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2026年はAIが生成する存在から「業務を完遂する」存在へ──AI inside 渡久地氏が予測

 AI insideは2026年1月15日、「AIトレンド予測2026」と題した会見を開催。同社 代表取締役社長の渡久地択氏が登壇し、2025年の総括と2026年のトレンド予測を語った。

 同氏はまず、AIの進化を支える3要素である「計算リソース」「アルゴリズム」「データ量」の現状から振り返った。計算リソースは過去4年で100倍、アルゴリズムは1年で3.16倍のペースで進化を続けており、これらを掛け合わせると3年後にAIは10,000倍、4年後には100,000倍の性能向上に達するという。3年後には人類の能力を超えるAGI(人工汎用知能)が研究を行い、4年後には人類の理解を超えるASI(人工超知能)が世界課題を解決するフェーズに入るとされる。

AI inside株式会社 代表取締役社長CEO 兼 CPO 渡久地択氏

 また、「AIの役割は単なる計算機やツールから、国家の主権や文化、経済安全保障を左右する『基盤』へと変化する」と渡久地氏。具体的には、社会の認識形成に影響を与える「文化的インフラ」としての側面や、防衛・医療・金融といった「国家基幹システム」での依存と脆弱性が議論の焦点になるとした。今後は、これらを作る「AI Factory」の存在が今後ますます重要になるという。

 一方、ビジネスの観点からAIのトレンドを見ると、2025年は「エージェント元年」と呼ばれ、AIができることが劇的に拡大した。推論、タスク分解、計画立案といった能力が実用域に達し、従来のチャットボットから、外部のAPIやOSを操作する「エージェント」へと進化した年であった。しかし、渡久地氏は「技術は進んだが、PoCの段階で止まった」と指摘する。多くの企業でPoCが実運用に移行できなかった理由には、主に以下2つの障壁があるとした。

  • 誤りの累積(長時間タスクの問題):短いタスクでは高い精度を出すAIも、長い業務プロセス(人間換算で数時間以上の仕事)になると、途中の小さな誤りが連鎖して最終的に破綻してしまう
  • 責任分界の曖昧さ:業務をAIに委任する際、「AIが勝手にやった」という言い訳は通用しない。どこまで任せ、どのような条件で停止させ、誰が是正責任を負うのかという設計が曖昧なため、本番導入の瞬間にブレーキがかかってしまう

 「これらを踏まえ、2026年は『AIを導入する』こと自体が目的ではなく、AIに『仕事を任せる設計』を標準化する年になるでしょう」(渡久地氏)

 また、会見ではAIが自律的に稼働できる「時間の伸び」についても言及された。METR(Model Evaluation and Transparency Research)が定義する「人間基準でのタスク完遂時間」という指標から見ると、AIが自律的に仕事をやり遂げられる時間は約7ヵ月ごとに倍増している。なお、2019年から2024年にかけての倍増ペースに加え、2024年以降は4ヵ月ごとに加速する兆候も観測されている。

 かつてのAIは数秒から数分の作業しかこなせなかったが、最新のモデル(AnthropicのSonnet 4.5など)では、30時間以上の自律的なコーディングなどが観測されている。これにより、単発の依頼ではなく、日〜週単位の「業務プロセス」を丸ごとAIに任せることが射程圏内に入ったとのことだ。

 このような長時間稼働を可能にしたのは、AIの単なる「賢さ」だけではない。OpenAI o1やGeminiに見られるように、回答前に「より長く考える(Reasoning)」能力や、自己評価と修正(Plan-Act-Checkの反復)を段階的に行う構造が実装されたことが大きいという。

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 「これにともない、AI市場は成長市場から『選別市場』へと変化するでしょう。単に機能が優れているかどうかではなく、『業務を完遂できるか(運用できるか)』が評価軸となり、PoCを卒業して実益を出す実装主義へとシフトしていくと私は見ています」(渡久地氏)

 同氏は、2026年にAI活用で成功する企業と失敗する企業の分水嶺は「責任設計」にあると語る。AIに仕事を任せる際は、たとえば以下のように責任の持ち方をあらかじめ設計することが重要だという。

  1. 目的責任(Why):何のための業務か、KPIは何か。これは「人」が担う
  2. 委任範囲責任(Where):AIにどこまで任せるか、停止条件は何か。これも「人」が設計する
  3. 実行責任(How):計画、実行、報告。ここは「AI」が自律的に完遂する
  4. 是正責任(After):結果を引き取り、ルールを更新する。最終的な是正は「人」が担う

 「人が担うべき責任は『AIの実行』そのものではなく、『委任の設計』に移る」と渡久地氏は語る。それにともない、AI市場における競争の軸もモデルの精度から監視・制御・信頼性を担保する「オーケストレーション(Ops)」へ移行するとした。

 同氏は、2026年のトレンドを「CHAT→WORK」という言葉に集約する。チャット形式でAIが答えを生成する時代から、今後は業務プロセスの中に入り込む時代へ変化していく。AIが「何をできるか」を語る時代は終わり、AIに「何を任せられるか」を設計する時代が始まるのだ。

 また、AIがテキストデータの枯渇という「データ制約」の課題に直面する中で、現実世界を観測・理解して行動する「Physical AI」の領域が台頭してくる。Gemini RoboticsやNVIDIA Cosmosといったモデルの進展により、2026年は物理的な実装に向けた投資と“入り口”の年になるという。

 これらのトレンドを受け、AI insideもLLM「PolySphere-4」や、AIを業務シーケンスとしてパッケージ化する「Leapnet」、エッジ処理インフラの「Cube」などを通じ、企業が業務を完遂できる環境を提供していくとのことだ。

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 渡久地氏は最後に、「使いこなす企業と止まる企業の差が拡大する。AIがどう賢くなるかではなく、AIに仕事を任せるために企業が何を設計すべきかを定義してほしい」と語り、セッションを締めくくった。

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奥谷 笑子(編集部)(オクヤ エコ)

株式会社翔泳社 EnterpriseZine編集部

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