター層で使用されるIoTインフラストラクチャを「IoTコアインフラストラクチャ(IoTコア)」、エッジコンピューティング層で使用されるIoTインフラストラクチャを「IoTエッジインフラストラクチャ(IoTエッジ)」として定義している。
- IoTエンドポイント層で使用されるIoTインフラストラクチャ(センサー、デバイスなど)は、IoTインフラ調査の調査対象外としている。
ITとOTの知見を有するベンダーが競争優位性をもつ
この調査によると、IoTエッジインフラベンダー選定では、「IoTの技術力」と「ユーザー業務の理解度」が優先されることが分かった(参考資料2)。「IoTの技術力」に関連する項目として、「IoT関連技術をよく知っている」「OT(Operational Technology)接続に詳しい」「IT(Information Technology)接続に詳しい」の3項目合計で、全回答数の31.8%を占めた。
IoTは、ITとOTが融合する技術であり、双方の知見を有するベンダーが、IoTエッジインフラ市場では競争優位性をもつことが裏付けされた。「ユーザー業務の理解度」に関連する項目として、「当社の業務をよく知っている」が全回答数の10.8%を占めた。
なお、「当該ベンダーとは長い付き合いがある」を、「ユーザー業務の理解」に関連する項目として解釈すると、この2項目で、全回答数の20.1%を占める結果となった。OTはユーザー業務に直結していることから、ベンダーは、技術のみならず業務に対する知識も求められていることが、本調査結果から明らかになった。
ベンダー選定に、IoTの技術力とユーザー業務の理解度が優先される背景として、IoTインフラバイヤーでは、IoT活用を主導する人材が不足していることがあげられる。また、IoTインフラ関連製品やサービスが多岐に渡り、IoTインフラバイヤーは、IoTインフラの選択に苦慮していることも本調査結果から明らかになった。
IDC Japan エンタープライズインフラストラクチャ リサーチマネージャーの下河邊雅行氏は、「ITサプライヤーは、IoTインフラバイヤーにおけるIoT人材不足や、IoTインフラ選択時の苦労など、IoTインフラバイヤーが抱える課題を解決し、自社のIoTインフラビジネスにつなげることが重要である」と述べている。
今後、IoTインフラとしてIoTエッジ専用製品に対する注目が高まる
その他、最も重要な処理を行うIoTエッジインフラの採用意向に関する質問では、現在は、回答者の6割強が汎用サーバーを選択していることが分かった。3年後の採用意向では、汎用サーバーを選択する割合は減少し、IoTエッジ専用製品を選択する割合が増加する結果となった。また、3年後活用していると思う技術に関する質問では、AI(Artificial Intelligence)による深層学習が最上位項目となった。
今回の発表はIDCが発行した「2019年 国内IoTエッジインフラストラクチャの選定基準調査」にその詳細が報告されている。
本レポートは、「IoTエッジインフラの選定基準」と「IoTエッジインフラ利用形態」の章で構成され、前者では、IoTエッジインフラベンダーの利用状況、ベンダー選定理由、ベンダー選定時の課題など、後者では、IoTエッジインフラで行っている制御・データ分析処理の種類、エッジでデータ分析処理を行う理由、IoTエッジインフラで活用予定の技術などについて分析している。
- 注1:本調査において、汎用サーバーとは、Unixサーバー(RISCサーバー、IA64サーバー)と、x86サーバーを総称している。
- 注2: 本調査において、IoTエッジ専用製品とは、IoT用途として開発された、IoTエッジサーバー、IoTエッジPC、IoTゲートウェイに加え、PLC(IoTゲートウェイ機能付き)、産業用PCを総称している。