SAS Institute(以下、SAS)は、産業向けソリューションへの10億ドルの投資の一環として、生成AIの未来への一手を打つと発表した。
SASは、製造業や物流業でデジタルツインシミュレーションを構築する顧客と協業しており、合成データ生成に関しては、銀行や医療業界と連携。また、大規模言語モデル(LLM)の産業への適用に関する研究を行い、顧客にとって信頼性の高い安全な結果を提供することに注力しているという。
同社のエグゼクティブ・バイスプレジデント兼CTOのブライアン・ハリス氏は、次のように述べている。
「生成AIから価値を生み出すには、産業ドメインに関する深い専門知識、最先端のAI機能、そしてエンドツーエンドのガバナンスが必要です。産業向けソリューションへの10億ドルの投資には、正確かつ明瞭で、防御能力が高く、信頼性の高い生成AIの機能を統合することも含まれています。多くの場合、SASソフトウェアは顧客のビジネスにとってミッションクリティカルな存在であり、私たちには『ときどき』正しいという選択肢はありません」
SAS Exploreで紹介された信頼性の高い生成AIに関するイノベーションの進展は、以下のとおり。
合成データの生成
敵対的生成ネットワーク(GAN)への拡張機能を開発。プライバシーの保護、バイアスの緩和、希少な事象の補強が可能となり、デジタルツインの基盤として機能する。医療・ライフサイエンス・銀行・保険・小売・製造などの産業全体で洞察を得るためのコストを削減し、予測モデルを改善しているという。
デジタルツイン
組織は、混乱に備えてレジリエンスを向上させるために、サプライチェーンや製造ラインなどの複雑なシステムをシミュレーションし、最適化する必要があるとのこと。物理的なシステムのデジタルツインを構築することにより、未来をより早く予測できるようになり、戦略的な意思決定、価値の向上、リスクと損失の低減につながるという。たとえば、フェデラルパブリックサービスファイナンスやウィーネンベルガーなどと協力し、オペレーションの最適化、問題の診断、予知保全対策の改善を行っているとしている。
大規模言語モデル(LLM)
大規模言語モデル(LLM)は、生成AIの重要な要素であり、これら基本モデルはデータプライバシーを保護しながら、産業のユースケースに合わせて微調整する必要がある。ニューラルネットワーク、ディープラーニング、強化学習、自然言語処理におけるSASの専門知識は、顧客に対する生成AIの価値実現を加速。たとえば、「SAS Customer Intelligence 360」の統合を通じて、生成AIモデルを活用し、プランニング、コンテンツの作成、カスタマージャーニーの設計を効率化できるという。
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