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マイクロソフトが提供する医療・医薬品産業向けヘルスケアクラウド

 世界の60歳以上の人口は年率で1.2%ほどの割合で増えており、2025年には20億人に達すると予測される。世界規模で高齢化が進む中、ヘルスケア産業の市場は急速に拡大。そのため医療、医薬品分野においてはデジタル変革を促進させ、次世代型ヘルスケアのあり方が求められている。

医療、医薬品分野の課題はデータを活用するデジタル変革で解決する

 日本では、医療費が2025年度には60兆円を超える見込みだ。そこで政府は新たに健康、医療戦略を立て、医療介護の軸をデータ活用による予防、健康管理の技術支援にシフトすることを表明した。これでより高品質な医療サービスと、高齢者の心身豊かな生活と同時に実現し、さらに医療、社会保障費の削減を目指している。

 マイクロソフトは金融、流通、製造、自動車、メディア、政府・自治体、教育、そしてヘルスケアの8つのインダストリーにおける、産業のイノベーションの支援に力を入れている。医療、医薬品業界においては、横断的なデータの活用が難しいと言う共通課題がある。その結果、医療・介護・健康のサービス提供では、地域間での格差が生まれている。さらに、それぞれの職種間での連携もままならない。これら課題の中で、人々の状況やライフステージに合わせ最適な医療・介護・健康サービスをいつでも利用しやすい形で提供されることが求められているのだ。

 医療、医薬業界の課題解決のために、それぞれの領域で発生するデータを横断的に利用したい。とはいえ、2020年には1人の人が生み出す健康に関するデータは1日に1ギガバイトを超えると言われており、データを横断的に活用したくても量が多く簡単ではない。個々の企業が独自に莫大なデータを管理するのは、もはや難しい時代になっているのだ。

 対して次々に生まれる大量データを効率的に管理する方法の一つが、クラウドの活用だ。しかしながら医療、医薬品の機密性、重要性の高いデータを、クラウドで扱って本当に大丈夫なのか。その不安を解消するには、医療、医薬品業界の各種規制やガイドラインにきちんと沿ったデータの取り扱いができるかが鍵となる。

 マイクロソフトでは、クラウド環境であるMicrosoft Azure(以下、Azure)で医療、医薬に関連するデータを適切に扱えるようにするため、各種規制やガイドラインに積極的に対応している。国内では、厚生労働省、経済産業省、総務省が定めている患者の情報を取り扱うための3省4ガイドラインや、厚生労働省が定めている薬の製造や流通に関係するシステムに必要なCSVといったガイドライン、レギュレーションに対して、Azureがどう準拠しているかといったレファレンスペーパーを出すことで、より安心して使える状況を作り出している。また、3省4ガイドラインの一つである総務省の「ASP・SaaS事業者が医療情報を取り扱う際の安全管理に関するガイドライン」が2018年7月に改定され、「クラウドサービス事業者が医療情報を取り扱う際の安全管理に関するガイドライン第1版」とリバイズされたことを受け、新しい3省3ガイドラインに関しても対応予定である。

 このようなガイドライン対応を真摯に公表する取組の結果、すでに国内外において患者の情報ならびに創薬の情報といった重要データをAzureで扱ってきた多くの実績がある。それ以外にも、日本初のクラウド セキュリティ ゴールドマークを取得するとともに、ISO 27018、HIPAA、FedRAMP、SOC 1、SOC 2など幅広い国際的および業界固有のコンプライアンス基準に適合している。

 またセキュリティ対策には、かなり力を入れている。サイバーディフェンス オペレーションズセンターでは、Azureデータセンターへの外部からのトラヒックを24時間体制で監視している。ネットワークレイヤには人工知能を用いたDDoS、DOS、IDS防御機能を備え、不正トラヒックを90秒以内に自動検知し遮断できる体制が整っている。ここにはセキュリティ専門家やデータサイエンティストが多数常駐しており、1日5億件以上のトラヒックを分析しているのだ。さらに日々進歩する攻撃に対して、攻撃/防御演習であるレッドチーム演習も実施しており、高度で実践的な侵入対策も行われている。

