アビームコンサルティングは、日本企業におけるスマートファクトリーへの取り組み実態の把握と課題特定を目的として、製造業従事者を対象に「スマートファクトリーの現状調査」を実施した。
調査概要
- 調査名:スマートファクトリーの現状調査
- 調査期間:2024年2月15日~16日
- 調査方法:インターネット調査
- 調査対象:製造業従事者
- 調査人数:6,186名
スマートファクトリーに取り組んでいる企業は4割未満
スマートファクトリーの取り組み状況について、「モデル工場を設定し、スマートファクトリーに取り組んでいる」と回答した企業は23.5%、「モデル工場での取り組みが完了し、他工場への展開を進めている」と回答した企業は9.4%となり、スマートファクトリーの取り組みを進めている企業は全体のわずか4割にも満たず、まだ発展途上であることが明らかになった。
企業規模別で見ても、規模が大きくなるほど取り組みが進んでいる傾向はあるものの、1兆円以上の規模を持つ企業でもわずか38.6%しかスマートファクトリーに取り組んでいない状況であった。
取り組む目的は「完全自動化の実現」が半数を占める
スマートファクトリーで目指す姿としては、全体では「完全自動化の実現」が45.7%と半数を占め、次いで「工場データとサプライチェーンデータの連携の実現」が20.9%、「匠の技術継承の実現」が13.7%と続いた。
一方で、業種別で見ると、化学や鉄鋼・非金属・金属などのプロセス産業では「工場とサプライチェーンデータの連携」が約3割にも及んでおり、複雑化したサプライチェーンへの対応を重要視していることがわかった。
また、それぞれの目指す姿に対する進捗度について調査した結果、半数以上の企業では取り組みが上手く進んでいることがわかった。しかし一方で、「匠技術の伝承の実現」を除き、4割以上の企業では取り組みが上手く進んでいないことも判明した。
取り組みにおける課題は、人材・資金不足だけではない
「完全自動化」および「工場データとサプライチェーンデータの連携」を目指す企業における課題・困りごととしては、人材や資金不足が一番多く挙げられた。しかし、寄せられたコメントを具体的に見ると、個別工程の自動化やサプライチェーンデータ活用のモデルケースの不足、完成後の業務イメージがない、といった課題も挙げられている。
本来、将来の工場像に向けて取り組むべき自動化やデータ連携が、既存業務の延長線上での取り組みになっている結果、生産性向上につながらないなどの問題が生じていると同社は述べている。
経営層が積極的に関与している企業は上手くいっている
スマートファクトリーに対する経営層のコミットメントと取り組みの成否の関係性について調査した結果、「経営層の活動理解度が高く、積極的に参加している」という企業のうち「上手くいっている」と回答した企業が83.3%を占めた。このことから、経営層による積極的な参画とコミットメントが、スマートファクトリーの成否に大きな影響を与えることがわかった。
一方で、経営者のコミットが高い企業であっても「人材不足」や「活動予算」を課題にあげる企業が多く、リソースを十分には確保できていない状況も明らかになった。経営者はコミットするだけでなく予算や人員を割く必要があり、デジタルツインの使いこなしや部門間横断の取り組みに向け、現場の努力だけに頼らないリソースの確保が必要になってきているという。
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