ガートナー、世界のCIO 2,053人への調査結果を発表
ガートナー ジャパンは3月7日、世界のCIO (最高情報責任者)2,053人に対して実施したCIOが抱える2013年度の課題に関する調査結果を発表した。
同調査は1999年から毎年実施されており、2012年9~12月に行われた今回の調査では、2013年におけるCIOの課題について全世界で2,053社から調査を行った。
これらのCIOは世界41カ国の政府、公共機関を含む36業種に所属し、そのIT予算の合計は21兆円以上に達する。また、同調査では、日本のCIO、78名からも調査を実施。回答企業のIT予算の合計は約1.3兆円に及ぶという。
同社の発表によると、世界のCIOと日本のCIOには、次のような特徴が挙げられるとしている。
・IT予算の前年度比較では、2011年の調査において世界で0.5%、日本で0.3%の増加であったのに対し、2012年は世界でマイナス0.5%、日本でマイナス0.8%と、2010年以来の減少。
・世界のCIOが重視するビジネス戦略は、1位が「企業成長を加速する」、2位が「オペレーションで成果を挙げる」、3位が「企業コストを削減する」。一方で、日本のCIOは、1位が「新商品や新サービスを開発する」、2位が「企業コストを削減する」、3位が「新規顧客を獲得し、維持する」。なお、「企業成長を加速する」は4位、「オペレーションで成果を挙げる」は9位。
・「企業コストの削減」は世界と日本で共通かつ継続的に重視されている戦略だが、全体としては、コスト削減よりも成長戦略重視の傾向。
・世界のCIOが重視するIT戦略は、1位が「ビジネス・ソリューションを提供する」、2位が「ITマネジメントとITガバナンスを改善する」、3位が「IT組織とワークフォース (要員) を改善する」。一方、日本のCIOでは、1位が「ITマネジメントとITガバナンスを改善する」、2位が「ビジネス部門とIT部門のリレーションシップを改善する」、3位が「IT組織とITワークフォース (要員) を改善する」。なお、「ビジネス・ソリューションを提供する」は、日本では10位以下のランキング圏外。
・世界と日本のCIO共に、「ITコストを削減する」は優先度のランクを下げている。成長重視のビジネス戦略に呼応したIT戦略が相対的に重視された結果と分析。
・世界と日本のCIO共に、IT人材の調達とITマネジメント指針の確立に腐心する姿勢が鮮明。この結果は、「先進テクノロジ」の活用を前提とする新しい人材像・組織像がIT部門に求められているためと分析。
・世界のCIOは、「ビジネス (の成長に直結する) ソリューションの提供」の必要性を強く認識している。経営層や利用部門に対して、より明示的かつ直接的な貢献を示さなければならない危機感・切迫感をCIOは感じていると分析。
・CIOが優先するテクノロジでは、世界、日本ともに「アナリティクスとビジネス・インテリジェンス (BI)」「モバイル・テクノロジ」「クラウド・コンピューティング (SaaS/PaaS/IaaS)」が1~3位にランク。万国共通でCIOは、こうした先進テクノロジの活用を重視。
・今回の調査でCIOは、「企業はITの潜在力を平均43%しか引き出せていない」と回答。
ガートナーでは、現在の経営環境の変化や調査結果を受け、現行のITプラクティスやIT戦略はもはや将来の期待に応えられず、「静かなるIT危機」が進行しているとし、これからのCIOは以下の3つの役割を担う必要があるとしている。
(1)Tending:既存のITシステムやITオペレーションの徹底した改善・効率化
(2)Hunting:さまざまな「デジタル・ビジネス」機会の渉猟・発見
(3)Harvesting:直接的な貢献を示せるIT投資収益率 (ROIT) の収穫・刈り取り
CIOはこれまで、自らとIT部門の役割として主に(1)Tendingに重点を置いてきたが、ビジネスのデジタル化が喫緊の課題となる中で、今後は(2)Huntingや(3)Harvestingへ役割をシフトさせていく必要があると、ガートナーは提言している。