NECは2026年4月14日、データクラウド企業のSnowflakeと共同で記者説明会を開催し、自社の経営意思決定基盤「NEC経営コックピット」にSnowflake Intelligenceを組み合わせた取り組みを公表した。SnowflakeのAIエージェント機能をNEC独自の生成AIサービス基盤「NGS(NEC Generative AI Service)」の技術で強化し、CEOをはじめとする経営層が自らデータに問いかけて即断即決できる環境の実現を目指す。
プレゼンテーションに登壇したNECコーポレートIT・AIイノベーション部門AIプラットフォーム統括部シニアディレクターの関徳昭氏は、同社のコーポレート・トランスフォーメーションの歩みを2008年まで遡って説明した。米国上場廃止後の構造改革を経て、2020年中期経営計画でのカルチャー変革「変化の受容」、2025年中期経営計画での「変わり続けることを文化へ」という段階を踏みながら、IT面ではSAP ERPの統一、SAP S/4HANA on AWSへのクラウドリフト、そしてRISE with SAPによるクラウドネイティブ・クリーンコアへと移行してきた。データ活用面でも、Snowflakeを中核に据えたOne Data Platformへと基盤を整備し、2026年からは「AIネイティブカンパニーへ」というフェーズに入っているという。
データ基盤は、国内外のクラウドや様々なロケーションに散在したデータを「集める→貯める→リアルタイムに繋げる→活用する」という4層で処理する構成だ。データ仮想化にはDenodoを使い、SnowflakeがDWH(データウェアハウス)として中核を担う。データ統合にはAzure Data Factory、MuleSoft、Confluentを組み合わせ、OpenAI、Google Gemini、Anthropicといった主要LLMも生成AIとして接続している。こうした基盤の上に、経営コックピット、プライスマネジメント、サイバーセキュリティダッシュボード、社内ITダッシュボード、AI活用ダッシュボードの各システムを構築し、経営・業務・ITを可視化して意思決定に活用できる状態を実現したとした。
AIトランスフォーメーションの対象としてNECが掲げるのは、AI IT変革、AIセキュリティ変革、AI HR変革、AI BPO変革、AIリスク変革、AI営業変革、そしてAI経営マネジメント変革の7領域だ。継続的なQuick Winを積み重ねることでAIによる価値・効果を組織に浸透させ、行動変容につなげる方針としている。社内の生成AI提供基盤NGSは、チャットUI、AIエージェントUI、LLM APIを提供し、ガードレール機能でファクトチェックや不正利用検知を行う。LLMはNEC cotomiのほか、Microsoft AOAI GPT/o3、OpenAI GPT、Claude Sonnet/Claude Haiku、Google Gemini、Amazon Nova Proなど複数のモデルを自動選択する仕組みだ。
AI経営マネジメント変革のコアソリューションとなる「経営コックピット」では、バリューチェーン全体に経営者視点のAIエージェントを組み込む設計を採用している。「経営視点」「専門性」「アクション&トレース」の3フェーズをオーケストレーション機能が統合する構成で、経営視点フェーズではNECの森田社長をモデルにした「モリタス」と呼ぶCEO AIと、CIO、CTO、CHROなど各CxOに対応したAIが資料レビューや対話を支援する。専門性フェーズではFPA AI(財務計画・分析)、リスクAI、知財AI、HR AIなどが情報共有・分析プラットフォームとして会議の質と意思決定の精度向上に貢献し、アクション&トレースフェーズでは立案後の実行をモニタリングしてリスク検知やアドバイスを行う。
Snowflake IntelligenceとNGSの統合では、文書理解、分析・示唆出し、セマンティックレイヤという3つの観点での強化を図るとした。文書理解ではcotomiの図表文脈理解技術を活用して文章と図表を一体的に解析し、分析・示唆出しではKnowledge AIによる専門家AIが精度を高める。セマンティックレイヤでは略語や表記ゆれの自動吸収によって再質問や見落としを削減し、社内用語の自動連携でメンテナンス性を向上させる。「データの意味理解こそがAI活用の鍵だ」と関氏は述べ、プラットフォームへのセマンティック・オントロジーレイヤ追加が不可欠だとした。
今後の展開として関氏が示したのが、社内にある30PBを超える非構造データの活用だ。構造データを使った意思決定支援は経営マネジメント、マーケティング、監査の各領域で既に実用段階にある一方、会議資料・議事録・特許文書などの文書テキスト、メール・チャット、さらには会議の音声・動画や研修・教育動画といった音声映像データにはまだ対応余地が残るとした。セマンティックレイヤ・オントロジーを強化することでデータを自動的に意味理解してオントロジーへ取り込み、最終的にはオントロジーを基盤としたAIエージェント化を実現するロードマップを描く。
Snowflake合同会社社長執行役員の浮田竜路氏は、「データ戦略なくして、AI戦略なし」というSnowflakeの立場を改めて示した上で、情報のサイロ化・真実の不在・意思決定の遅延という「経営の3つの壁」をSingle Source of Truthの確立で打破することを目指す方向性を説明した。「報告を待つ受動的な経営から、経営者自らがデータと対話して即断する経営へ」の転換がSnowflake Intelligenceの目指す姿だとした。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...
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