北國フィナンシャルホールディングス傘下で、石川県に本店を置く北國銀行は11月16日、「Google Cloud Next Tokyo ’23」の基調講演にて、勘定系システムに「Google Cloud」を採用し、マルチクラウドで運用すると発表した。
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同行は2021年5月に、勘定系システムをオンプレミスからパブリッククラウドの「Microsoft Azure」に移行し、フルバンキングシステムを稼働させている。2023年からは次の施策として、BaaS機能、更新系API、インターネットバンキング、カード事業の機能拡大、それらを支える勘定系システムのマルチクラウド化、クラウドネイティブ化に取り組んでいることを明かした。これらの施策を総称して「次世代地域デジタルプラットフォーム」と呼んでいるという。基調講演に登壇した北國フィナンシャルホールディングス 代表取締役社長の杖村修司氏は「この活動を通して『北陸地方を日本のデジタル先進地域にしたい』という思いがある」と述べた。
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これまでのチャレンジの中で課題にも直面してきたという。銀行の勘定系システムは「超に超がつくほどのミッションクリティカルなシステム」と杖村氏。クラウド環境であっても一定頻度で障害が起きるのが実情だと話す。「一つのクラウドだけに依存することはITガバナンス上、許されることではない。自分たちでコントロールしないといけないと考えた」と取り組みの背景を説明する。
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また、現状の勘定系システムは一つの巨大なシステムで、小回りがきかない状況にもあるという。杖村氏は「20年、30年先を見据えて、フロントシステムと勘定系システムの生産性を同等のものにしていきたい思いがある」と話した。
そこで同行は、複数のクラウドの長所を活用できるマルチクラウドによるシステム構造を採用。コンテナ化とJava化により、アプリケーション構造の見直しにつなげる。合わせて、WindowsとCOBOLから脱却することを目指すとした。
マルチクラウドにGoogle Cloudを採用した理由として、杖村氏はまず「全面障害の発生率が低いこと」を挙げる。クラウド間のネットワークにはGoogle Cloudが今年ローンチした「Cross-Cloud Interconnect」を活用する予定で、既に実環境での性能テストにも入っているという。2つ目は「コンテナ技術における実績があること」だとした。特に銀行の勘定系システムには、大規模で効率的なコンテナ運用が必要だと述べる。直接堅牢な基盤を活用することができる「Google Kubernetes Engine」の採用も検討しているという。最後に、Google Cloudと「カルチャー面、DNAの親和性があること」を挙げる。杖村氏は「“Googleマインド”の研修を受けたことで社内は活性化し、心理的安全性も強化された」と振り返った。
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今後に向けて杖村氏は「マルチクラウドと勘定系システムのモダナイゼーションというチャレンジは、絶対にやり遂げることができると思っている。Google Cloudとともに高い価値をお客様に届ける。Google Cloudとの協力を強化し、新しいステージへ挑戦していきたい」と意気込みを述べた。
なお、マルチクラウド運用は2026年度中の実現を目指すとしている。実現した際には、システム障害が発生しても30分程度で復旧できる見込みだという。
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基調講演後の記者説明会にて
(右)グーグル・クラウド・ジャパン 日本代表 平手智行氏
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