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ありのまま話すぜ! Oracle CloudのOracle Databaseを使うメリット/デメリット《後編》

 前編では、作業員の出入りを確認する「建設現場の入退場管理システム」をOracle Cloudへ移行したワム・システム・デザインに、データベースにOracle Databaseを選択した理由、オンプレミスからクラウドへ移行する際にOracle Cloudを選択した理由を伺った。この後編では、移行し運用してみて感じたことや分かったことなどをさらに尋ねてみた。

対談の《前編》はこちらから

ゲスト(順不同)

  • 岸和田 隆氏(株式会社アシスト)
  • 田村 慎二氏(ワム・システム・デザイン株式会社)
  • 山本 祐介氏(日本オラクル株式会社)

司会

  • 谷川 耕一氏(DB Online チーフキュレーター)

8月のサービスイン以降「入退場管理システム」は順調に稼働中

谷川 耕一氏(以下、谷川):後編では、前編に引き続きワム・システム・デザインさんが開発した「建設現場の入退場管理システム」についてお話を伺いながら、オラクルのクラウドとデータベースについてもう少し踏み込んでいきます。当初のオンプレミス運用から現在のクラウド運用に移行してから、どれくらい経ちましたか。

田村 慎二氏(以下、田村):2017年の8月からですからまだ3か月程度です。その間、SLA以上の動きは確保していますし、予定外の停止などももちろん起きていません。

田村 慎二氏
田村 慎二(たむら しんじ)氏
ワム・システム・デザイン株式会社 取締役社長。
1983年高校生で某財団の最年少研究員としてハード・ソフトウェアの設計・製作及び研究開発に携わる。その後FAシステム開発に着手。2000年ごろから物流・製造大手のWMSシステム「蔵スター」を開発。近年カラーコード活用をきっかけに、ゼネコン各社向けのシステム開発に従事。

谷川:このシステムが稼働しているOracle Cloudは、サーバーが米国にあるものだと伺いました。海外のサーバーを使うのに抵抗はありませんでしたか。また、システムを利用されているエンドユーザーの企業は、自社のそうしたデータが米国にあるクラウドに格納されることについて、どう感じておられたでしょう。

田村:当社の開発陣としては、検討段階で十分に“お試し”をやってみて、特に問題は見られず、レスポンスについても確認できたので、米国のサーバーを使うことに不安はありませんでした。またお客様の側も、こちらからクラウドでご用意しますというお話を最初にして、すんなり了解いただけました。運用管理の面でも、SLA以外に特別なご要望もありません。もちろん、お客様から細かいご要望がなくても運用責任は当社にありますので、ブランドも実績も確かなデータセンターを選ぼうと考えました。これもOracle Cloudを選択した理由の一つです。

谷川:入退場管理システムは、どんな建設現場で利用されていますか。

田村:現在は、あるトンネル工事現場で使われています。今回のトンネル工事では、前後1か所からではなく、上下線の前後から掘り進んでいくんです。今はまだ出入口は数か所ですが、工事が進むにつれ、横穴の出入口が増えていきます。ですが、このシステムでは出入口が増えるたびにゲートを増設し、iPadやネットワークカメラを追加していけば対応できます。

谷川:可用性といえば、こういう建設現場のシステムの稼働時間はどれくらいになるのでしょう。

田村:工事によっては日中だけのところもありますし、トンネル工事は昼夜交代で掘り進むので、工事が進んでいけば24時間稼働になるでしょう。もちろんシビアなトランザクション負荷がかかるようなものではありませんが、そういう意味ではミッションクリティカルなシステムの1つだといえます。

クラウドのコスト面でのメリットは「資産を持たないこと」

谷川:少し、コスト面でのお話も伺います。ハードウェアを自前で用意していたオンプレミスの時と比べて、コストと性能の印象はどうですか。

田村:使うサーバーにもよりますが、たとえば当社の物流システム(WMS)で使っているOracleで比較すると、RAC環境を構築してハードウェア保守も含めて5年ベースで積算した総額とクラウドでは、費用面で大きな差はありません。オラクルのクラウドの料金制度には定額制と従量制の2種類が用意されていますが、定額制を選べばそんなに高くならないのです。他社のクラウドと比較しても、ほぼ同程度でしょう。

谷川:価格がほとんど同じならば、ハードウェアやOSの更新、パッチの適用といった手間が省ける分、クラウドの方がお客様は楽ではないですか。

岸和田 隆氏(以下、岸和田):そうですね。パッケージだと保守作業はお客様の負担となるところを、クラウドならばサービスプロバイダで肩代わりしてくれるという利点があります。もっともSI企業というのは、そうしたところで料金をいただいていたわけで……これからはクラウド時代に合わせ、新しいビジネスモデルを考えていかなくてはなりませんが(笑)

