第1回はIT人材の枯渇というテーマで書いていきたいと思います。さて、唐突ですが今、IT人材は枯渇しているのでしょうか?
単にマッチしないだけ。枯渇しているように見えている現実
IT人材といってもさまざまな業種、業態、国籍、働く国といったシーン毎に必要な人材やスキルが変わってくることは言うまでもなく、しかしながらIT人材を「使う」立場に立ってみると、そこには必ずニーズが存在します。そのニーズがここ5年くらいで大きく変わってきたと感じています。
その昔、10年前はIT人材のニーズの多くは生産性の向上と品質の追求に偏っていたと思います。今でも特定の仕事においてはその傾向は続いているかもしれません。しかしながら明らかに新しいニーズとして顕在化してきたのが「経営危機を乗り越えるために一緒にイノベーションを起こせるIT人材」です。
昔は経営者からみたITは悪い言い方をしてしまうと、コストにしか見えなかったはずです。ところが最近は経営者自らがデジタル革命やその類の流行り言葉を口ずさみ、ITそのものが経営課題を解決し自社の生き残る道であることを企業によっては中期計画や経営方針として掲げています。そのこと自体は全く否定するつもりはありません。ですが問題は、経営者や発注者が開発の現場やIT人材の本質を知らない事が後に悲劇をもたらすことになります。
どんな問題が起きるのか?読者の皆さんも一度は経験があるのではないでしょうか。よくあるのが「曖昧」「二転三転」「そもそも要求仕様がない」といった丸投げ発注の現実です。少なくとも昔は許されなかったと思います。しかしながら今は違います。発注者の“ニーズ”を汲み取り、解釈し、提案できないと経営者や発注者は「人材が枯渇している」ように見えてしまうのです。「私の言っている事が理解されない。もっと優秀なエンジニアは居ないのか!」と。これは明らかに発注者側の責任で単なる仕事の質が低いということですが、私は発注者にも受注者にも責任があると思っています。