2015年の市場規模は前年比21.3%増の56億円
2015年の国内モバイルエンタープライズセキュリティ市場は、前年比21.3%増の56億円だった。2015年~2020年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は16.1%で、市場規模(売上額ベース)は2015年の56億円から、2020年には118億円に拡大すると予測している。
同市場の売上額の5割近くを占めるモバイルセキュアコンテンツ/脅威管理市場は、マルウェア対策ソフトウェアや不正アクセス防止、情報漏洩防止の機能を備えたセキュアブラウザーやセキュアメーラーなどへのニーズも高く、市場をけん引していくとIDCではみている。
また、企業におけるクラウドサービスの利用が拡大することで、今後利便性が高くモバイルデバイスに最適化されたモバイルアプリケーションの活用が拡大し、グループウェアなどの情報系システムから基幹システムまでモバイルデバイスの活用が広がり、モバイルアプリケーションへのアクセス管理やアプリケーション間のSSO(Single Sign On)連携、生体認証やリスクベース認証などを組み合わせた多要素認証といったアイデンティティ/アクセス管理とモバイルアプリケーションの脆弱性管理へのニーズも高まるとみている。
ハイブリッド環境拡大でクラウド型セキュリティゲートウェイへのニーズが高まる
モバイルデバイスの利用拡大によって、オンプレミスの業務システムとクラウドサービスが共存するハイブリッド環境が広がっている。社内イントラとインターネットの境界が曖昧で境界域を設定することが難しく、境界防御によるセキュリティ対策の限界が顕在化してきている。
ハイブリッド環境では、すべてのエンドポイントのセキュリティ状況を集中的に管理するクラウド型セキュリティゲートウェイをハブとして、オンプレミスの業務システムやクラウドサービスを利用させるセキュリティソリューションが有効である。
クラウド型セキュリティゲートウェイを経由して情報資産を利用することで、境界防御がなくても、すべての情報資産の利用状況を把握でき、セキュリティ被害を防止できる。IDCでは、モバイルデバイスの利活用が浸透することで、ハイブリッド環境が拡大し、クラウド型セキュリティゲートウェイへのニーズが高まるとしている。
モバイルデバイスの普及に伴い、企業が許可していない個人所有のモバイルデバイスの業務利用や、個人所有のモバイルデバイスでの情報資産の保持、そして許可していないクラウドサービスでの情報資産の利用が容易にできてしまう状況になっている。企業が許可していないモバイルデバイスやクラウドサービスなど「シャドーIT」の環境によって、マルウェア感染や情報漏洩のセキュリティリスクが高まる。
IDC Japan ソフトウェア&セキュリティのリサーチマネージャーの登坂恒夫氏は、「企業向けモバイルソリューションを提供するサプライヤーは、モバイルソリューションの導入提案に際してモバイルデバイス管理ばかりでなく、シャドーITによるマルウェア感染や情報漏洩などのセキュリティリスクを考慮したモバイルセキュリティソリューションも併せて提案すべきである。そのためには、モバイルセキュリティ製品サプライヤーは、モバイルソリューションを提供するサプライヤーと協業して、エンドユーザーにモバイルソリューションを提供することが必要である」と述べている。
今回の発表は、IDCが発行したレポート「国内モバイルエンタープライズセキュリティ市場予測、2016年~2020年」にその詳細が報告されている。