1. 2018年度は通常のシステム更新サイクルに沿った更新需要が主体
2018年度の国内自治体向けソリューション市場規模(事業者売上高ベース)は6,385億円で、前年度比0.5%減となった。
2018年度の市場は、通常のシステム更新サイクルに沿った更新需要が主体で、ここ数年、当該マーケットを牽引してきたマイナンバー対応や新公会計制度、ネットワーク強靭化、セキュリティクラウドなどの大型案件はほぼ収束した。
そのため、これまで保留となっていた基幹系システムや内部情報系システムなどの更新需要や、法制度の変化に対応したシステム改修案件に軸足が移っている。また、総務省が進める自治体クラウドへの移行団体も見られるが、これが本格化するのは2021年度から2023年度頃になる見通しである。
市場を見ると、クラウド活用の拡大に加えて、ここ1~2年では自治体システムへのAIやRPA活用も始まっている。ただし、現状ではほとんどのケースがPoC(概念実証)段階であるが、実効性が明らかになったような業務では、実装を検討する自治体も現れている。なお、同時期に実施した地方自治体へのアンケート調査結果をみると、現時点でのRPA導入率は数%に止まっている。
2. 自治体クラウド市場、人口規模2万人未満の小規模自治体を中心に導入が進む
政府では、財政再建の一環として中央省庁や地方自治体、各種外郭団体を含めた行政システムの効率化、行政コストの抑制を目指している。自治体クラウドも、この施策の一環として導入が図られており、導入団体ではコスト削減に主眼をおいた取り組みが求められている。
加えて政府情報システムでは、「クラウド・バイ・デフォルト原則」のもと、クラウドファーストでシステム導入検討を行うことになっているが、この方針は地方自治体においても同様で、この点も自治体クラウド拡大のバックボーンとなっている。
自治体クラウドは、現状では人口規模2万人未満の小規模自治体を中心に導入が進んでおり、同20万人以上の中核市以上の規模での自治体クラウドの導入は限定的である。また自治体クラウドの普及に合わせて、自治体向けBPOサービスが普及している。
特に、印刷周辺業務を中心にクラウドサービスとBPOをセット導入するケースが一般的になっている。このように、行政機関においても深刻化する人手不足や改正労働契約法の施行などを背景に、BPOニーズが顕著になっている。
3. 2023年度は2018年度比で4.5%減の6,100億円を予測
今後、市場ではGISやドローン、IoT/センサーネットワークを活用した現場向け情報システムの普及、防災・災害対策関連システムでのICT活用が進む見通しであり、加えて東京オリンピック・パラリンピックや訪日外国人客の増加を背景にしたシステム投資が見込まれる。
一方で、クラウド化の進展やベンダ間での価格を含めた競争の激化、行政コスト削減志向の定着といった傾向も強まる見込みである。以上のような奏功要因と阻害要因が相まって、2020年度以降も横ばい・微減トレンドが継続する見込みである。
このような市場環境の中で、従来のSIやシステム開発主導型から、サービスビジネスやBPOサービスにシフトしており、当該マーケットがサービス型のビジネス構造に転換しつつあると考える。2023年度国内自治体向けソリューション市場規模(事業者売上高ベース)は、2018年度比で4.5%減の6,100億円を予測する。
※この調査における自治体向けソリューションとは、地方自治体や中央官庁・独立行政法人等の公共機関で導入される情報システムを指す。
市場規模には、ハードウェアやソフトウェアの購入費、レンタル・リース料、保守・サービスサポート料、回線使用料、ベンダなどからの要員派遣費などを含む。地方自治体側の費目でみると、機器購入費、委託費、安全対策費、各種研修費用、BPOサービス費などを含むが、自治体職員の人件費は含まない。
【調査要綱】
- 調査期間:2018年11月~2019年5月
- 調査対象:ITベンダやパッケージベンダ、地方自治体や中央官庁・独立行政法人等
- 調査方法:当社専門研究員による直接面談、ならびに電話調査を併用
- 市場に含まれる商品・サービス:地方自治体や中央官庁・独立行政法人等の公共機関向けの基幹系ソリューション、内部情報系ソリューション、現場向けソリューションなど
【刊行資料】
- 題名:『2019 自治体向けソリューション市場の実態と展望』
- 発刊日:2019年05月30日
- 体裁:A4 321ページ
- 定価:180,000円(税別)