富士通は、エンタープライズ生成AIフレームワークを開発し、7月よりAIサービス「Fujitsu Kozuchi」のラインアップとして順次提供を開始すると発表した。
同社は、企業が保有する大規模データの関係性をナレッジグラフで紐づけて、生成AIへの入力データを高度化するナレッジグラフ拡張RAGと、入力タスクに応じて複数の特化型生成AIモデルから、最も高い性能が出るモデルを選択あるいは複数組み合わせて自動生成する生成AI混合技術、そして法令や企業規則に準拠した説明可能な出力を行う生成AI監査技術で構成するエンタープライズ生成AIフレームワークを開発したという。
①大規模データを正確に参照できない生成AIの弱点を克服
既存のRAG技術を発展させ、企業規則や法令、企業が持つマニュアル、映像などの膨大なデータを構造化するナレッジグラフを自動作成することで、LLMが参照できるデータ量を1000万トークン以上するナレッジグラフ拡張RAGを開発。これにより、ナレッジグラフから関係性を踏まえた知識を生成AIに正確に与えることができ、論理推論や出力根拠を示すことが可能だという。
②多様なニーズに対応する特化型生成AIモデルを自動生成
同社は、プロンプトエンジニアリングやファインチューニングなどを行うことなく、自社の業務に適応したAIモデルを生成できる独自の生成AI混合技術を開発。同技術は、生成AIに入力したタスクに対し、最適な特化型の生成AIや機械学習モデルを自動生成する技術や、意思決定に関わる最適化を対話的に行う技術などの既存の機械学習モデルなどを部品のように組み合わせるもの。各AIモデルの向き不向きを予測し、最も性能が高いものを自動的に選択・生成することにより、企業のニーズを満たす特化型生成AIを数時間から数日程度で生成できるとしている。
③企業や法令などの規則に準拠した生成AIを実現
生成AI監査技術は、生成AIの回答が企業規則や法令などに準拠しているかどうかを監査するもの。生成AIの内部動作状態の解析から回答の根拠を抽出し提示する生成AI説明性技術と、回答とその根拠の間の整合性を検証し矛盾点を提示するハルシネーション判定技術で構成される。どちらの技術も、テキストだけでなくナレッジグラフと画像といったマルチモーダルな入力データを対象にすることができるため、ナレッジグラフ拡張RAGと組み合わせてより信頼できる生成AIの活用を実現可能だとしている。
同社は、エンタープライズ生成AIフレームワークを活用した実証実験を行い、契約書順守チェック30%の工数削減や、サポートデスクの作業効率の25%向上、運輸業におけるドライバー最適配置の計画策定時間の95%削減などの効果を見込んでいるという。
また、様々なな業務への生成AI活用上の課題を解決し、約1000万文字の製品マニュアルからQAを作成、モバイルネットワークの接続障害の解析、3ヵ月間の監視カメラ映像解析による作業現場の従業員の疲労度解析、大規模ゲノムデータの解析などへの生成AIの適用を実現し、生産性を向上できることなどを確認したとしている。
今後は、日本語やコード生成といった多種多様なエンタープライズ向けの特化型生成AIモデルを順次ラインアップに追加し拡充していくという。また、経済産業省が推進する国内の生成AIの開発力を強化するためのプロジェクト「GENIAC」に、同社が提案したナレッジグラフの生成・活用に特化したLLM開発事業が採択されている。その中で軽量なナレッジグラフ生成LLMを開発することにより、今回開発したナレッジグラフ拡張RAGがセキュアなオンプレミス環境でも利用可能になるとしている。
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