AzureとMicrosoft 365を組み合わせたWindows Virtual Desktop(WVD)
新型コロナウィルスの影響により、在宅勤務が必要な状況は長引きそうだ。この脅威がなかったとしても、近年では柔軟な働き方の実現に向けて、テレワークが着実に広がりつつあった。これからますます、自宅やコワーキングスペースなど、オフィス以外の場所からのテレワークを安全に利用できるように準備しておくことが欠かせなくなるだろう。
昔のシンクライアントからのアクセスとは異なり、昨今ではBYOD(私有端末の利用)で、企業の垣根を越えたコラボレーションし、SalesforceやOffice 365のようなクラウドサービスなど、テレワークの風景は徐々に変化している。
仮想デスクトップ(VDI)はテレワークのためだけではなく、データ漏えい防止、働く環境を弾力的に提供することにも役立つ。VDIそのものはオンプレミスからDaaS(Desktop as a Service)へと移行が進んでいる。IDC Japanが2018年に発表した予測によると、DaaS市場の2017年~2022年の年平均成長率は25.2%だという。
オンプレミスのVDIだと、ユーザーが軽快に使えるようにするにはパワフルなサーバーやストレージが必要となるため、運用コストも管理負荷も高かった。しかしDaaSだとクラウドサービスなので初期コストが抑えられ、企業規模や要件に合わせて柔軟にスケールアウトできるメリットが普及の後押しとなっている。
マイクロソフトは2018年にマイクロソフト純正のDaaSとなる「Windows Virtual Desktop(以下、WVD)」を発表し、2019年秋にGA(正式版)とした。Microsoft Azure(以下、Azure)で仮想デスクトップをサービスとして提供する。
大きな特徴はWindows 10 マルチセッションが利用可能なこと。これは1台の仮想マシンに複数のユーザーを収容可能ということだ。また2018年に同社が買収したFSLogixの技術により、Office 365の最適化が進んでいるという。Windows ServerのRDS(Remote Desktop Services)からの移行も可能だ。
技術的に見ればWVDはAzureとMicrosoft 365の組み合わせであり、「いいところどり」と日本マイクロソフト 樋口拓人氏は言う。Azureが持つサイバーセキュリティ監視態勢とMicrosoft 365のセキュリティ機能、これら両方をそのまま享受できる。
より詳しく言うと、Azureでは世界で3,500人ものサイバーセキュリティ専門家が運用を監視しており、日々発生する大量のシグナルから脅威分析している。加えてMicrosoft 365が持つ多要素認証や情報漏えい対策機能が使えることになる。
WVDを利用する場合、ユーザー数に応じたライセンス料金とAzureの利用料金が必要になる。ただし、すでにマイクロソフト製品やサービスを使っているなら、ライセンスで追加コストが発生しないケースもある。
主にWindows 10 EnterpriseやMicrosoft 365の一部が対象となる。Azureの利用料金は主にVM、ストレージ、ネットワークなどにかかる。ただし樋口氏によると「Azureの予約インスタンス(Azure Reserved VM Instances)を使うと、通常の従量課金制の料金に比べて最大72%コスト削減可能」だという。
日本マイクロソフトでは、2020年6月30日まで在宅勤務支援を目的として「セキュアリモートワーク相談窓口」を開設し、加えてパートナー各社とともにAzure上で提供されるVDIのPoCをキャンペーン価格で提供する。PoCで使えるVDIはWVDのほか、Citrix Cloud on Microsoft Azure、VMware Horizon Cloud on Microsoft Azureも含まれる。
パートナーは日商エレクトロニクス、伊藤忠テクノソリューションズ、日本ビジネスシステムズ、パーソルプロセス&テクノロジーの4社(パートナーの中にはPoCキャンペーンの申込数上限に達したところもある)。
樋口氏は「4社のパートナーと日本マイクロソフトが一丸となり、企業の在宅勤務を応援していこうと思います」と力強く語った。