株式会社アシスト 岸和田 隆氏
岸和田 隆(きしわだ たかし)氏
株式会社アシスト データベース技術本部 ビジネス推進部 部長
OracleDBの研修講師、フィールド技術、製品検証担当を経て、2007年 自社ブランド「DODAI」の準アプライアンス製品の企画・開発。その後、ODA、Exadataを含む新製品の立上を担当。現在「データベースのアシスト」を目指した活動に従事。

谷川:オンプレミスで「ハードウェア/ソフトウェアを“資産”として購入する」場合と比較して、「サービスに“費用”を払って使う」クラウドの最大のメリットは何でしょうか。

田村:ひとことで言うと、「資産を持たないこと」です。たとえば、期間限定のプロジェクトで、将来も継続して使わないとわかっているシステムでは、自前のハードウェアやソフトウェアなどの環境を用意しなくてよいので、初期費用を大幅に抑えられます。

谷川:それこそトンネル工事のように、ある一定の期間しか使わないということであれば、購入しないで済むのは当然選択肢としてメリットが大きいですよね。

田村:特に建設業界では、基本的に建機から什器まで何でもレンタルする習慣があるため、資産として持つことをとてもいやがるんですね。こうしたニーズに対し、システムをクラウドで提供する入退場管理システムというのは、十分に有効な回答だったと自負しています。今回の成果を踏まえて、今後は建設業界以外にもクラウドのメリットを感じていただける業種に、積極的にご提案していきたいと考えています。

谷川:オンプレミスだとサーバーの償却年数はだいたい5年のスパンでしたが、それより短い2~3年でシステムが入れ替わるサイクルのお客様であれば、システム提案する側としても、クラウドを積極的にお勧めする可能性が出てきますね。

山本 祐介氏(以下、山本):費用という面でぜひお伝えしておきたいのが、クラウドだとStandard EditionとEnterprise Editionの差がオンプレミスライセンスほど大きくないということです。Enterprise Editionでは、少ないCPUでも効率的に処理を行う機能が多く搭載されています。そうした機能を活用することで、クラウド移行のメリットがより大きくなると考えています。クラウドの特性に合わせて、より手軽にご利用いただける価格モデルに、意識的に移行しつつあるのです。

谷川:今後はクラウドの方が、さらに敷居が下がって使いやすくなると見ていいですか。

山本:おそらく、そうなっていくと思います。ナレッジの部分はオンプレミスと変わらないので、コスト面での有利さを活かせる形でお使いいただきたいですね。そういう意味で、今後もオンプレミスとクラウドを同時にアピールしていけたらと考えています。

クラウド自体の速さとシステムの見かけ上の速さは異なる

谷川:Oracle Cloudを使ったソリューションに詳しい岸和田さんに、クラウド上でOracle Databaseを使う際の性能面の課題や、運用に対する考え方を伺いたいと思います。一般に、「オンプレミスで運用しているものをクラウドに移行したらパフォーマンスが落ちる」と思われがちですが、それについてはどうでしょう。

岸和田:当社でOracle Cloudとオンプレミスの性能比較テストをしたところ、実はクラウドの方が速かったんです。しかし、実際にはネットワークの部分でレイテンシ(遅延)が発生するため、トータルで見ると「クラウドの方が遅い」となってしまう。ユーザーが手元にある端末のブラウザから、クラウド上にあるアプリケーションにアクセスした場合、オンプレミスの時より遠くにあるクラウドのデータセンターと通信するため、結果としてどうしても遅くなります。一つの課題ですね。

谷川:クラウド上で完結している部分はクラウドの方が速いが、実際に業務ソリューションとして使用する場合には、そういう問題が発生してしまうわけですね。

谷川 耕一氏
谷川 耕一氏(たにかわ こういち)氏
EnterpriseZine/DB Onlineチーフキュレーター。
ブレインハーツ取締役。AI、エキスパートシステムが流行っていたころに開発エンジニアに、その後雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダの製品マーケティング、広告、広報などを経験。現在は、オープンシステム開発を主なターゲットにしたソフトハウスの経営とライターの二足の草鞋を履いている。

岸和田:厳格にレスポンスだけを計測すればそうなります。しかし、オンプレミスからクラウドに移行した場合、以前に構築した古いシステムが、クラウド上の最新の環境に変わることになります。DBの性能は向上することが期待できますので、アプリケーションを利用するユーザー視点で評価することが大切だと思います。

