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約40%のクラウドDBユーザーが「テストをせず」バージョンアップを実施、いったいなぜ?

 インサイトテクノロジーが提供するSQLテストツール「Insight SQL Testing」。クラウド移行やバージョンアップ時に、システムが正しく機能するかどうかを自動でテストし、アセスメントするツールだ。手動検証では困難な、膨大なシミュレーション環境の検証も可能なため、「いざ本番環境に移したらエラーでシステムがダウンしてしまった」などといったリスクを未然に防ぐことができるという。2024年10月17日、インサイトテクノロジーは記者説明会を開催し、新たにAmazon Bedrockに対応した同ツールの最新版(ver.4.2)がリリースされたことを発表した。

 同社のCEOである森田俊哉氏は、昨今、日本中でクラウドへの移行が拡大していることに言及。柔軟性とスピードにおいて、オンプレミスよりもはるかに大きな利点を備えているクラウドだが、その維持には「定期的なバージョンアップ」が欠かせない。それも、オンプレミスに比べかなり頻繁にバージョンアップが必要となる。そして、そのたびに検証やテストを行う必要があり、多くの予算や時間、人材といったリソースを割かなければならない。

株式会社インサイトテクノロジー 代表取締役社長 CEO 森田俊哉氏

株式会社インサイトテクノロジー 代表取締役社長 CEO

森田俊哉氏

 そうした課題を解決するInsight SQL Testingの新バージョンについて、同社はその特徴を以下のように発表している。

「Insight SQL Testing」Ver.4.2の特徴

 Insight SQL Testingは、本番環境でアプリケーションが発⾏するSQLを⾃動収集し、収集したSQLを⾃動でテストする。また、定期的にDB移⾏先、バージョンアップ先からSQLを取得し、アセスメントを行う。今回のバージョンアップでは、生成AIによるエラー説明・修正案の提示機能が強化された。

1. 生成AIによるエラー分析機能を強化

 Ver.4.0からスタートしたAmazon Bedrock対応がより強化され、複数の推論モデルを利用できるようになったという。また、製品側で用意したプロンプト以外に、ユーザー側でカスタムしたプロンプトを使用することが可能。カスタムしたプロンプトを保存し、別の分析の際に利用することもできるとのことだ。これにより、SQLの修正工数を削減することが可能になったとしている。

2. 結果区分「性能劣化」の適用範囲を拡大

 現在運用中のSQLを自動収集し、移行・バージョンアップ後のDBとパフォーマンスの比較を行うことで、SQLの性能劣化が一目で判断可能だという。本番環境に適用する前にパフォーマンスの測定ができるため、移行・バージョンアップ時のリスクを回避し、工数削減に貢献するとのことだ。

3. ターゲットDBとしてSnowflakeに対応

 ver.4.1より対応を開始したSnowflakeについても、同様に最新の生成AIを用いてSQLの修正提案や分析ができるようになったという。

 続いて、同社の取締役 CDOである高𫞎則行氏が、クラウドサービス市場の現況やクラウドDB導入の実態について独自調査した結果を紹介した。

株式会社インサイトテクノロジー 取締役 CDO 高𫞎則行氏

株式会社インサイトテクノロジー 取締役 CDO

高𫞎則行氏

 まずはデータベースの利用状況について。日本の至るところでクラウド化が進んでいるようにも感じる昨今だが、実態を見てみると、オンプレミスDBの利用率が62%を占める結果となった。さらに、そのうちの約半数はクラウドを一切利用していない、オンプレミスのみの環境であったという。

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 また、オンプレミスを利用し続けている組織では、バージョンアップの頻度は3回に1回未満が最多だったことに対し、クラウドのマネージドDBを利用している組織では、1年に1回の頻度が最多だった。バージョンアップの対象となるDBの数も、クラウドのほうが多い傾向にある。

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 とはいえ、クラウド利用者側にも大きな課題が見られたと高𫞎氏。クラウドDB利用者のほうがバージョンアップ頻度は高い傾向にあったものの、29%はバージョンアップ対応の必要性を認識していなかったという。加えてその全員が、ベンダーによるサポート期間が過ぎると強制バージョンアップされるということを知らなかったのだ。

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 バージョンアップ対応に必要なリソースについては、オンプレミスDBでは「3~5人体制、2週間未満」が最多だったのに対し、クラウドDBでは「3~5人体制、1ヵ月以上2ヵ月未満」が最多に。ここに、Insight SQL Testingが求められる所以があるということだろう。

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 バージョンアップの検討着手と作業タイミングについて、クラウドDB(AWS RDS/Aurora)に関しては約半数が1年を切った時点から検討に着手し、そのまま作業に入る傾向に。オンプレミスに対し、事前の検討に時間をかけられていないという実態が判明した。

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 加えて、クラウドDBのバージョンアップにおいて、約40%がテストをスキップしたままバージョンアップを実施していることが明らかに。バージョンアップ時の課題としては、「SQLに修正が必要なのか、影響範囲がわからなかった」が最多だった。

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 ここまでを踏まえ、高𫞎氏はデータベースのバージョンアップにおける課題を次図のように棚卸した。

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 なぜ、データベースのテストを欠かしてはいけないのか、理由は簡単だ。もしテストをせずに本番環境に移行してエラーが発生してしまい、システムがダウンでもしたらどうするのだろうか。

 「DX基盤の最適化には、経営や顧客のデータが保管されているデータベースをリアルタイムで活用していくことが重要だ」と高𫞎氏。クラウドへの移行が増えているのも、そうした理由があるからだ。

 しかし、マネージドDBはオンプレミスと違い、継続的にバージョンアップしなければベンダーのサポートを得続けられない。これだと、クラウドはただ手間がかかるだけのようにも聞こえるが、その手間と引き換えに、データベース運用からの解放や高パフォーマンス、新しいテクノロジー、高いセキュリティ水準などといった恩恵を受けられるのが、マネージドDBなのである。

 要は、Insight SQL Testingはこの“手間”を解消し、ユーザーの持続的なマネージドDB活用を支えるツールだといえる。加えて、テストを疎かにすることで起こり得るリスクを、自動化によって軽減する機能も備えている。

 最後には導入事例として、オイシックス・ラ・大地やヌーラボ、リバスタといった企業の名前が紹介された。

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この記事の著者

名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)

2022年よりBiz/Zineで取材編集や執筆を担当。2024年4月、EnterpriseZine編集部に加入。サイバーセキュリティ、データ・テクノロジーに携わる方、テクノロジーによる変革を牽引するCIOやCDO、CISOに向けた情報を発信します。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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