アクセンチュアの最新調査レポート「Emerging Technologies in Public Service(行政機関におけるデジタル技術導入)」では福祉サービス、警察・司法、税務、出入国管理、行政、年金・社会保障といった、市民に直接かかわるさまざまな機関における先進デジタル技術の導入状況が報告されている。
アクセンチュアではこのレポートの作成にあたり、日本を含む世界9か国の行政機関に在籍する約800名の技術担当者を対象にアンケートを実施し、先進デジタル技術の導入および試験導入の状況を調査した。先進デジタル技術には高度なアナリティクスおよび予測モデリング、モノのインターネット化(IoT)、インテリジェント・プロセスオートメーション、動画アナリティクス、生体認証/アイデンティティ・アナリティクス、機械学習、自然言語処理/生成が含まれる。
レポートによると、調査対象となった73%の行政機関が、先進デジタル技術への投資で最も期待する点としてデータ・セキュリティやプライバシー保護の改善を挙げている。
出入国管理に携わる68%の機関は、先進デジタル技術を採用することで防御面が強化されることを見込んでいる。社会保障と税務の機関では、さらに多くの回答者が防御面を最大のメリットとして捉えており、それぞれ84%と76%となっている。また税務、年金、社会保障の各機関では、アナリティクス技術や生体認証技術を導入する重要なメリットとして、リスクの削減と詐欺対策強化の可能性を挙げている。
今回の調査では、回答者の71%が、高度なアナリティクスおよび予測モデリングのソリューションの導入を実際に進めていることも明らかになった。データ・アナリティクスのソリューションの導入率がもっとも高い機関は、税務機関(81%)と福祉サービス機関(80%)であり、続いて、出入国管理機関(74%)、公衆安全機関(62%)となっている。
生体認証技術に関しては、全回答者の69%が導入を進めているもしくは導入を検討していると答えている。一方、動画アナリティクス技術については62%の回答者が認識しているものの、導入を進めているとの回答は28%に留まっている。 生体認証技術の導入率がもっとも高い機関は公衆安全機関(51%)で、年金・社会保障機関が48%と僅差で続いている。また、出入国管理機関の36%が、現在生体認証技術の導入を進めていると回答している。
今回の調査によって、生体認証ソリューションに高い需要があり、広く普及していること、特にe-パスポートと虹彩認証が多く導入されていることが明らかになった。実際、生体認証やアイデンティティ・アナリティクスの技術の試験導入、導入、利用状況調査のいずれかを行っているとの回答は3分の2近く(65%)に及んでいる。
■国別の洞察
・データ・プライバシーとデータ・セキュリティは、調査を実施した9か国すべてで重要課題として挙げられている。中でもシンガポール(59%)とオーストラリア(51%)では最重要課題として位置付ける回答者が多くみられた。一方で、プライバシーとセキュリティを課題として捉えていると答えた回答者の割合が少なかったのは、英国(14%)とドイツ(15%)だった。
・生体認証技術の導入を進めていると答えた回答者の割合がもっとも多かったのは、オーストラリアとシンガポールで、共に68%だった。これに対して、導入率がもっとも低い国はフィンランドで、22%に留まっている。
・生体認証技術の導入によって、リスクの緩和やデータ・セキュリティとプライバシー保護の強化が期待できると回答した割合がもっとも多かったのは米国で、51%だった。一方で、日本はこの割合が最も低く、12%に留まっている。
・データ・アナリティクス技術の導入によって、リスクの緩和やデータ・セキュリティの強化が期待できると答えた回答者の割合がもっとも多かったのは、オーストラリア(48%)とフランス(45%)だった。これに対して、この割合がもっとも低い国は米国で、わずか2%に留まっている。
・動画アナリティクス技術を利用しているとの回答がもっとも多かった国は日本で、43%だった。これに対して、同技術の導入率がもっとも低い国はドイツで、18%に留まっている。
・行政機関における生体認証/アイデンティティ・アナリティクス技術の導入率がもっとも高い国はオーストラリアとシンガポールで、共に68%だったでした。続いて、日本(57%)、フランス(42%)、英国(34%)となっている。