SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

直近開催のイベントはこちら!

EnterpriseZine編集部ではイベントを随時開催しております

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

紛争事例に学ぶ、ITユーザの心得

実質、準委任契約なのにシステムの完成責任を負わされる 働いてもお金を貰えないベンダの悲哀

 今回は以前からその問題が指摘され、法改正がなされた後も問題視され続けている偽装請負について取り上げます。

なかなか減らない“偽装請負”の問題

 準委任契約(※)なのに成果物の責任を負わされたり、請負なのに労働時間を規定され発注者からの作業指示にも従わなければならない。ベンダの技術者達が、そんな不利な立場に置かれるいわゆる「偽装請負」。その問題が指摘され、法改正もなされた後もなかなか後を絶たないようです。

 私はこの問題について、これまで何度も各種メディアで取り上げては来ましたが、実際のところ、そうした声がなかなか届いていないようです。今でも請負作業中のベンダを指揮命令下におこうとするユーザや、準委任契約なのにシステムの完成を義務付ける契約が横行している現実はあまり改善されていないように思います。

 今回は、そんな“偽装請負”が問題になった事件を見ていきたいと思います。

 ※準委任契約,@IT

 (東京地方裁判所 平成27年6月25日判決より)

 あるユーザ企業が美容サロン向けのPOSシステム開発をベンダに依頼した。開発は請負業務に関する基本契約と個別契約に基づいて実施され、開発の費用はユーザ企業が、このシステムを組み込んだ製品を販売した代金から配当することとした。

 なお、本件個別契約書においては,ベンダの実施する作業については、両者が協議した上で1人月又は2人月相当と合意した作業をユーザの指示に従って行い、ソースコードを含む開発環境一式、改修箇所および改修方法を示すドキュメントおよび動作保証された実行形式プログラム一式を納品物とすることが取り決められていた。

 ベンダは、この契約に従って、開発を行い納期を守った上で納品した。しかしながら、納品されたソフトウェアには不具合があることから、ユーザはベンダに対する代金の支払いを拒んだ。そこでベンダはその支払いを求めて訴訟を提起した。

 IT開発においてよく見られる請負契約と準委任契約について、少しでもご存じの方なら、この契約のおかしな点に、すぐ気付かれたのではないでしょうか?

 作業の成果物を納品物として、その動作も保証するという部分は確かに請負契約そのものです。しかしながら、作業はユーザの指示に従って行うという行為は、準委任契約か、あるいは派遣契約の匂いすらするように感じます。

次のページ
結局、請負契約なのか準委任契約なのか。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
紛争事例に学ぶ、ITユーザの心得連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

ITプロセスコンサルタント東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員1964年神奈川県横浜市生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。大学を卒業後、日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステムの開発・運用に従事した後、2005年より20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/12912 2020/05/13 10:00

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング