イノベーションを起こすために適切にリスクを管理
オープニングの基調講演に登壇したCA TechnologiesのCEO マイケル・グレゴア氏は、アイデアを生みそれを実行することの重要性について語った。エンタープライズ向けのアプリケーションは、これまでビジネスプロセスの効率化を実現してきた。それが今では、ビジネスの価値提供に目的が変わりつつあると指摘する。
「企業にとって大きな変化となるイノベーションをもたらすことが重要です。そのためにはアイデアと、それを実行するための障壁を取り払う必要があります。そのためのソリューションを提供することが、CAにとってもっとも大切なことなのです」(グレゴア氏)
人間やサル、リスなどの動物は、基本的には保守的な選択を行う。とはいえ少数だが、リスクを好む人たちがいるのも事実だ。その人たちはリスクを求めているわけではないが、リスクをとることに恐怖を感じていない。そういった人たちの行動から、イノベーションが生まれることがある。これを企業に置き換えて考えれば、イノベーションを起こすにはリスクを避けるのではなく、適切にリスクを管理する必要があることとなる。
新しいアイデアが生まれ、それを実現することがイノベーションにつながる。しかし新しいことをビジネスで始めようとすれば、躊躇することも多々ある。アイデアの実現がビジネスにとっての一番の武器になるが、アイデアの実現にはリスクが伴うからだ。しかしながら、リスクを懸念して何もしないことこそが、ビジネスにおける最大のリスクだ。
そして新しいデジタル事業を展開するには、得られる大量のデータを上手く分類し理解する必要がある。保険会社のOPTUM社では、何億もの保険契約者のデータを用いビジネスを大きく変革している。データを使ってユーザー体験を刷新し、ヘルスケアの業界でより良い意思決定ができるようにしているのだ。
小売業界においては、オンライン店舗の影響が今、かなり大きなものとなっている。そんな中でホームデポでは、実店舗も含めて変革に取り組んでいる。CAのAPIマネージメントとシングルサインオンのツールを用い、店舗における顧客体験も変革しているのだ。
「ホームデポでは、実店舗においてもデジタル化がきちんと機能しています。オムニチャネルの実現で、実店舗にも未来はあるのです」(グレゴア氏)
実際、小売業界に多大な影響を与えているAmazon.comが、今は実店舗を運営している。このことからも、オムニチャネル化することで、実店舗の活用にもまだまだ将来性が見込めるという。
一方金融業界ではCiti FinTechが、CA Agile Requirements Designerを活用して開発が迅速化し、顧客のモバイル体験の改善を実現している。金融業界では顧客ニーズがどんどん変化しており、それに対応するには従来のウォーターフォール型の開発手法はもはや使えない。そこでCiti FinTechではCAに相談し、開発サイクルを高速化することにした。結果として、ウォーターフォール型では3年から5年もの時間がかかりそうなことを、8ヶ月で実現できたとのこと。現状では顧客がより速いスピードを求めており、その顧客と共に新たな仕組みを開発できなければならない。そのためにはDevOpsを実現するCAの「The Modern Software Factory」が効果的というわけだ。
もう1つの事例として紹介されたのが、欧州のスポーツ・ネットワーク「Eurosport」だ。こちらではCA API ManagementとCA App Experience Analyticsを導入し、ファンがより自分の好きなスポーツに近づけるようにするための視聴体験を提供している。Eurosportでは、サイクリング情報をライブでファンに提供したいと考え、それを実現するためにCAと共同でプロジェクトを進めた。
その結果Eurosportでは、映像配信を単にデジタル化しただけでなく、より効率化しリアルタイムに全ての視聴者に対し、あらゆるデバイスに配信できるようにした。これによりサイクルスポーツのファンは、よりレースに近づくことができるようになった。こういう顧客体験の変革は、全てのスポーツで可能性がある。