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DXにポジティブな感触を持っている日本企業は42.4%、ネガティブな感触は47.6%――NTTデータ経営研究所が調査速報

 発表によると、今回の調査の特徴は次のとおり。

  • 偏りのない広範な母集団を対象にした調査
  • テクノロジーの視点に加え、ビジネスの変革や創造の視点(攻めのDX・守りのDX、など)も加味
  • 企業のDXにおけるトレンド、取り組みテーマ、現在の進度、成果創出への実感等の実態を多角的に調査
  • DX成功企業の特徴を経営基盤(戦略・プロセス・組織・人材・システム・ガバナンス・文化)の観点から解明
  • コンサルティングの実務経験を通して培われた弊社独自の知見に基づく洞察の付加

トピック1:DXへの取り組み状況とこれまでの感触

 ■DXへの取り組み状況(図表1-1)

 ・DXに取り組んでいる企業は全体の42.7%。

 ・企業規模が大きいほど取り組み企業の比率が高くなる傾向。

 ・売上1,000億円以上の大企業では77.9%もの企業がDXに取り組み中、売上500億円未満の中堅企業でも34.0%が既にDXに取り組み中。

図表1-1:DXへの取り組み状況

 ■DXに対するこれまでの感触(図表1-2)

 ・DX取り組み企業への「DXの取り組みはこれまでのところ上手くいっていると思いますか」との問いに、“強くそう思う”・“概ねそう思う”と回答したDXにポジティブな感触を持っている企業は42.4%。

 ・一方で、“そう思わない”・“あまりそう思わない”と回答したDXにネガティブな感触を持っている企業は47.6%であり、DXにポジティブな感触をもっている企業よりも多数派。

図表1-2:DXに対するこれまでの感触

 以上より、日本企業がDXに取り組むことは一般的になりつつあるものの、DXに取り組んでいる企業は必ずしも上手くいっているわけではなく、むしろ上手くいっていない企業の方が多数派であることが示された。

トピック2:DXへの取り組みの推進段階(フェーズ)と成果の状況

 ■DXの推進フェーズ(図表2)

 ・取り組みの推進段階(フェーズ)でみると、“実践着手前段階”のものが57.7%で過半数。その内訳は、「助走フェーズ」が29.4%、「構想策定フェーズ」が16.4%、「プランニングフェーズ」が11.9%。

 ・一方で、DXの取り組み全体のうち「本格活用・展開フェーズ」まで到達しているのは16.0%。

 ■「本格活用・展開フェーズ」に到達した取り組みにおける成果の状況(図表2)

 ・「本格活用・展開フェーズ」に到達している取り組みのうち、“成果が出ている実感がある”ものが大半で77.7%。

 ・“成果が出ている実感がある”とされた77.7%のうち、更に “厳密な意味で客観的に成果を出しているといえる”ものは29.8%。これは取り組み全体のわずか4.8%(「本格活用・展開フェーズ16.0%」×「厳密な意味で客観的に成果を出しているといえる29.8%」=4.8%)。

図表2:DXの推進フェーズ

 以上より、日本企業のDXにおいて、“厳密な意味で客観的に成果を出しているといえる”取り組みはごくわずかであることが示唆された。現在“実践着手前段階”にあるDXの取り組みが“実践段階”に移行していくなかで、DXで成果を出すために今後多くの企業が新たなチャレンジに直面すると推察される。

トピック3:DXへの取り組みテーマと成果の状況

 ■DXの取り組みテーマの分類(図表3-1)

 ・DXの取り組みテーマを3つの“攻めのDX”と、3つの“守りのDX”に分類。

図表3-1:DXの取り組みテーマの分類

 ■テーマ別の取り組み状況(図表3-2)

 ・DX取り組み企業がどのようなテーマのDXに取り組んでいるか調査。

 ・「業務処理の効率化・省力化」へ取り組んでいる企業が84.0%で突出。次いで「業務プロセスの抜本的な改革・再設計」の61.1%。どちらも“守りのDX”。

 ・全体として“守りのDX”が先行しており、“攻めのDX”への取り組みはまだこれからといった様相。

図表3-2:テーマ別の取り組み状況

 ■各テーマ別の成果の状況(図表3-3)