 Azureでは極めて高い可用性も提供でき、日本のデータセンターだけで強固な災害対策構成が可能だ。東日本、西日本の各リージョン内でデータは3重に複製され、東西合わせて6重の冗長化で広域的な災害対策が完成する。

 またマイクロソフトでは、規制やガイドラインに沿うだけでなくAIや機械学習、IoTなどの新しい技術のヘルスケア領域における活用にも取り組んでいる。たとえばホログラフィックコンピューティングのHoloLensを利用した、医療現場でのMixed Reality技術の活用もある。HoloLensを用いた仮想、拡張現実技術でシミュレーションを行い、高度な医療技術を習得するためのトレーニングをサポートしている。他にも未来の手術室設計の支援を行うなど、既にHoloLensは医療現場で活用されつつある。

 他にもゲノムを含むビッグデータの解析をAzure上のハイパフォーマンスコンピューティングで行うことで、スーパーコンピューターと同等の性能を測定するとともに、機械学習による新薬開発支援を行っている。一方、医療現場では、Cognitiveを活用した画像解析支援に大きな期待が寄せられているとともに、一部の医療機関やカルテパートナーではすでにAzureでのCognitive実用化が進んでいる。このように「テクノロジーによって、医療、医薬品の現場での働き方や環境を大きく変えていくことが可能になります」と言うのは、日本マイクロソフト パブリックセクター事業本部 医療・製薬営業統括本部 シニアインダストリーマネージャーの清水教弘氏だ。

マイクロソフト パブリックセクター事業本部 医療・製薬営業統括本部 シニアインダストリーマネージャー 清水教弘氏
マイクロソフト パブリックセクター事業本部
医療・製薬営業統括本部 シニアインダストリーマネージャー
清水教弘氏

製薬企業独自の課題解決により沿ったデジタルトランスフォーメーションシナリオ

 ところでヘルスケアの中でも、医薬品業界には独自の課題がある。その一つが医薬品の製造に大きなコストがかかること。医薬品の研究開発費は9年ごとに2倍となり、製薬企業の収益の10%から20%が充てられている。さらに新薬が市場に出るまでに15年もの月日が必要で、そのコストは25億ドルにも上る。他にも医薬品の特許が切れることで製薬企業の収益が悪化するので、計画通りに確実に新薬を開発する必要もあるのだ。

 マイクロソフトではこれら製薬企業の課題対策を、4つのデジタルトランスフォーメーションシナリオに合わせてアプローチしている。1つめがチーム対応力の強化。デジタル化により創薬開発現場のコミュニケーションを促進し、働き方改革を実施する。それによりグローバル規模で創薬開発のための情報連携を図り、創薬発掘の迅速化などを支援している。2つめが、デジタル化による患者に対する適切な服薬管理の実現だ。これにはたとえば認知症患者などへの確実な服薬記録をと取るために、IoTなどを活用するのだ。それにより、家族の見守り負担を軽減する効果などが見込める。

 3つめはデジタル化による臨床および運用の有効性の最適化で、機械学習やAI技術などを活用し研究開発部門での大量データ解析で意思決定支援の迅速化を行う。4つめはデジタル化によるヘルスケア全体の変革だ。これはたとえばデジタル化で製薬企業と医療機関の連携を強化し、処方薬影響の測定などを実現する。

 マイクロソフトは上記のようなデジタル化による製薬企業の変革をサポートする上で、医薬品の開発、製造から管理、保管、流通に関わる全てのシステムをクラウドで安心して利用してもらう。そのために、グローバルな規制、ガイドラインにも対応する。これには、製薬企業がMicrosoft Azureの上で基幹システムであるSAP ERPを利用するようなものも含まれる。

