旭川医大事件―プロジェクト管理義務の限界 (1/3):EnterpriseZine(エンタープライズジン)
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旭川医大事件―プロジェクト管理義務の限界

2017/11/10 06:00

 この連載でも何度となく取り上げてきましたが、ITを導入するプロジェクトを実施する際、ベンダにはプロジェクトを円滑に運営する為、ユーザ側に様々なことを働きかける義務があります。例えば、ユーザがいつまでたっても要件の追加・変更等要望をやめてくれないとき、「いい加減、要件を凍結してくれないと納期は守れません、お金だってかかります。」と申し入れ、要求を拒絶したり、代替案を出したり、あるいは追加費用の見積もりやリスケジュール等をユーザに申し入れる義務 (権利ではありません。) があるとするもので、これを怠ってプロジェクトが失敗すると、プロジェクト管理義務違反という不法行為に該当してしまうというものです。

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ユーザの要件追加変更を制御するのはベンダの役割?

 この考え方は平成16年3月10日に東京地方裁判所が示して以来、IT紛争に関する一つの定番となり、例えば有名なスルガ銀行と日本アイビーエムの裁判でも取り入れられました。

 <<参考:プロジェクト管理義務の例>>
  • ユーザから追加の要望があれば、それがプロジェクトに与える影響を考慮し必要であれば、納期やコストの変更を申し出る。
  • 必要に応じて代替案を提示し、元の案とメリットデメリットを比較検討する。
  • プロジェクトにおけるユーザの役割を説明し、十分に関与する
  • プロジェクトの進捗、リスク、課題等を管理し、問題があればユーザも巻き込んで解決を主導する。 等

 しかし実際にシステム導入プロジェクトに入ってみると、このベンダのプロジェクト管理義務を果たすのは相当に困難だと言うことが分かります。ベンダにとってユーザは”お客様”です。プロジェクトの進行を妨げかねない要望も、むげに断ることはできませんし、まして追加見積を出すことなど顧客満足度を考えると、そうそう簡単にはできません。結局は我慢して飲んで、最悪、スケジュールが守れないときにはユーザに ”許してもらう”、お金が足りなければ赤字を背負って、話の通じるユーザなら追加開発時に少しだけ上乗せしてもらう、といったことを落としどころにする例が多いようです。実際、前出の判決の話をすると、多くのベンダからは「これは現実的ではない。」といった悲鳴が良く聞かれるのも事実です。

 一方のユーザサイドからこのプロジェクト管理義務を見るとどうでしょうか。ベンダがこの義務を果たすためには、ユーザにも協力義務があり、そこそこ我慢も必要ではありますが、極端な話、ベンダ側がYesと言ってくれる限り要望を出し続けられるともとれる、この考え方は自分達のワガママを肯定してくれるものと捉えることも出来るわけですから、少し安心したという方もいるかもしれませんね。

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著者プロフィール

  • 細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

    ITプロセスコンサルタント 東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員 1964年神奈川県横浜市生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。大学を卒業後、日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステムの開発・運用に従事した後、2005年...

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