SAPは、年次イベント「SAP TechEd 2024」において、生成AIコパイロット「Joule」を補完し拡張する新機能を発表した。
Jouleを強化
JouleにコラボレーションAIエージェントを組み込むことで、SAPの使用頻度の高いビジネスタスクの80%をサポートするように機能を拡張。コラボレーション・マルチエージェント・システムでは、特定のタスクを処理するために専用のAIエージェントが展開され、複雑なビジネスワークフローにおいてはエージェントが協調し、共通の目標の達成に向けて各戦略が調整される。SAPは、ビジネス機能全体にわたる独自の専門知識を組み合わせて、複雑なワークフローを協働で達成する複数のコラボレーションAIエージェントをJouleに組み込むという。
TechEdで紹介された2つのユースケースは次のとおり。
- クレーム管理のユースケース:不正確な請求書や紛失した請求書、未適用のクレジット、拒否された支払いまたは重複した支払いなど、クレーム解決のシナリオを分析し解決するために、自律型AIエージェントを採用
- 財務会計のユースケース:請求書の支払い、請求書処理、元帳の更新を自動化することで、主要な財務プロセスを合理化すると同時に、不整合やエラーを迅速に処理するために、自律型AIエージェントを採用
データのパワーを引き出す
2025年第1四半期に、SAP DatasphereとJouleを通じて利用可能になる新しいSAP Knowledge Graphソリューションは、SAPの広大なデータランドスケープ全体で関係性とコンテキストをシームレスにマッピング。ユーザーにビジネスに関する理解をもたらし、組織全体でデータにもとづいてより適切な意思決定を行えるようにするという。
また、発注書、請求書、顧客などのビジネスエンティティ間の関係をすぐに利用できるようにすることで、手作業によるデータモデリングの複雑性を軽減。SAP Knowledge Graphは、AIをSAP固有のビジネスセマンティクスに根付かせることで、不正確または無関係な結果のリスクを軽減し、組織がアプリケーションを容易に開発して生成AIをより効果的に活用できるようにするとしている。
開発者のパワーを引き出す
同社の開発プラットフォームであるSAP Buildにおけるコード説明や、ドキュメント検索といった新しい生成AI開発者向け機能は、JavaやJavaScriptの開発者の作業時間を短縮するという。SAP Buildには、拡張ウィザード機能も追加され、開発者はSAP S/4HANA Cloud Public Editionから直接SAP Buildにアクセスできるようになり、拡張プロセスが簡素化される。これにより、オープン系開発者とABAP開発者のフュージョンチームは、SAP BuildからABAP Cloud開発ツールにシームレスにアクセスできるとのことだ。
また、SAPは、2025年までに世界で200万人のスキルアップを支援するという目標を達成したと発表している。
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