大企業/中堅企業を中心にクラウドとモビリティ領域へIT投資
2015年度の国内企業のIT支出計画は、全体では前年比で「変わらない」とする企業が6割以上を占めている。しかし、大企業(従業員規模1,000人以上)/中堅企業(同100~999人)では、その割合が減少して5割を下回っており、その代わり「増加」とする回答が大企業では37.2%、中堅企業では35.9%に達し、ともに「減少」とする回答を上回っている。
IDCでは、アベノミクスの恩恵を受けて業績を伸ばした大企業/中堅企業を中心に、ITに積極的に投資しようという動きが鮮明になっているとみている。
CIOが認識するIT課題、およびIT投資領域において、すべての従業員規模/産業分野でセキュリティに関する項目がトップを占めている。近年、標的型攻撃に代表される高度なサイバー攻撃や、悪意ある従業員による内部からのデータ漏洩などのセキュリティ事件が頻発し、大きく報道されていることから、セキュリティに対する意識が高まっているためとみられる。
また、IT投資領域においては他に「第3のプラットフォーム」、中でもクラウドとモビリティに関する領域が大企業/中堅企業を中心に高い回答率を得ている。
海外展開ではグローバルITベンダーの比率が上昇
業績を伸ばしている大企業/中堅企業を中心に、海外展開を積極的に推し進める国内企業は少なくないが、海外で生じるIT課題へ適切に対応する上でITサービスベンダー選びは重要である。
国内企業が海外展開の際に利用するITサービスベンダーとして最も多いのは、依然として国内で利用している国内ITベンダーだが、その比率は減少傾向にある。一方、豊富な海外での経験に裏打ちされたノウハウを持ち、言語の不安も少ないグローバルITベンダーの比率が上昇している。
国内ITサービス市場は、2015年以降もプラス成長を続けるものの、その成長率は徐々に低下していくとみられる。このような状況の中でITサービスベンダーは、企業の最重要の課題を解決すべく、セキュリティ対策ソリューションの充実に全力を尽くすべきだ。
また「第3のプラットフォーム」をベースに、利益の最大化を目指し企業内の仕組みをInnovate(革新)するためのクリエイティブな能力も求められる。
IDC Japan ITサービスシニアマーケットアナリストの吉井誠一郎氏は、「企業が全社でビジネスをデジタル化するためには、CIOをはじめとする社内のさまざまなポジションを繋ぐ橋渡し役が必要である。ITサービスベンダーは、ITとビジネスの双方に精通することで、この橋渡し役としてユーザー企業内に深く入り込むべきである」と分析している。
今回の発表について詳細は、IDCが発行したレポート「2015年国内CIO調査:ITサービス/アウトソーシング利用実態」にまとめられている。