アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は4月16日、2024年7月に開始した「生成AI実用化推進プログラム」の成果発表会を開催した。
代表執行役員社長 白幡晶彦氏は、同プログラムの提供背景として「本格化するAI活用において、日本ならではの開発、日本社会のユニークな実装に応えていく必要がある。この考えのもと、日本独自の様々な支援を行ってきた」と話す。同社では、2023年7月に「AWS LLM開発支援プログラム」を開始し、国内17社のモデル開発企業を支援した。生成AI実用化推進プログラムは、提供開始から1年足らずで150社以上が参加したという。
白幡社長は「AWSは一貫して“ビルダー”を支援してきた。ビルダーとは、開発者だけでなく未来をつくっていく皆さまのこと。そのため、生成AIコミュニティを強力に推進している」と話す。同社の生成AIコミュニティは、アプリケーション開発者やモデル開発者だけでなく現場のビジネス層も加わることで、3層の参加者が出会う場となっている。白幡社長は「技術的な知見と、ビジネスの現場からのフィードバックが互いに刺激し合い、よりよいソリューションを生み出していく。そうした建設的な対話を促進させていきたい」と締めくくった。

続いて、2024年度の生成AI実用化推進プログラムの成果について、サービス&テクノロジー事業統括本部 技術本部長/ソリューションアーキテクト 小林正人氏が説明。同プログラムは、カスタムモデルの開発や改良に取り組む「モデル開発者」向けと、既存のモデルをつかって課題解決に取り組む「モデル利用者」向けの2つの柱で運営されてきた。当初、これら2つを合わせて50社以上の参加を見込んでいたが、実際はモデル開発者向けは30社以上、モデル利用者向けは120社以上と、目標を大幅に超える反響だったという。

具体的には、開発者向けには経済産業省が行う「GENIAC」と連動する形でMetaやAnthropicの有識者を招いた勉強会など開催。モデル利用者向けにはコミュニティ型イベント「学びと繋がりの場」を開催した。生成AIを使う人・作る人が混ざり合うような形でディスカッションを通して課題の共有を実施し、中には同イベントをきっかけに協業につながった例もあるという。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
サービス& テクノロジー事業統括本部 技術本部長 小林正人氏
同プログラムに参加した企業のうち、成果報告会には次の5社が登壇し、成果を発表した。
- 野村総合研究所:業界・タスク特化型LLMの開発~保険業界の業務で大規模商用モデルを超える精度の実現~
- 国土交通省:データ整備・活用・オープンデータ化プロジェクト「ProjectLINKS」におけるデータ構築基盤「LINKSVeda」の開発
- NTTデータ:クリエイティブ作成やデザイン案検討を支援するマルチエージェントソリューション「Multi Agent」の開発
- freee:「freee会計」にAmazon Bedrockを活用した損益計算書を分析・開発する機能「AIクイック解説」の開発
- エイチ・アイ・エス:AIを活用した商品販売条件書読み取りにおける業務改善
(左から)株式会社エイチ・アイ・エス DX推進本部 サービスプラットフォーム企画部 李章圭氏、
フリー株式会社 AIプロダクトマネージャー 木佐森慶一氏、
株式会社NTTデータ テクノロジーコンサルティング事業部課長代理 藤田森也氏、
国土交通省 総合政策局情報政策課 総括課長補佐/Project LINKS テクニカルディレクター 内山裕弥氏、
株式会社野村総合研究所 AIソリューション推進部 大河内悠磨氏
こうした成果を踏まえ、小林氏は2025年度の取り組みを説明した。同社はこれまで、2023年はモデル開発者に取り組む顧客を支援し、2024年は実用化元年としてモデルを作る人・使う人の両社をサポートしてきた。そして2025年度は「ビジネス価値創出」に重きを置く。
2024年度の2つの柱に加える形で、新たに「戦略プランニングコース」を開始する。同コースは、AWSパートナー企業が生成AIの戦略から実装までを一気通貫でサポートするものだという。小林氏は「お客様の業種・業態・ビジネスに関する深い知識や経験が必要不可欠。AWSがテクノロジーのベストプラクティスを提供、AWSパートナー様にはお客様や業務・業界の深い知識を出していただく。そしてお客様を合わせた3社が協力することで、より価値のあるビジネスや業務にAIを適用できる」と強調した。4月16日時点で提供パートナーは、アクセンチュア、野村総合研究所、日本タタ・コンサルタンシー・サービシズの3社が決まっているが、今後も追加される見込みだ。

また、昨年度に引き続いて提供される「モデルカスタマイズコース」「モデル活用コース」には、「AWSパートナー協業」を盛り込む。コミュニティ型イベントの開催は継続し、約3ヵ月ごとに1度開催する予定だ。2025年度の生成AI実用化推進プログラムは4月16日に申し込み受付を開始。今年度は締め切りは設けずに通年で受け付けるとしている。
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