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「PLAZMA 12」レポート#01 【オードリー・タン氏 ☓ コード・フォー・ジャパン】ソーシャルイノベーションを生むための条件

edited by Operation Online   2020/08/19 12:30

 トレジャーデータは2020年7月14日から16日にかけてオンラインイベント「PLAZMA 12」を開催した。同イベントの基調講演では、台湾デジタル担当大臣 オードリー・タン氏と、コード・フォー・ジャパン 代表理事 関治之氏をゲストに迎え、「データと社会のあるべき関係性」をテーマにディスカッションが繰り広げられた。本稿ではそのハイライトをお届けする。

市民を応援するテクノロジーの「3つのF」

台湾デジタル担当大臣 オードリー・タン氏(右)

台湾デジタル担当大臣 オードリー・タン氏(右)
一般社団法人コード・フォー・ジャパン 代表理事 関治之氏(左下)
聞き手:トレジャーデータ株式会社 エバンジェリスト 若原強氏(左上)

 ディスカッションはタン氏の行政院(内閣)での役割を訊くことから始まった。

 日本で「大臣」と聞くと、「政府の頂点にいる偉い人」という印象だが、タン氏の場合は違う。元々、英語における“Minister/minister”という言葉は、大文字の場合は『大臣』、小文字の場合は『代表者』を意味するのだという。

 現在のタン氏の実際の役職のあり方に対応しているのは小文字の「minister」の方であり、中国語の役職名の「政務委員」と合わせて「みんなを後押しするようなポジション」かつ「チャンネル」であると自らの役割を解説した。また、チャンネルについては、様々な価値観を持つ人々が集い、ディスカッションを行う「チャットルーム」がタン氏のイメージに近いと付け加えた。

 このチャンネルという役割が政府に受け入れられたのは、成功要因として「Fast」(速い)、「Fair」(公平であること)、「Fun」(楽しさ)の「3つのF」が成功要因とタン氏は明かした。

台湾デジタル担当大臣 オードリー・タン 氏
台湾デジタル担当大臣 オードリー・タン 氏
シビックハッカーであり、ソーシャルイノベーションを担当する台湾のデジタル大臣オードリーは、コンピュータ言語PerlとHaskellの再活性化や、Dan Bricklinと共同でオンライン表計算システムEtherCalcを構築したことで知られている。 台湾国家発展評議会のオープンデータ委員会とK-12カリキュラム委員会の委員を務め、国内初のe-Rulemakingプロジェクトを主導。Apple社で計算言語学のコンサルタント、Oxford University Press社で群集辞書学のコンサルタント、Socialtext社でソーシャルインタラクションデザインのコンサルタントを務める。また、台湾のシビックコミュニティである、「ゼロから政府の役割を再考する」g0v("Gov Zero")の中心的人物であり政府とのパイプ役を務める。

 1つ目の「Fast」については、翌週に政策をアップデートした例を紹介してくれた。毎週水曜日は、誰でも予約なしで好きな時間にタン氏の部屋を訪れ、話ができる日だ。例えば、台湾は経済刺激策として給付金を支給したが、当初はATMからの現金引出しができなかったという。ある人が水曜日に来て、ATMで給付金を引き出せるようにしてほしいという話を聞くや、翌週からそれが可能になった。

 2つ目の「Fairness」とは、人がテクノロジーに合わせるのではなく、誰でもテクノロジーを使えるようにすることを意味する。EC以外のリアルの小売店で3,000TWDのお金を使ったとき、その翌週にはATMから使った金額の3分の2が補助として戻る「振興三倍券」という仕組みを作ったが、ATM以外の手段を希望する人たちには紙のバウチャーで現金と引き換えられるようにもしたという。

 3つ目の「Fun」は、楽しくやることだ。政府のWebサイトもお祭りのように楽しい雰囲気にしているし、コンテンツを好きなように加工したり、自分の店の動画に加工して拡散したり、ソーシャルメディアにアップしてもいいようにしている。政府が何かしてくれるのを待つのではなく、市民を応援する体制にしたいと考えるためなのだという。

 タン氏の活動の根底にあるのはRadical Transparency(徹底的な透明性)である。2014年3月のひまわり学生運動、2014年末の中華民国統一地方選挙における「Open Government(開かれた政府)」支持などの経験を通して、市民の声を聞くことは新しい台湾の日常となった。閉じた場所で選ばれた人たちだけで会議をするのではなく、立場の異なる人たちと様々な視点を共有する姿勢が育まれている。

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著者プロフィール

  • 冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

     IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタントとして活動中。ビジネスとテクノロジーのギャップを埋めることに関心があり、現在はマーケティングテクノロジーを含む新興領域にフォーカスしている。

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