 ・“成果が出ている”の比率は、「業務処理の効率化・省力化」の40.5%が最高。次いで「業務プロセスの抜本的な改革・再設計」の22.7%。どちらも“守りのDX”。

 ・他のテーマでは、“成果が出ている”の比率は20%以下。

図表3-3:各テーマ別の成果の状況

 以上より、現在の日本企業のDXは、成果の実感を得やすい“守りのDX”が先行していることが示唆された。DXの本丸である“攻めのDX”への取り組みについては、“成果が出ている”とする企業の比率が低いことから、難易度の高い取り組みテーマであることが示唆された。 “攻めのDX”であっても成果を出せる土台を有した企業が増えてくれば、今後取り組みが本格化していくものと推察される。

トピック4:DX成功企業の特徴とそこから得られる示唆

 ■DX成功企業の定義

 ・本分析にあたっては、DX成功企業を以下の条件により抽出。

  • 「本格活用・展開フェーズ(業務開始・サービスのリリース等)」に至っている企業で、かつ
  • 事前に成果の基準・指標を定めており、かつ
  • 事前に定めた成果の基準・指標に基づいて成果を測定しており、かつ
  • “成果が出ている”と回答した企業

 ■DX成功企業の特徴(図表4-1)

 ・DX成功企業における各経営基盤の項目のうち、有意な差として“当てはまる”寄りの結果を示したのは以下の6項目。

  • 【戦略】DXで何を達成するかが明確になっている
  • 【戦略】状況に応じてDXの戦略や計画を適宜修正するなど柔軟に運用している
  • 【組織】DXの推進組織またはチームは関係部門を巻き込んで組織の役割を果たしている
  • 【組織】組織間で連携し、全体最適の取り組みを進めやすい組織構造になっている
  • 【プロセス】社内の業務プロセスが明確で関係者に共有されている
  • 【文化】経営トップの意向を受けて現場の責任者が主体的に動く文化がある

 ・逆に、DX成功企業が有意な差として“当てはまらない”寄りの結果を示したのは以下の5項目。

  • 【人材】DXを推進したことが評価される人事制度になっている
  • 【人材】業務とITに関する深い知識と経験を兼ね備えた人材が豊富にいる
  • 【人材】給与や働き方に関してDX人材を厚遇することでよいDX人材を確保できている
  • 【システム】基幹システムの構造が柔軟で新しいテクノロジーを取り込みやすい
  • 【ガバナンス】DXに関する投資判断には従来とは異なる投資対効果基準を適用している

図表4-1:DX成功企業の特徴

 ■DX成功企業とそれ以外の企業との差にみられる成功への示唆(図表4-2)

 ・DX成功企業とそれ以外の企業との各経営基盤のスコアを比較してそのギャップに注目することにより、まだDX成功企業に到達していない企業が今後強化していくべき変革の方向性の示唆を抽出。

 ・ギャップが大きい項目(=今後強化していくべき項目)の上位5項目は以下。

  • 【戦略】DXで何を達成するかが明確になっている
  • 【戦略】状況に応じてDXの戦略や計画を適宜修正するなど柔軟に運用している
  • 【組織】組織間で連携し、全体最適の取り組みを進めやすい組織構造になっている
  • 【組織】DXの推進組織またはチームは関係部門を巻き込んで組織の役割を果たしている
  • 【ガバナンス】各DX施策を個別施策単位ではなく、施策群として依存関係と進捗を管理し、整合性をとっている

図表4-2:DX成功企業とそれ以外の企業との差にみられる成功への示唆

 以上より、DXで成果を手にするには【戦略】と【組織】の面でDXに適した体制を築くことが重要であると示唆された。一方で、DX成功企業は【人材】や【システム】には課題を抱えながらも成果を手にしていることが示された。また、これから成果創出に向けて取り組みを加速させるDX推進企業は、【戦略】、【組織】および【ガバナンス(DX施策の群管理)】に強化の余地があり、これらの項目について客観的に評価・点検することの必要性が示唆された。

本速報の位置づけと今後

 本調査研究は、日本企業のDX推進の実態を多角的に捉えるために、様々な観点で調査項目を設定している(【調査概要】5. 調査観点を参照)。本稿では、その集計・分析結果の一部を速報した。

 今後、他の設問項目も含めたより深い分析と考察を行い、継続して調査研究レポートを公表することで、DXを推進する日本企業に有益な示唆を提供していく予定である。

 ■調査概要

  • 調査対象:国内の大企業・中堅企業14,509社
  • 調査方法:WEBアンケート(一部、FAXまたはe-mailにて受付)
  • 調査期間:2019年7月23日~2019年8月4日
  • 有効回答数:663社(回答率4.6%)

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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)

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