情報システム部門に着任したら「SAPを新しく。サポートが切れるから」と指令
谷川耕一(以下、谷川):EnterpriseZineのDB Onlineでチーフキュレーターをしております、谷川です。エンジニアから、雑誌の編集や日本オラクルでのマーケティングを経て、現在はフリーランスです。
DB Onlineには「2025年の崖をどう超えるか」という連載があります。一般的に記事は公開から時間が経つにつれて閲覧数が落ちるのですが、この連載の最新記事が出ると過去記事のビューが再び上がるなど関心が高いのが分かります。今回は2025年に関する話題と日本企業がDXにどう取り組むべきかなどをディスカッションします。まずは自己紹介からお願いします。
鍋野 敬一郎(以下、鍋野):フロンティアワンの鍋野です。私が社会人になったのは平成元年、外資系のデュポンリミテッド(当時)に就職しました。会社で初の新卒採用でした。営業中心に活動し、その会社がSAPシステムを使っていたこともあり、後にSAPへ転職してマーケティングや広報などを経て、今では独立して15年が過ぎました。SAPの導入支援や技術系エバンジェリストなどを務めています。
谷川:SAPのバージョンアップの経験も豊富なのでしょうね。
鍋野:最初の会社に入社した時はまだSAP R2でした。会社がグローバルにSAP R3を使い始めたのは98年からでした。SAPはいくつかのメジャーバージョンがありますが、細かいバージョンアップもあります。多くの移行プロジェクトを経験してきました。
数見篤(以下、数見):トラスコ中山の数見です。ジャパンSAPユーザーグループ(以下、JSUG)会長を務めています。私は入社以来、主に営業部門で過ごしてきました。2年前に情報システム部門への辞令があり、初めて情報システム部門での仕事となりました。
谷川:JSUGの紹介をお願いします。
数見:2019年6月からJSUG会長を務めています。現在、会員企業は約600社、登録者は約8000名います。産業、機能、地域など領域ごとの部会で活動しています。世界では42ヶ国でSAPのユーザーグループがあり、海外のユーザーグループとも交流があります。
谷川:個人的には経済産業省が出したキーワード「2025年の崖」と、SAPの「2025年問題」(SAP ERPのサポート切れ)がどちらも2025年で市場が混乱しているような印象を受けます。企業はどう受けとめたらいいでしょうか。
数見:私が情報システム部に着任すると、メンバーから「今後SAPシステムを刷新しなくてはいけない。何故ならシステムサポートが2020年に切れるから」と説明を受け、正直言って理解出来ませんでした。
私にとっては、当社をどんな会社にしていきたいのかを考えるのが第一で、システムが新しくなることには興味がなかったのです。
JSUGでも、多くの方が「新しくしなくてはいけないのは理解しているけど、理由が2025年の崖とか保守切れとするなら、会社に上程するのは難しい」と言います。目的をきちんと見つけなくてはいけないという課題に直面しています。