 たとえばSAPのERPをクラウド化するとなれば、3年ほど前から検討することになる。パブリッククラウドで動かすと、今まで自らオンプレミスで行っていたハードウェアやミドルウェアの管理をクラウドベンダーに任せることに。「たとえばSAP ERPをAzureで使う場合に、マイクロソフトは製薬企業が守るべきレギュレーションをどこまで保証してくれるのか。顧客が納得できるものを、ベンダーとして提供できなければなりません」と語るのは、日本マイクロソフト パートナー事業本部 パートナー技術統括本部 プリンシパルパートナーテクノロジーストラテジストの佐藤邦久氏だ。

日本マイクロソフト パートナー事業本部 パートナー技術統括本部 プリンシパルパートナーテクノロジーストラテジストの佐藤邦久氏
日本マイクロソフト
パートナー事業本部 パートナー技術統括本部 プリンシパルパートナーテクノロジーストラテジスト
佐藤邦久氏

規制やガイドラインに対応するだけでなく医療、医薬品企業の変革を長期にわたりサポートするヘルスケアクラウド

 製薬企業に、安心してAzureを使ってもらう。そのためにマイクロソフトでは、医薬品の製造、管理、保管、流通段階における安全性と確実性の確保を目的に策定されたグローバルのガイドライン、規制である各種GxP(Good x practice)に対応してきた。日本においてはGxPに加え、製薬企業の日本独自のシステム利用ガイドラインとなる「コンピュータ化システムバリデーション(CSV)」に対応している。その取り組み結果として、たとえばAzure上でデータの管理、削除を行う際にマイクロソフトはそれをどのように保証するかを明らかにする「医薬品・医薬部外品製造販売業向け『Microsoft Azure』対応CSV適用リファレンス」を公開している。

 「クラウド化により、Azureが担うインフラ部分がブラックボックス化しないように様々な認定を取得するとともに運用についても監査レポートを定期的に提供しています」と清水氏。このようなガイドラインを示すだけでなく、必要であればGlobal規模でAzureを運用しているエンジニアとコミュニケーションを取れるようにし、製薬企業が行う監査などで必要となる情報を得られるようにもしている。

 こういったマイクロソフトの取り組みは、既に顧客からも高い評価を得ている。たとえば大手製薬企業などからは、日本や海外だけではなくローカルとグローバルで連携してガイドラインなどに対応できる体制が評価されているとのこと。「マイクロソフトはグローバルで統一した運用であり、各国に定められているローカルレギュレーションに対応しつつも基本となる運用ポリシーが定まっているところが良いとの言葉をもらっています」と清水氏。

 さらに実際に製薬企業のクラウド化支援を行うパートナー企業からも、評価の声がある。パートナーなどがMicrosoft Azureのデータセンターツアーなどに参加し、直接管理の様子を確認しに行けるのだ。「現場のエンジニアなどと納得するまで会話ができる点は、他のパブリッククラウドベンダーの対応とは異なるとのパートナーの声があります」と佐藤氏も言う。

 今回公開されているCSV適用リファレンスは、TIS、アバナード、JSOL、NTTデータ グローバル ソリューションズの4社が共同してワーキンググループ活動を行った結果で、主にクラウドインフラであるIaaS部分のバリデーションを行うリファレンスとなっている。「ワークグループでは今後はさらに、コグニティブなどを含む各種PaaSベースのAzureのソリューションを対象にCSVに適用できるようにしていきます」と佐藤氏。コグニティブのサービスを利用した結果などは、医薬品領域などでどう判断していけばいいかなど難しい面もある。とはいえそういったものにもマイクロソフトでは積極的に関わり、ITの先端技術を医療、医薬品分野で安心、安全に使えるようにしていくのだ。

 マイクロソフトでは、単に安心、安全なクラウドのインフラを提供するだけでなく、IaaSさらにはPaaSも含め医療、医薬業界のソリューションとして、Microsoft Azureの活用を今後も進めると佐藤氏は言う。こういった姿勢こそが、長い間BtoBで顧客の課題を解決し新たなイノベーションを支援してきたマイクロソフトならではのアプローチなのだろう。

日本マイクロソフト株式会社 パブリックセクター (公共・医療・教育機関) 向けポータル

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