この調査は、IFTF(Institute for the Future)およびVanson Bourne社とパートナーを組んで実施したもので、世界40か国以上4,600人のビジネスリーダーを調査対象としている。
IFTFおよび世界のエキスパートは、エッジコンピューティングや5G、AI(人工知能)、XR(Extended Reality: 仮想現実(VR)や拡張現実(AR)、の他の没入型ツールを含めた総称)、IoT(モノのインターネット)などのテクノロジーが合わさることにより、これからの10年で5つの大きな「シフト」が起こると予測している。
2030年までの間に起こるであろう5つのシフト
IFTFが予測する、いまから2030年までの間に起こるであろう5つのシフトは 次のとおり。
1. ネットワークリアリティー(Networked Reality)
サイバースペースは、スクリーンの向こう側の世界ではなく、実生活の延長線上にあるものとなる。新しいデジタル環境は、テレビやスマートフォン、その他ディスプレイといった機器を超えて、車、オフィス、自宅や人間の身体にまで拡張する。
調査では、56%のリーダーが、日常的なVRやARへの使用を歓迎すると回答している。また、56%のリーダーが、考えるだけでコンピューターを制御するテクノロジー(ブレイン コンピューター インターフェイス)に対応する人材の採用を歓迎すると回答している。
2. コネクテッドモビリティーとネットワークマター(Connected Mobility/Networked Matter)
未来の乗り物は「動くコンピューター」になる。乗り物は、それ自体がXRを提供するスペースとなる一方で、行きたい場所へどこへでも、安全に自動走行で連れて行ってくれるようになる。調査では、50%のリーダーが2030年までに自動走行車による旅行が可能になると回答している。
3. デジタルシティーからセンチエントシティー(意識を持った都市)へ
スマートオブジェクトやセルフレポーティングシステム、AIをベースにしたアナリティクスなどで構成された独自のインフラネットワークを通じて、都市は文字通り「生きた」存在になる。センサーは、移動をより安全なものとし、人間がインフラをどのように使用しているかという新しいデータは、資源の配分を適正化し、サステイナビリティーを向上させる。
4. エージェントとアルゴリズム
私たち1人ひとりが、高度にパーソナライズされた「生活のオペレーティングシステム」によって支えられるようになる。それぞれのニーズを予測し、先を読んで日々の生活をサポートしてくれるシステムにより、人間が自由に使える時間が増える。調査では、76%のリーダーがタスクを自動化することにより時間の使い方を見直すと回答している。
5. ロボットのソーシャルライフ
ロボットは、人間の生活におけるパートナーとして、スキルを高め、能力を拡張する存在になる。ロボットは、ソーシャルロボットネットワークで新たな知識を共有し、イノベーションをクラウドソーシングし、リアルタイムの進化を促進する。調査では、70%のリーダーが人間の限界を超えるためにマシーンやロボットをパートナーにしたいと回答している。
課題への対応
テクノロジー主導の大きなシフトは、変化を嫌うユーザーや企業にとっては課題になるかもしれない。また、新しいテクノロジーの力を活用したいと考えている企業は、急速なイノベーションのスピードに合わせるために、データを効果的に収集・処理し、展開するための手順を踏む必要がある。
データプライバシーに対する社会からの不安が高まっている中で、企業の人材採用からローン申請の許可判断まであらゆることを決定するアルゴリズムの公正・公平性に対する懸念を払拭する必要がある。
また、都市をデジタルシティーからセンチエントシティー(意志ある都市)へと進化させるのであれば、政府・行政機関はデータを共有して展開するためにはどのように連携すべきなのかを学ぶ必要がある。
すでにビジネスリーダーたちは、これらの課題のいくつかを予想しているという。
- 調査対象となったビジネスリーダーの74%が、社会規模で解決しなければならない最大の課題の1つがデータプライバシーであると回答
- 44%のリーダーが、AI(人工知能)に関する規制および利用における透明性が必要であると回答