日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は、福島県が同社と構築した「福島県総合防災情報システム」が、2024年3月27日に運用を開始し、安定稼働していることを発表した。
福島県では令和元年の東日本台風で、広範囲な浸水の発生などにより32名が亡くなった。同災害では、市町村が発令する避難情報よりも、身の周りの危険を感じたことで避難を開始した人が多かったことから、文字情報だけではなく、雨量や河川の水位など切迫感のある情報を発信することが重要と提言されているという。
しかし、観測や予測技術などの発達により、土砂災害危険度や川の水位情報など災害情報は細分化され多岐にわたり、危機管理担当職員が人手だけで情報発信するには限界がきていたという。
稼働開始した新システムでは、県民向けポータルサイトである「福島県防災ポータル」を構築し、地図などを活用した住民の避難行動に資する情報を発信。気象情報、雨量および河川の水位情報などを迅速かつ一元的に取得して、自動で避難情報の発令候補地域を電子地図上に表示し、住民に迅速に避難情報を発令するための意思決定を支援するとしている。
避難情報や避難所の開設・運営情報に加え、災害情報等の時系列管理や電子地図上での情報集約機能などの主要機能を市町村自身の応急対策でも活用できるようにし、市町村による主体的な利用を促進すると述べている。
また、災害現場などでドローンが撮影している動画をリアルタイムに画面上に表示可能。リアルタイムで配信されている映像情報は複数拠点から同時に確認でき、災害対策本部などで実際の災害現場の状況を把握するのに時間がかかってしまうという過去の災害における課題を解決するとしている。
新システムでは、気象情報、避難指示などの発令状況、避難所開設状況、被害情報、関係機関の対応状況などの情報を県庁内の大画面ディスプレイにリアルタイムに表示。また、収集された情報を集約し、災害時の庁内における会議資料の作成およびポータルサイトへの掲載を自動化するという。人手のない中、各種資料の作成やマスコミなどへの情報提供などといった業務に追われ、ホワイトボードに職員が手書きで記載するという、これまでの一般的な災害対応からの脱却を図り、福島県の防災DXの取り組みを推進するとしている。
これらの機能は、平成28年熊本地震、平成30年西日本豪雨、令和2年7月豪雨などで活用されたIBMのパッケージ・ソリューション「IBM災害対応情報システム」を基に構築。
システム基盤としては、IBM災害対応情報システムに加え、デジタル・インフォメーション・テクノロジーのxoBlos(ゾブロス)、ラクスライトクラウドのblastengine(ブラストエンジン)を採用しているという。
【関連記事】
・IBMがスカイアーチネットワークスを買収 日本市場でのAWS事業拡大へ注力
・アクセンチュア、福島県で5市協力のもと都市OSを新たに稼働 スマートシティ実現に向け加速
・日本デジタルトランスフォーメーション推進協会と福島県郡山市、DX推進に関わる連携協定を締結