Google Cloudは8月2日、年次カンファレンス「Google Cloud Next Tokyo ‘24」にて、「Spanner Graph」などの新製品を発表した。
Spanner Graphで生成AIアプリを容易に構築
Spanner Graphは、Spannerのマルチモデル機能を拡張し、実質的に制限のないスケーラビリティでのグラフ処理を可能にするという。Spanner Graphは、業界標準のグラフクエリ言語(GQL)をサポートしており、SQLとの相互運用性を提供することで、単一の操作で構造化データと接続されたデータのシームレスなクエリを実行する。
また、Spannerの全文検索とベクトル検索を発表した。新しい全文検索機能は、Googleが培ってきた検索の専門知識を基盤としており、拡張性に優れた全文検索を実現するという。
GoogleのScaNNアルゴリズムに基づくSpannerの近似最近傍ベクトル検索は、最初にAlloyDBに導入し、今回Spannerに導入した。これにより、インデックス作成と検索ベクトルの埋め込みが可能になり、AI主導のセマンティック検索を強化できるようになったという。Spanner Graph、全文検索とベクトル検索により、Spannerは可用性が高く、グローバルな整合性があり、スケーラブルなデータベースであるだけでなく、シームレスに相互運用できる機能を備えたマルチモデルデータベースへと進化し、新たなAI対応アプリケーションを提供できるようになったとしている。
Spannerの地域別パーティション分割により、単一のグローバルデータベースの管理性を維持しながら、コストを最適化し、世界中に分散するユーザー向けにレイテンシを改善できるという。このような新機能に加えて、新たなパッケージングと価格設定のSpanner エディションを提供するという。
Bigtableが開発者エクスペリエンスを刷新
Bigtableのプロセスを刷新し、Bigtable SQL サポートを発表した。開発者は、Bigtableのパフォーマンス、データモデル、スケールを活用し、既存のスキルを使用してリアルタイムアプリケーションを構築できるという。これにより、100を超えるSQL関数がBigtableで直接利用できるとのことだ。生成AIアプリケーション開発のためのkNNやログ処理のためのJSON操作から、リアルタイム分析のためのデータスケッチの使用まで、ニーズに合わせて拡張できるリアルタイムのアプリケーション構築が容易になったとしている。
また、Bigtable分散カウンタの一般提供開始を発表した。分散カウンタは、AI、不正検出、データメッシュ、レコメンデーションなどのユースケースをサポートするためのイベントストリームの処理など、高スループットの書き込み時間集計用に最適化されているという。
新たなSQL Server向けCloud SQL Enterprise Plus エディション
2023年に発表したPostgreSQLとMySQL向けのCloud SQL Enterprise Plus エディションについて、新たにSQL Server向けCloud SQL Enterprise Plus エディションを発表した。SQL Server向けCloud SQL Enterprise Plus エディションは、Cloud SQL Enterprise エディションと比較して読み取りパフォーマンスが最大4倍向上し、99.99%の可用性SLAと災害復旧を提供するという。
新機能の発表一覧
Google Cloud Next Tokyo ‘24にて、発表された新機能は次のとおり。
- Gemini in BigQuery:データエンジニアリング、データの探索と分析、ガバナンス、セキュリティタスクにAIを活用したエクスペリエンスを提供する。これには、コード生成、補完と説明(SQL、Python)、データインサイト、データキャンバス、データの準備、パーティション分割とクラスタリングの推奨事項などのGemini in BigQuery機能が含まれる
- Gemini in Looker:AIを活用した数式アシスタントにより、データを探索し、複雑な数式から指標を作成できるようにする機能や、分析結果をスライドに直接送信し、Geminiを活用してプレゼンテーションを作成するスライド生成機能など、Google Workspaceとシームレスに統合されている。ユーザーが、BigQueryデータやLookerモデルとチャットするだけで、実用的な洞察を得ることができる
- BigQueryの統合データプラットフォーム:SQL、Spark、Vertex AIとの統合により、構造化データ、非構造化データ、およびオープンフォーマットのデータをシームレスに分析できる。Icebergオープンフォーマットのサポートは、データを自動的に最適化し、コストパフォーマンスを高める。さらに、Deltaフォーマットの一般提供を発表し、ネイティブにサポートするオープンデータ形式のリストを拡大する
- オープンソースApache SparkおよびApache Kafka:データストリーミングと処理をサポートし、サーバーレスなSparkを活用してデータ処理を行う。また、Apache Kafkaを使用してリアルタイムに洞察を抽出し、アクションを実行できる
- Analytics Hubからのリアルタイムストリーミング:Analytics Hub内のリアルタイムデータフィードを購読してアクセスしたり、共有トピックへのアクセスを大規模に管理したりし、データセキュリティとコンプライアンスを確保できる。これは、AnalyticsHubを介したデータパブリッシャー機能とPub/Subストリームの強化によって可能となる。また、Analytics HubとGoogle Marketplaceの統合により、データセット、モデル、ストリームなどの商用資産を購入および販売できるAIとデータのマーケットプレイスで、最新の情報を活用した意思決定をサポートし、商品化が容易にできる
- データ移行サービスと強化されたデータ移行サービスツール:移行のリスクを軽減し、システム費用とデータ転送料金の前払いクレジットを提供し、移行サービスの費用をカバーする資金を提供する。さらに、Google Cloudの移行サービスツールにより、データワークロードの価値実現までの時間を短縮し、移行コストとデータ転送コストを抑える
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