SAS Institute Japan(以下、SAS Japan)は、りそなホールディングス(以下、りそなHD)がマネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策/金融犯罪対策のために「SAS Financial Crimes Analytics」を導入したと発表した。
これにより、りそなHDは、①AIを使ったアラートの届出確率スコア算定と理由の付与、②届出確率スコアを使った業務のコントロール、③モデル管理機能を使った継続的AI運用体制の実現、を単一のプラットフォームで管理できる体制を確立したという。
AIスコアリングは多くの金融機関で取り組みを開始しているが、ケース管理ツールとの自動連携やモデル・ガバナンスを単一プラットフォームで実現する取り組みは、日本でも先進的な利用事例だとSAS Japanは述べている。導入先金融機関は、りそなHD傘下の「りそな銀行」「埼玉りそな銀行」「関西みらい銀行」で、導入先金融機関は今後も拡大していく予定だとしている。
りそなHDは、SAS Financial Crimes Analyticsの導入により、下記3つを実現すると述べている。
AIを使ったアラートの届出確率スコア算定と理由の付与(AIスコアリング)
- 過去の犯罪傾向(疑わしい取引の届出傾向)をSAS Visual Data Mining and Machine Learningが学習し、新たに生成されたアラートに疑わしい取引の届出確率スコアを付与
- 届出確率スコアを付与するとともに、そのスコアの根拠となる理由を付与することで、スコアの説明性を確保するとともに、調査時の参考情報を提供
届出確率スコアを使った業務のコントロール
- AIが算出した疑わしい取引の届出確率スコアに基づいたアラート・トリアージを実施。これにより、調査リソースをより高度な判断が求められる領域に割り当てることが可能となり、リスクベース・アプローチが促進
- AIが示す届出理由は調査すべきポイントを明確にするため、調査担当者のスキルに関係なく、効率的かつ一定水準の調査品質を担保することを実現
モデル管理機能を使った継続的AI運用体制の実現
- SAS Model Manager を使ったAIモデル・ガバナンス体制の自動化により、モデル・ガバナンスに関する精度管理業務や更新業務を定型化し、モデル精度の継続的改善とAIモデル管理工数低減の両立を実現
現時点では、各シナリオのパターンに対応したAIモデルを構築し、全アラートのうち約30%にAIモデルが届出確率・判定理由を付与しているという。これにより、これまで時間をかけて調査していたアラートを、AIモデルが付与した届出確率・判定理由を基に判定し、人的リソースを有効に振り分け、調査できるようになったとしている。
この結果、全アラートの約10%にあたる低リスク・アラートの調査を簡素化し、よりリスクの高い領域への集中が可能に。また、AI判定結果は、調査員が現行利用しているりそなHDが開発したケース管理ツール上に表示されるため、業務フローを大きく変えることなく、調査業務の効率化・高度化を実現しているという。
りそなHDのマネロン・テロ資金供与対策/金融犯罪対策における今後の展望
学習、利用、フィードバックの一連の流れを網羅する仕組みを構築したことで、業務フィードバックを受けながら継続的なAIの再学習、精度向上を行っていくことが期待されているという。SAS Financial Crimes Analyticsは、AIスコアリング以外にも、ネットワーク分析や生成系AIとの連携などの機能を有しており、今回のプロジェクトでは活用していない機能についても、今後のプロジェクトで順次採用していくことで、継続的なマネロン・テロ資金供与対策業務の高度化を目指していくと述べている。
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