2018年、IT業界ではIBMによるRed Hatの買収が極めて大きな話題だった。そのため、他の買収劇のインパクトは大分薄れてしまったことは否めない。とはいえアドビによるマルケトの買収も、約47.5億ドル(約5,340億円)とかなりの規模だった。この買収劇はBtoCのエンゲージメントに強いアドビがBtoBに強いマルケトを手に入れたという文脈で、比較的好意的に語られることが多い。
マルケトの製品とサービスはAdobe Experience Cloudの中のMarketing Cloudに追加
現状のアドビには、Adobe Creative Cloud、Adobe Document Cloud、そしてAdobe Experience Cloudの3つのクラウドサービスがある。これにAI基盤となるAdobe Senseiがあり、これらクラウドサービスを今AI駆動型のプラットフォームに変えているところだ。

代表取締役社長 日本およびAPAC代表
ジェームズ・マクリディ氏
今回買収したマルケトのサービスは、Adobe Experience Cloudの中のMarketing Cloudのところに追加されることになる。Experience Cloudが対象とするのは、現在、右肩上がりで2桁成長を続けているデジタルエクスペリエンスの市場だ。調査会社によれば、2021年には20億ドル以上の規模になるとも予測されている。アドビではマルケトの製品、顧客が加わることで、この市場でのさらなるシェア獲得を目指すことになる。
米国アドビ本社では、2018年10月にマルケトの買収を終えている。日本法人のアドビシステムズ株式会社でも、2019年3月1日にマルケトの日本法人の買収を完了した。今回の統合によりマルケトの日本法人の社員は、アドビシステムズの社員となり活動することになる。オラクル、セールスフォース・ドットコムを経てマルケト日本法人の社長を務めていた福田康隆氏は、アドビシステムズのマルケト事業統括の専務執行役員に就任する。福田氏は、日本法人 社長のマクリディ氏に直接レポートする立場となるようだ。

アドビシステムズのマルケト事業統括の専務執行役員に就任する
アドビが日本市場に参入して、すでに26年の月日が経過した。「日本には、本社から積極的な投資をしてもらっています。ヨーロッパ、中東およびアフリカ地域、アジア太平洋地域などと同様、アドビでは日本を1つのリージョンとして見ています。日本には、堅調なサブスクリプションビジネスとユーザーのコミュニティがあり、エンタープライズのビジネスも拡大しています。さらにコンサルティングのサービスも拡大しています」とマクリディ氏。今回マルケトのサービスが加わることで、カスタマー・エクスペリエンスのソリューションを再編して新たに取り組むことになる。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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