プログラマーってかっこいいかも
子どもの頃は、サッカー少年だった。小学校時代には区の選抜にも選ばれた。アウトドアのサッカーだけでなく、今時の若者でゲームは好きで良くやっていた。とはいえ、コンピュータの中身には興味を持たなかった。高校はグローバルコースに進み、英語を良く学ぶことに。そして大学は人文学部英米人文学科に入学、短期留学もして英語の能力を伸ばした。就職時には当初、英語を活かせる旅行会社などを目指した。とはいえ思うような就職活動の結果がなかなか出なかった。
そのような時に目にとまった求人が、インサイトテクノロジーのものだった。ITの経験者募集の求人だったが、英語ができる人を優遇するとあった。ITの経験は全くなかったが、英語のところが気になり応募してみることに。話を聞いてみると、インサイトテクノロジーはSIなどのITサービスの会社ではなく、Performance InsightやPISOなどの自社製品を開発し提供している会社だと分かる。
ものを作る会社の仕事は、なんだか面白そうだ。また漠然と「プログラマーってかっこいいかも」とも思う。生まれ育った札幌で働けることも魅力的だった。インサイトテクノロジーも、IT経験のない大橋さんだったが、なかなか興味深い人材だと判断し採用することに。
2016年4月にインサイトテクノロジーに入社、まずはPythonの書籍を教科書に先輩に教えてもらいながらプログラミングの基礎を学ぶ研修から社会人生活が始まった。さすがに経験ゼロからではなかなか研修についていけない。同じような状況の新入社員がもう1人、2人でできなかったこと、分からなかったことを共有していくうちにいつの間にか大橋さんが教える役になる。それで少し、プログラミングスキルが成長することに。
研修後の最初の仕事は、PISOの開発テストの確認だった。テストの仕事はPythonでのプログラミングとは全く異なる。ここでも先輩に教えてもらいながら、一から学ぶことに。テスト作業そのものは、インサイトテクノロジーのベトナムオフィスのメンバーが担当していた。彼らとのやりとりは、得意の英語を使ったチャットだった。ここでは、少し英語の能力を活かせたと大橋さん。徐々に、テストの仕事を一通りこなせるまでになる。
テストの次は、製品のバグ修正の業務だった。これを行うには、プログラムのソースコードを見る必要がある。さらには、サポートなどからの報告をもとに、起きた現象を再現してそれがバグかどうかを確認する必要もある。製品の開発ではインサイトテクノロジーが自社開発した言語「SQeeL(スキール)」を使っており、これにも初めて触れることになった。SQeeLについては、分からないことがあってもGoogleで検索して調べることはできない。これもまた先輩の力などを借りながらスキルを身に付ける必要があった。またJavaScriptを使い製品のGUI周りの修正なども行った。これらで一通りの製品開発に関わるプログラミングのスキルを身に付けることになる。
テストから始まりバグ修正に至る3年ほどの経験を積んだ。もちろん途中では壁にぶつかり、それを試行錯誤で乗り越えなければならなかった。スムースとは言えないが、なんとか与えられた製品開発の仕事を少しずつこなせるようになった。「開発技術のスキルは、まだまだ1割から2割程度だと思っています。これは開発仕事をこなせる最低限のレベルです。先輩からサポートしてもらいながら、分からないことを都度調べて進めるのが現状です」と大橋さんは言う。
3年目にしてプロジェクトリーダーを経験することに
そんな中で、転機が訪れる。大きめのパッチリリースプロジェクトのリーダーをやるように言われるのだ。これまでは指示されたことを先輩のサポートを受けながら実施する立場だった。それから一気に立場を変えてリーダーとして自分が指示を出さなければならない。「リーダーをやれと言われた時には、正直不安のほうがかなり大きかったです。そもそも、リーダーとして何をやればいいかが全く分かりませんでした」と大橋さん。とはいえインサイトテクノロジーには、プロジェクトを進めるための大まかなフローが用意されていた。なので、それを見ながらなんとかリーダー役を務めることになる。
用意されていたフローは、完璧ではなかった。プロジェクトの状況に合わせて、適宜修正しながら進めなければならなかった。大橋さんは、修正をきちんともとのフローに反映させることにした。この後に自分のように突然リーダー役を任される人が苦労しないようにと思ったのだ。
プロジェクトのメンバーは日本に5人、ベトナムに10人という体制。日本は札幌だけでなく本社のある恵比寿のエンジニアもいる。そして、全てのメンバーが大橋さんにとっては先輩だった。指示や調整をする際にはかなりの気を使うことになる。とはいえメンバー間の関係は良好だった。なので人間関係で何らか問題が発生するようなことはなかった。
大橋さんがプロジェクトを進める上で重視したのが、スケジュールをきっちりと守ること。メンバーは当該プロジェクトだけでなく他の仕事を抱えている人も多い。それらとの兼ね合いを考慮しておかなければ、作業はスムースに進められない。そのためプロジェクトの外の情報も把握する必要があり、メンバー間のコミュニケーションはかなり密にする必要があった。そういった努力があり、さらに周りからのサポートも得てプロジェクトは順調に進むことになる。
札幌開発センターにはエンジニアが自然体で働ける環境がある
大橋さんは、インサイトテクノロジーにはチャレンジさせてくれる仕事環境があると言う。「ITの開発に良くある、大量のコードの生成を求められ、残業に追われるようなことはありません。そのあたりは、経験ゼロからでも取り組みやすかったと思います」と言う。実際、残業する人はほとんどおらず、夜8時頃まで残っているとオフィスの最終退室者になるようなことが普通だ。
大橋さんは、小さいバグも修正して問題なくソフトウェアが動くようになるのを見ると、嬉しさを感じる。製品の完成度が高まっていくのを実感できるところは、仕事としてかなり面白いと言う。これまで仕事をしてきて、プログラミング領域の中ではGUI周りの開発に興味を持ち出した。アプリケーションの使い勝手を良くする。そのためにGUIをどう工夫すればいいのか、そこを突き詰めていくことで自分の開発エンジニアとしての武器の1つにしたいと考えるようになった。
また大橋さんは、インサイトテクノロジーの札幌開発センターで働いているエンジニアはみな「自然体」で働いている印象を持っている。ブラックイメージとなりがちなIT業界だが、札幌開発センターにはそんな雰囲気は皆無なのだ。札幌という土地がらが影響しているのかもしれないし、またインサイトテクノロジーの開発スタイルや社風がエンジニアが自然体で働ける環境を生み出しているのかもしれない。
大橋さんはこれまで仕事を経験してきて、開発の仕事は地道に結果を積み重ねることにやりがいを感じるような人に向いているのではと。また「PISOのような自分たちが開発に携わった製品が、大手企業などで採用され活用されている状況を見ると、そこにも仕事としてのやりがいを感じます」とも言う。世の中から求められているものを作っている。それに関われていることで「ああ自分は仕事をしているなぁ」と実感できる。札幌開発センターの自然体で働ける仕事環境が、経験ゼロだった大橋さんを開発者として大きく成長させている。