2009年10月28日、NRIセキュアテクノロジーズは情報資産管理ソフト「SecureCube/Labeling(セキュアキューブ・ラベリング)」の提供を開始した。同社のホームページより無料でダウンロードできる。
SecureCube/Labelingは、電子ファイルに「極秘・関係者限・社内限・公開」などの重要度をラベリングするツール。クライアントPC側で電子ファイルを識別・整理する「Personal」と、サーバ側で各クライアントPCでの利用状況を収集・統合して管理する「Enterprise」の2種類があり、今回提供開始されたのは前者にあたる。
SecureCube/Labeling PersonalをクライアントPCに導入すると、ラベリングが行なわれていないファイルを保存する際に、ラベルの付与を指示されるようになる。表示されたラベルのリストからいずれかを選択すると、ファイル内に重要度に応じたスタンプが印字されるとともに、電子ファイルのプロパティに重要度情報が書き込まれる仕組みだ。
「物理的な資産と違って、形のない電子ファイルを管理するのは難しい。重要度に応じて所定のフォルダに保存するなどのルールを定めていても、個々人の運用に委ねられている限り徹底しきれないのが現実だろう。ファイル保存のタイミングで強制的にラベルを付与させるこの仕組みであれば、情報資産管理の実効性を担保しつつ、その負担も最小限に抑えられる」(NRIセキュアテクノロジーズ 池浦氏)
Excelベースで提供される簡易台帳作成機能を使えば、PC内に保管された全てのファイルについてラベル付与状況を一覧できる。台帳からラベルを付与したり、保存フォルダを一括で移動させるなどメンテナンス作業も行える。ラベリングを通してセキュリティ意識を醸成しつつ、定期的にPC内のファイルの棚卸しするといった使い方が基本となる。共有フォルダも管理対象にできるため、無料版のPersonalだけで職場の情報資産管理はまかなえるようになっている。
ところで、今回発表されたSecureCube/Labelingは、アクセス制御や情報漏えい阻止といったセキュリティ対策までは関与せず、あくまで電子ファイルの重要度管理に機能を限定している。この意図について、同社ITセキュリティコンサルタント ソリューション事業本部長の佐藤敦氏は、「つまるところセキュリティとは『重要な情報を守ること』。ところが、実際には何が重要なのかも分からないまま、とにかく管理するという状況になりがちだ。そこで、今回は電子ファイルの重要度に応じた整理という点に絞って製品開発を行なった。自分たちが扱っている情報資産の状況を整理するだけでも、その会社のセキュリティレベルは向上するはず」と語る。
もちろん、電子ファイルに対する資産管理が定着したところで、各種セキュリティ対策につなげることも可能だ。各ファイルに付与したラベル情報は、他のセキュリティ製品からも利用することができる。例えば、情報漏えい対策製品と組み合わせて重要情報の外部流出を防止したり、プリンター関連製品と連携することにより文書の印刷に制御をかけるといった具合だ。既に、国内外のセキュリティー製品ベンダーと連携を進めているという。
同社代表取締役社長の増谷氏は「より多くの人に使っていただくため、PCクライアントで使用するPersonalについては無償提供という形にした。既に導入しているセキュリティ製品と補完しあってシナジー効果を生む点も特長だ。日本発のグローバルスタンダードとして成長させていきたい」と期待を語った。