このネットワークは、山手線エリア内の全36駅において3月までに順次使用開始されており、ネットワーク機器の増強や監視機能の強化などを10月に完了する予定だという。これにより、JR東日本は、各駅でのネットワーク統合管理が可能となり、新たなサービスを早期に構築・提供できるようになった。
東京駅をはじめとしたJR東日本の大規模なターミナル駅構内では、列車運行情報をはじめとした鉄道関連情報など、多数のシステムの膨大なデータがネットワーク上を行き交っている。これまで、システムごとに専用のネットワークを構築・運用していたため、ICTを活用した新たなシステム導入には時間を要することが課題となっていた。
NECはJR東日本と共同で、システムごとのネットワークを統合化し、個々の顧客ニーズに応じた新しいサービスを柔軟・迅速に提供可能とするインフラとして、2014年3月、SDNを用いた「駅構内共通ネットワーク」を東京駅に導入した。これにより、公衆無線LANサービスやロッカーの空き状況の情報提供など、新たなサービスの提供が開始された。
JR東日本では、東京駅における「駅構内共通ネットワーク」の導入効果が得られたことから、複数の大規模ターミナル駅を要する主要幹線である、山手線全駅や、中央線の山手線エリア内の各駅にもこのネットワークの導入が行われた。
「駅構内共通ネットワーク」拡大の概要は次のとおり。
1. 先進のSDN環境を実現するNEC製品「UNIVERGE PFシリーズ」を導入
SDNを活用した「駅構内共通ネットワーク」構成のため、SDNを実現する技術の1つであるOpenFlowに世界で初めて対応したNEC製品「UNIVERGE PFシリーズ」を導入。東京駅を含めた全駅合計で、SDNコントローラ20台、SDNスイッチ174台を導入。
2.大規模・大容量インフラにより「駅構内共通ネットワーク」を一元管理
光ファイバーケーブルによるIPネットワークを使用して、山手線全駅と中央線の山手線エリア内の各駅をリング状に接続することにより、高い可用性を有した大規模・大容量ネットワークを実現。
このIPネットワークを利用して駅間を接続することにより、複数駅のSDNを活用した「駅構内共通ネットワーク」を一元管理することができる。
これにより、山手線内の各駅に対して共通サービスの迅速な提供や、各駅のサービス提供状態の把握が可能となり、顧客サービスの安定と向上に貢献。
各駅で導入した「駅構内共通ネットワーク」の特徴は次のとおり。
1. 新サービスの実施や駅構内の環境の変化に柔軟・迅速に対応
「駅構内共通ネットワーク」は、ネットワーク全体を可視化して統合管理できるとともに、新サービスの実施や駅構内の改良工事のたびに行っていたネットワークの構築や複雑な設定変更などを、ソフトウェアを用いて集中的に実施可能に。
これにより、ネットワーク構築が各段に速くなり、顧客ニーズに応じた新サービスの実現など、スピーディな事業開始に貢献。
2. ネットワークの集約化による経路制御や最適化で安定した運用が可能
SDNによりネットワークを仮想化することで、1つの物理ネットワーク上に、用途に応じた論理ネットワークを作ることができる。たとえば、各駅構内でこれまで個々に構築していた列車運行などの情報を伝送するネットワーク、ホームや改札の状況の映像を伝送するネットワークなどを「駅構内共通ネットワーク」に集約できるようになる。
これにより、山手線エリア内全駅で、大容量な基幹ネットワーク部分における各システムのデータトラフィックの柔軟な経路制御が可能となり、さまざまなシステムに最適な帯域と安定したネットワークサービスを提供。