短期的には「鈍化傾向」にあるが、2020年から前年比成長率が再び上昇へ
現在、国内市場ではシステム更新期を契機として、従来型のITからクラウドへの移行が進んでいる。すでに、コラボレーティブアプリケーションはSaaSファーストが浸透しており、ERM(Enterprise Resource Management)アプリケーションもクラウドファーストあるいはクラウドオルソーの戦略が顕著となっている。もちろん、Web系システムではIaaS/PaaSが重要な選択肢となっており、国内パブリッククラウドサービス市場は成長を継続している。
一般的に新興市場では、製品/サービスの普及が進み、市場規模が拡大すると前年比成長率は「鈍化傾向(右肩下がり)」となる。もちろん、ストック型ビジネスであるパブリッククラウドサービスはフロー型の製品/サービスとは異なる推移となるが、前年比成長率の鈍化は回避が難しいものだ。実際、2016年の国内パブリッククラウドサービス市場では成長鈍化が見られた。
しかし、国内パブリッククラウドサービス市場は成長鈍化を乗り越えて、新たな成長期を迎えるとIDCはみている。同市場の前年比成長率は、短期的には「鈍化傾向」にあるが、2020年から前年比成長率が再び「上昇する(右肩上がり)」とIDCは予測している。その背景には、国内企業のデジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)への取り組みがある。
2021年は2016年比2.8倍の1兆538億円になると予測
現在、DXの実現を支援する技術として高い注目を集める「コグニティブ/AIシステム」「機械学習」「IoTプラットフォーム」などはパブリッククラウドサービスとして提供されることが一般化している。また、これらの先端技術の提供に加えて、従量課金/拡張性といった特徴から、DXを支えるIT基盤としてパブリッククラウドサービスの需要は拡大している。
さらには、DXではシステム間の連携が重要となるため「従来型のITからクラウドへの移行」を促進している。すなわち、DXが国内パブリッククラウドサービス市場の「新たな成長期」を創出し、2020年には前年比成長率の「再上昇」へと導く。なお、IT/ビジネスの効率化を目的としたパブリッククラウドサービスに対する需要も堅調に推移する。その結果、「DX」と「IT/ビジネスの効率化」が両輪となり、2021年の国内パブリッククラウドサービス市場規模は、2016年比2.8倍の1兆538億円になるとIDCは予測している。
クラウドが今後のITの主流になることは疑う余地がない。しかし、ITサプライヤーにとってクラウド事業への注力は生き残るための必須条件だが、成長戦略の十分条件とはならない。「ITサプライヤーはクラウド事業を発展させると共に、企業のDXを支援するサービスにおいて存在感を示すことが喫緊の課題である」と、IDC Japan ITサービス リサーチディレクターの松本 聡氏は分析している。
今回の発表は、IDCが発行したレポート「国内パブリッククラウドサービス市場予測、2017年~2021年」にその詳細が報告されている。