1. 2019年度の市場規模(事業者売上高ベース)は171億5,000万円の見込み
2019年度の国内ブロックチェーン活用サービス市場規模(事業者売上高ベース)は、171億5,000万円の見込みだ。サプライチェーンや仮想通貨などを含めた価値流通におけるプラットフォームなどを中心に、さまざまな実証実験が行われており、なかには商用化に向けた効果検証に進んでいる事例もでてきている。
ブロックチェーンは、利用者同士をつなぐP2P(ピアツーピア)ネットワーク上のコンピュータを活用し、権利移転取引などを記録、認証するしくみである。同技術は、データの改ざんができず、真正性が保証されていること等から、ブロックチェーンが登場した当初は仮想通貨の基盤として金融機関を中心に注目されてきた。
しかし、2017年後半~2018年にかけては金融機関に留まらず、幅広い業界においてサプライチェーンや権利証明など、同技術を応用した実証実験を積極的に実施し、その活用可能性を見出しつつある。
昨今では、ジビエ(野生鳥獣肉)のトレーサビリティ(流通経路の追跡確認)のほか、美術品の権利移転や真贋証明等をはじめとして利用が拡大しており、物流の透明性向上によるコスト削減や書類チェックに係る時間の短縮など、さまざまな成果を上げ始めている。今後、ブロックチェーンを活用したサービスがさまざまな分野において商用化へと進むことが期待される。
2. BaaS(Blockchain as a Service)ソリューションの提供始まる
ブロックチェーンは主に3つのレイヤー(層)をなしている。レイヤー1であるブロックチェーン基盤は複数登場しており、概ねBtoB向けやBtoC向け、IoT向けなど、用途に応じて使い分けがされるような基盤も出てきている。
その上にレイヤー2として、Colored Coin(ビットコインに色を付け、複数の種類の資産を流通させるしくみ)や、Lightning Network(ビットコインのブロックチェーンが抱えるスケーラビリティ(拡張性)や処理速度などの課題を解決するために開発されたソリューション)をはじめとしたブロックチェーンを補完する技術があり、国内のスタートアップ企業を中心に研究開発や具体的なソリューション開発などが進展している。
レイヤー3では、ブロックチェーンを活用した様々なアプリケーションが開発されており、いずれのレイヤーでも大手IT事業者や国内スタートアップ企業を中心に、ユーザー企業とともに実証実験を進めている。
また、大手IT事業者を中心に、ブロックチェーン基盤からアプリケーションの構築まで支援するBaaS(Blockchain as a Service)ソリューションの提供が始まっており、ブロックチェーンの積極的な活用に向けた技術的な支援体制が整いつつある。
3. 2019年度以降、商用化への効果検証フェーズや本格的な商用化フェーズへ
2022年度の国内ブロックチェーン活用サービス市場規模(事業者売上高ベース)は1,235億9,000万円に達すると予測する。2017年度~2022年度の5年間の年平均成長率(CAGR)は108.8%とみる。なお、フェーズ(段階)別では、実証実験が多いものの、2019年度以降、商用化に向けた効果検証フェーズや本格的な商用化フェーズへと進む案件が増えていくと考える。
現在、欧米を中心に多くの事業者を取り込んだ組織によるブロックチェーン活用に向けた実証実験が進められている。今後、ブロックチェーン活用における世界的な事業展開を行う上での存在感(プレゼンス)を高めるべく、日本発のブロックチェーンコンソーシアムの立上げが期待される。
なお、発表について詳しくは、矢野経済研究所が刊行した「2019 ブロックチェーン活用サービス市場の実態と将来展望」に掲載されている。