多彩な用途や応用の可能性を秘めたクラウドの将来に向けて

谷川:Oracle Databaseの Standard Edition(SE)およびStandard Edition One(SE1)がOracle Standard Edition 2(SE2)に一本化されたことで、「SE/SE1の、この先をどうするか?」に注目が集まっています。「SEからの乗り換え先としてのOracle Cloud」というのは、あり得るでしょうか。

田村:可能性はあると思います。岸和田さんが話されたレイテンシの問題ですが、Oracle Cloudの“お試し”の時にWebサーバーを自社のネットワーク上に置いてテストしたところ、非常に遅くてこれはだめだとなりました。そこで今度は同じサーバーをIaaS上に置いてみた結果、解決できたのです。この時はまだ米国リージョンのデータセンターでしたが、先ごろ、日本リージョンも新たに設置されたということで、一層のパフォーマンス向上を期待しているところです。

谷川:もう一つ、いろいろなテストを行う環境としてクラウドを活用するのはどうですか。現代のデータベースはメモリに余裕を持たせると飛躍的にパフォーマンスが向上しますが、テストのためにそれだけのハードウェアを用意するのは難しい。その点クラウドなら、必要な時にすぐ環境を用意できて、使い終わればすぐに手放せます。この特長をテスト環境に利用すれば、開発の効率化とコスト抑制の両面でかなり有効だと思うのですが。

岸和田:従量制の課金メニューを選んで、オンプレミスのキャパシティをOracle Cloud上でシミュレーション計測するといった使い方などはいいかもしれません。もちろん、本当のオンプレミス環境と同じ計測値は出ませんが、開発前にある程度のあたりをつける参考値には十分使えると思います。

谷川:あと、現実的に可能かどうかわかりませんが、普段はオンプレミスで運用し、ピーク時にクラウドにリソースをシフトするといった、柔軟で迅速なデータベース拡張なども考えられますか。たとえば、処理が重くなる月末のバッチ処理だけクラウドに上げるといった使い方です。

山本氏:災害対策や、開発環境をクラウドへオフロードするというユースケースは一般的です。オンプレミスとクラウドでデータを常時同期させておいて、開発の方だけをリソースの自由度の高いクラウドでやるとか。ただし、同一の処理を分散するといった使い方だと、データのパーティショニングの問題などがあって、これからのユースケースかとは思います。

山本 祐介氏
山本 祐介(やまもと ゆうすけ)氏
日本オラクル株式会社 クラウドプラットフォームソリューション統括 Cloud Platformビジネス推進本部
エンジニアとしてお客様への技術提案を担当した後、データベースを中心としたビジネス推進を担当。現在は、Oracle Cloud Platformのビジネス推進を行う。

谷川:そうした可能性の一方で、クラウドにはきちんと定義などを詰めて標準化していくべき部分も多く残っています。たとえば、データベースの可用性一つとっても、オンプレミスの場合は厳格に定義されていますが、クラウドは割とひとくくりで考えられている節があります。ここをもっとベンダーやSI企業の側からお客様に丁寧に説明していくことが、より適切で効果的なクラウドの活用につながるのではないでしょうか。

山本:ご指摘の通り、可用性の種類にもサーバー障害やデータ障害などいろいろなケースがあります。たとえば、データ障害だと、オンプレミスの場合はお客様の運用状況によって原因も障害のレベルもまちまちですが、クラウドの場合は、クラウドベンダーが担保している部分もありますし、また障害の種類によっては、クラウドの機能で自動的に対応できるのも良いところです。私たちベンダーとしても、お客様の貴重なデータベースをクラウドに移行していただくメリットとして、積極的にお伝えしていきたいと考えています。

谷川:ユーザーにもシステム提案をするSI企業側にもクラウドはまだまだ未知数ですが、この座談会で挙げられた課題について真摯に取り組んでいくことで、さらに大きなメリットやソリューション開発の可能性が生まれてくるのは間違いありませんね。本日は、貴重なお話をありがとうございました。

クラウドの時代になってもデータベースはコンピュータシステムの核としてエンジニアの関心の的。今回の座談会に参加したエキスパートの尽きない議論がそのことを改めて教えてくれた
クラウドの時代になってもデータベースはコンピュータシステムの核としてエンジニアの関心の的。今回の座談会に参加したエキスパートの尽きない議論がそのことを改めて教えてくれた。ちなみにこの座談会は、日本オラクル本社が入っているオラクル青山センター22階のカフェテリアで行われた。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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