ガートナージャパン(以下、Gartner)は、アプリケーション戦略の策定が日本企業にとって喫緊の課題であるとの見解を発表した。
Gartnerが、2024年9月に従業員数1,000人以上の国内企業で業務アプリケーションの意思決定に関与する企業内個人を対象に実施した調査によると、組織でのIT部門の位置付けや取り組み姿勢の違いが、導入済みの業務アプリケーションによるビジネス成果の獲得に明確な違いを生み出していることが明らかになっているという。ビジネス成果を得られている企業には、成果を得られていない企業と比べて以下のような特徴が見られるとした。
- ITに対する経営層からの理解が得られており、組織の事業において重要な存在と位置付けられている
- 経営層やユーザー部門、ベンダーなど、ステークホルダーからの信頼が厚い
- 経営戦略や中期経営計画を反映しようとし、対話によって理解を深めるなどの努力をしている
- IT業務環境の意志決定に経営戦略を反映している
Gartnerが提示した、アプリケーション/ソフトウェアエンジニアリングリーダーがアプリケーション戦略を策定するための4つのステップは次のとおり。
ステップ1:アプリケーションの役割・価値を示す戦略原則を定める
戦略の方向性を示し、組織が重視する戦略上の価値を表すルールやガイドラインとして働く原則は、あらゆる戦略の必須要素だという。戦略の定義と実行には、利害や価値観の異なる多くの関係者の意思決定と行動がともなうとしている。その企業に固有で有効な戦略原則を策定するには、アジリティ、コスト、ガバナンスなど考慮すべき事項やKPIのうち、何を重視し、何を見送るかを明確にする必要があるとのことだ。同時に、見送ったことで、もたらされるトレードオフを受け入れる姿勢も示すことも重要だとしている。
ステップ2:アプリケーションの「健康診断」を実施する
アプリケーションがビジネスと技術のニーズを満たすには、アプリケーションポートフォリオの定期的な検証が求められるという。アプリケーションポートフォリオの健全性をチェックするために、TIMEフレームワーク(Tolerate「許容」、Invest「投資」、Eliminate「廃棄」、Migrate「移行」) を活用し、ビジネス、技術、コストの観点にひも付く指標に基づいて各アプリケーションの適合性を評価することをGartnerは推奨している。その際は、IT部門の関係者に加え、ユーザー部門の関係者も交えて、どのアプリケーションを優先的に見直しの対象にすべきかについて、合意形成を図ることが重要とのことだ。
ステップ3:ビジネスケイパビリティの「仕分け」を行う
ビジネスケイパビリティとは、組織のビジネスモデルにおける価値提案やミッションを実現し、顧客に提供するために行うべきことを、アクション指向で分類したもの。Gartnerでは、ビジネスケイパビリティとそれにひも付くアプリケーション機能を、ビジネス活動における位置付けと変化のペースに合わせて3つのレイヤーに分類し、メリハリの利いた仕分けを行うことを推奨しているという。
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ステップ4:誰もが直感的に理解できる簡潔なアプリケーション戦略をまとめる
戦略はできるだけ簡潔(たとえば、スライド1ページ)にまとめ、時間が限られている経営陣をはじめとするステークホルダーにも、全体像を理解しやすい形で伝えることが重要だとしている。アプリケーション/ソフトウェアエンジニアリングリーダーは、戦略に含めるべきポイントを特定することに注力すべきだとGartnerは述べる。その際、いきなり完璧なものを作ろうとせず、関係者との合意形成を進めるためのコミュニケーションツールと捉えて、ビジネス戦略やニーズの変化に応じて、アプリケーション戦略を柔軟に進化し続けることが重要だとしている。
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