企業がデジタル変革を行い、働き方改革を実現する。これは大手企業などにとっては、もはや当たり前のことだろう。一方でIT担当者などが十分に確保できない中小企業などは、デジタル変革やクラウドの活用はまだまだ十分にできていると言えない企業が多そうだ。そのような中小企業や大手企業のブランチオフィスなどにあるビジネス現場を、デジタルワークプレイスに変革するためにリコーとシスコが手を組んだ。
クラウド利用のセキュリティ確保のためにリコーはシスコと協業する
シスコにはクラウド時代に対応するトータルなセキュリティ技術があり、リコーでは以前からクラウド戦略を進める上で同社と協業できないかを考えていた。一方でシスコは、複合機をグローバルで利用するリコーの大きな顧客でもある。こういった関係があったことで、もう一歩協業を進めさらに両社のビジネスを拡大したいと考えたのだ。

代表取締役 社長執行役員 CEO 山下良則氏
株式会社リコー 代表取締役 社長執行役員 CEO 山下良則氏は、「『働き方改革』ではなく『働きがい改革』でなければなりません」と言う。時短や単なる柔軟な働き方環境を実現するだけでなく、それらを活用し企業の従業員の働きがいを高めていく。デジタルワークプレイスはそれを目指すものであり、それを2社で実現するのが今回の協業の中身だ。
この働きがい改革のために、リコーでは元々オフィスで働く人たちに寄り添ったビジネスを展開してきた。それぞれの業種、企業ごとに従業員がビジネスを行う「現場」がある。そこにはまだまだアナログなものをデジタル化するニーズがたくさんある。とくに働きがいを高めていくためには、従業員同士のコラボレーションが大事だ。コラボレーションが、従業員の知的生産を支えることにもなる。そしてコラボレーションを高めるために、物理的に離れて働く人たちがデータでやりとりする環境を提供する。「その環境を守るのが、リコーの大きな責任です。それを行うための最強のパートナーがシスコです」と山下氏。
アナログなものをデジタル化するリコーの取り組みの1つが、複合カラーコピー機「IM Cシリーズ」の提供だ。これには「クラウドへの招待状」というコンセプトがある。同シリーズの複合機には大型のタッチパネルを搭載しており、アプリケーションやストレージなどさまざまなクラウドサービスを、PCなどを介さずに直接利用できるのだ。これを活用することで「大手企業のブランチオフィスや中企業の顧客にとってちょっと遠かったクラウドサービスを、だいぶ近づけることができます」と山下氏。複合機から、Google DriveやBoxなどのさまざまなクラウドサービスを簡単に利用できるようになるのだ。
複合機を始めとするさまざまなデバイスを適切に利用し、各種クラウドサービスを活用できるようにする環境をリコーでは「デジタルワークプレイス」と位置づけている。デジタルワークプレイスにはマルチクラウドの環境、クラウドに接続するためのネットワーク、クラウドサービスにアクセスする各種デバイスという3つのレイヤがあり、それぞれで高いセキュリティが求められる。複合機などのデバイスの部分については、リコーが責任を持ってセキュリティを確保することになる。残りのクラウドのセキュリティ、ネットワークのセキュリティの部分をシスコと一緒に実現し、かつ、安心安全なデジタルワークプレイスを作り上げていく。
シスコシステムズ エグゼクティブ・バイスプレジデント 兼 最高財務責任者のケリー・クレイマー氏は、クラウドのサービスに対しユーザーは、IT部門からは見えないようなネットワークを使いアクセスしていると指摘する。そういった環境ではセキュリティの確保は不可欠なものだ。「セキュアなクラウドベースサービスをリコーは提供するとしています。シスコはその環境のセキュリティを守り、顧客のマルチクラウド戦略を支えます」とクライマー氏。
セキュアな形でデータにアクセスできるようにし、人々の働き方を変える。これを言うのは簡単だが、中小企業や大企業のブランチオフィスなど、ITリソースなどが少ない、あるいはいない環境ではこれを実現するのはそう簡単ではない。
「そういったところに、2社の協業で新たにソリューションを届けます。これは中小企業にもぴったりのものです。日本から始めて、グローバルに展開します」(クレイマー氏)
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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