4割の企業でデジタルの価値が全社員に共有されておらず、縦割組織の弊害が発生
IDCでは、DXについての決定に関与している課長クラス以上の400人に対するアンケート調査を実施した。2018年頃から「POC(Proof of Concept)疲れ」や「DXはバズワード」であるという言葉が聞かれるようになり、このようなDXに対する負の表現がどこから生まれてくるのかをみるため、DXを阻害する要因は何か、どの段階で発生するのかについて調査を実施し分析を加えた。
今後のDXの推進について意欲的なのか、意欲が減退しているのかについて調査を行った結果、DXに取り組む企業の2割でその推進意欲が減退していることが分かった。一方、DXの取り組みにおいて困難を伴ったフェーズについてたずねた調査結果(参考資料)からは、困難を伴ったのは、DXの理解や計画のフェーズに集中し、実証実験以降において困難とされるケースは大幅に減少していた。
DXの成熟度ステージに関わらず同様の傾向であり、POC疲れなどの課題は、計画の時点で目標との不整合が発生しているためとみている。また、DXの取り組みを阻害している項目をたずねた質問では、「社員のDX理解不足と受容性の不足」を挙げる企業が4割あり、推進意欲とのクロス分析の結果から、これが最大の阻害要因であることが分かった。
IDCでは、デジタルの価値を共有が出来ていない場合、組織の縦割りの弊害が発生し、全社的な協力関係が築けず負の連鎖につながっていると分析している。
従業員やステークホルダーがデジタルの価値を共有する企業文化の変革を急ぐべき
これらの調査結果からIDCは、ITユーザー企業に対して、全ての従業員やステークホルダーがデジタルの価値を共有する企業文化の変革を急ぐべきとしている。また、日本の生産性や国際競争力を高めるためにも、ITサプライヤーは、顧客企業のデジタル文化の浸透に協力すると共に、デジタルビジネス人材や先端IT人材の育成に注力し、実行面の課題を排除しなければならないと指摘している。
IDC Japan ITサービスのリサーチマネージャーである國土順一氏は、「組織間の壁を打ち壊すには、全社員の価値観の共有が最も重要になる。真のパートナーを目指すITサプライヤーは、顧客の実態を理解し共に解決していく姿勢で取り組むべきである」と述べている。
今回の発表は、IDCが発行した「2019年 国内企業におけるデジタルトランスフォーメーション推進の阻害要因分析」にその詳細が報告されている。