PwC Japanグループは2月16日、「持続可能な成長と企業価値の向上に向けたCFO意識調査」の結果を発表した。
同調査は、日本企業のCFOを取り巻く課題を高解像度で捉え、今後の役割や変革を示唆・提言するために、以下5つの課題意識を踏まえて実施されたもの。2024年より実施されており、今回で2回目の実施となる。
- 日本独自の設問設計
- 調査対象をプライム上場企業中心に選定
- CEOとCFOのクロスオーバー
- 「認識と行動」「現実と理想」のセットで調査
- アジェンダと潮流(インフレ・関税・AIなど)をミックス
PwCコンサルティングの小林たくみ氏は、同日開催の説明会にて調査結果のハイライトを紹介した。CEOが「目指すべき山の選定(イノベーション)」に注力するのに対し、CFOは「その山への登り方の設計(大胆な変革とコア事業のバランス)」を最大の懸念事項としていると指摘。「昨今、CFOには『攻めの役割』が重要だといわれているが、調査からは価値創造を重視しつつも、依然として統制やコンプライアンスといった『守り』の役割も同等に重視している姿が見て取れる」と分析する。
説明会では、同調査で注目すべきテーマとして「1.事業ポートフォリオ戦略」「2.税務機能」「3.CFO組織におけるAI活用」「4.ファイナンス人材」の4分野について解説された。
1. インフレ時代の事業ポートフォリオ戦略
今回の調査では、資本効率の向上に向けた事業見直しへの関心が高い一方で、採算が取れない事業からの撤退基準はあるものの、実行に移せていない課題が浮き彫りになったとしている。M&Aに関しては、68%の企業が意欲を示すものの、期待した成果を得られた、もしくは得られる見込みがある企業は前年より減少している。
PwCアドバイザリーの山口雄司氏は「特にPMI(買収後の統合プロセス)における課題が増加していることから、短期的なシナジーだけでなく、中長期的な企業価値向上に向けた企業変革をPMIに組み込むことが重要だ」と述べる。
2. 税務機能
また同調査では、CFOの税務に関する管掌範囲と経験に乖離があることが明らかになった。PwC税理士法人 パートナー 塩田英樹氏は、CFOの主要な管掌領域の中で、実務の経験率が低い領域が税務であったとし、税務経験があるほど法制順守、つまり“守り”の意識が強まる傾向にあると分析する。
同氏は「実務経験があるだけに、現場への期待値が“守り重視”になりがちな一方で、経験値がないと現場への理解が不足するという課題も見られる。ただ税務に関する実務経験があるだけでなく『どのような経験をするか』が重要になってきている」と述べる。
3. CFO組織におけるAI活用
PwC Japan有限責任監査法人の服部雄介氏は、どの領域に生成AIを活用していたかという設問に関して、既存業務の効率化を目的としたAIの活用は促進されている一方、「数値および情報の正確性が重要となる開示には生成AIの活用は限定的だ」とした。この背景として「日本企業は特に『生成AIは間違える』という認識が強く根付いている」ことを指摘する。
PwC Japanが2025年に実施した「生成AIに関する実態調査 2025春 5カ国比較」によると、日本は他国に比べ、生成AIを活用する企業の割合に対して費用対効果を感じている割合が低い傾向にある。服部氏はこれについて「日本企業はリスクを正確に判断し、適切に使うガバナンスの意識が強いといえる。AIを効率化にとどめず、対外公表や洞察に活用していくためには、数値・情報の信頼性を担保するガバナンス構築が欠かせない」と指摘した。
4.ファイナンス人材
小林氏は「人材不足は課題ではなく与件だ」とし、ファイナンス人材の育成モデルの再定義を提言した。AIの普及により、従来若手が経験してきた基礎業務は消失していくと考えられるため、“下積みなし”でいきなり応用編からスタートすることを前提としたキャリアパス設計が求められると指摘。「ファイナンスの専門性だけでなく、サステナビリティやDX、哲学、歴史、チェンジマネジメント力などの素養が今後より求められるようになるだろう」と分析した。
また今後は、AI活用によって基礎業務の遂行スキルが必須ではなくなっていくものの、同氏は「AIの結果が正しいかどうか判断する力は必要。従来は基礎業務の中でその力が培われていたところ、その機会が喪失されるとなると、“違和感に気づく力”をどのように養うかという観点で『経験のさせ方』を再考する必要がある」と提言した。
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