
バックアップ、データ保護のソリューションを展開するアクロニスは、オンプレミスでの製品提供のビジネスから、クラウドでのサービスにシフトしつつある。その上で目指しているのがサイバープロテクションへの変革だ。今や世の中のあらゆるものがデジタル化する中、データに対する重要性が増している。単にバックアップや災害対策などでデータを保護するだけでなく、トータルでデータを守りその利用を促進できるようにする、それが同社の掲げるサイバープロテクションだ。
バックアップ、データ保護から「サイバープロテクション」へ
アクロニスはグローバルにおいて2018年11月11日で15周年を迎え、日本法人も来年10周年となる。アクロニス・ジャパン 代表取締役の大岩憲三氏は、企業としての節目を迎え、ビジネスも変革期に来ていると述べる。
「今まではバックアップにこだわってきましたが、社会を取り巻く環境にも変化があり、データの重みも変わっています。それに合わせ、さまざまな事業を展開することに大きく舵を切っています」

アクロニス・ジャパン 代表取締役 大岩 憲三氏
アクロニスは世界18ヶ国に26のオフィスがあり、20を超える言語で製品の利用が可能となっている。企業ユーザーは50万社以上あり、個人ユーザーも500万人を超える。さらに150ヶ国に5万を超えるパートナー企業もある。
同社のビジネスは個人向けのAcronis True Imageによるイメージバックアップから始まり、その後バックアップからデータ保護のサービスを提供するに至っている。その軸足は変えずに、新たにサイバープロテクションをコンセプトに掲げ、それによりさらにデータに関わるビジネスを展開する。
サイバープロテクションは、データ保護の技術で実現する「Safety(安全性)」と、いつでもデータにアクセスできるようにする「Accessibility」、データの信頼性を高める「Privacy」、データがオリジナルであることを証明する「Authenticity(真正性)」、そして脅威に対する保護の「Security」の5つの要素で構成される。これら5つの頭文字をとり、サイバープロテクションの要素をアクロニスでは「SAPAS」と呼ぶ。

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今後アクロニスでは、このサイバープロテクションのコンセプトに基づいて製品、サービスを提供する。そしてこのサイバープロテクションを実現するのに重要なプラットフォームがクラウドだ。アクロニスではクラウドにもコミットする。
すでに2013年には、Acronis True Imageのイメージバックアップをクラウドに保存する仕組みを提供している。さらに2014年にはクラウドデータセンターを日本に開設し、Acronis Backup Cloudの提供を開始している。2015年には、企業向けのAcronis Backupがクラウドバックアップに対応し、2016年クラウドデータセンターで使用してきたSoftware-Defined Storage「Acronis Storage」を製品としても提供した。そして2018年には、Acronis Data Cloudをリリースし、Acronis Disaster Recovery Cloud、Acronis Files Cloudの機能も提供する。
このようにアクロニスでは、4年ほど前から他のバックアップソリューションのベンダーなどよりも先行してクラウドには取り組んでいる。そして今回は、最新版となる「Acronis Data Cloud 7.8」を発表した(参考記事)。Acronis Data Cloudは、アクロニスのパートナーがアクロニスのサイバープロテクションのソリューションを容易にビジネス展開できるようにするクラウドサービスだ。
現状、ソフトウェアの販売はライセンスの買い切りからサブスクリプション型に移行しており、さらにそこからサービス提供に変わってきている。
アクロニス・ジャパン リージョナルプロダクトマーケティング マネージャーの古舘與章氏は「Acronis Data Cloudでは、データ保護やバックアップも、データを預かるサービスとなっています。それをアクロニスのパートナーが行えるようにします」と述べる。

アクロニス・ジャパン リージョナルプロダクトマーケティング マネージャー 古舘 與章氏
Acronis Data Cloudでは、すでにバックアップやDisaster Recoveryの機能を提供している。またDropboxやBoxなどと似たファイル共有、同期の仕組みなどデータに関する複数のサービスをクラウドから提供している。Acronis Data Cloudは、AWSやAzureの基盤の上で実現しているものではない。自社でデータセンターを運用し提供しており、そのために直営のデータセンターが世界に12ある。他にもパートナーが運営するデータセンターで、Acronis Data Cloudは動いている。
Acronis Data Cloudの提供モデルは、「Acronis Hosted」「Hybrid」「Service Provider Hosted」の3つだ。9割近くのパートナーが、アクロニスのデータセンターにあるAcronis Data Cloudを利用するAcronis Hostedを利用している。Hybridはストレージだけをパートナーが自前で用意する。Service Provider Hostedは、Service Providerのデータセンター上で、Acronis Data Cloudの全てをホスティングし利用する。

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単にデータ保護などの機能を提供するだけでなく、パートナーがAcronis Data Cloudを利用してビジネスを行うのに必要な管理機能も提供する。そのためAcronis Hosted型であれば、パートナーは初期費用はゼロでデータ保護のサービスをビジネス展開できる。その際に、パートナーごとに構成を変更するなど独自カスタマイズができるのも特長だ。カスタマイズでは「見た目」も変更でき、パートナー独自のサービスとして顧客に提供できる。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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