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【オードリー・タン氏 ☓ コード・フォー・ジャパン】ソーシャルイノベーションを生むための条件


 トレジャーデータは2020年7月14日から16日にかけてオンラインイベント「PLAZMA 12」を開催した。同イベントの基調講演では、台湾デジタル担当大臣 オードリー・タン氏と、コード・フォー・ジャパン 代表理事 関治之氏をゲストに迎え、「データと社会のあるべき関係性」をテーマにディスカッションが繰り広げられた。本稿ではそのハイライトをお届けする。

市民を応援するテクノロジーの「3つのF」

台湾デジタル担当大臣 オードリー・タン氏(右)

台湾デジタル担当大臣 オードリー・タン氏(右)
一般社団法人コード・フォー・ジャパン 代表理事 関治之氏(左下)
聞き手:トレジャーデータ株式会社 エバンジェリスト 若原強氏(左上)

 ディスカッションはタン氏の行政院(内閣)での役割を訊くことから始まった。

 日本で「大臣」と聞くと、「政府の頂点にいる偉い人」という印象だが、タン氏の場合は違う。元々、英語における“Minister/minister”という言葉は、大文字の場合は『大臣』、小文字の場合は『代表者』を意味するのだという。

 現在のタン氏の実際の役職のあり方に対応しているのは小文字の「minister」の方であり、中国語の役職名の「政務委員」と合わせて「みんなを後押しするようなポジション」かつ「チャンネル」であると自らの役割を解説した。また、チャンネルについては、様々な価値観を持つ人々が集い、ディスカッションを行う「チャットルーム」がタン氏のイメージに近いと付け加えた。

 このチャンネルという役割が政府に受け入れられたのは、成功要因として「Fast」(速い)、「Fair」(公平であること)、「Fun」(楽しさ)の「3つのF」が成功要因とタン氏は明かした。

台湾デジタル担当大臣 オードリー・タン 氏
台湾デジタル担当大臣 オードリー・タン 氏
シビックハッカーであり、ソーシャルイノベーションを担当する台湾のデジタル大臣オードリーは、コンピュータ言語PerlとHaskellの再活性化や、Dan Bricklinと共同でオンライン表計算システムEtherCalcを構築したことで知られている。 台湾国家発展評議会のオープンデータ委員会とK-12カリキュラム委員会の委員を務め、国内初のe-Rulemakingプロジェクトを主導。Apple社で計算言語学のコンサルタント、Oxford University Press社で群集辞書学のコンサルタント、Socialtext社でソーシャルインタラクションデザインのコンサルタントを務める。また、台湾のシビックコミュニティである、「ゼロから政府の役割を再考する」g0v("Gov Zero")の中心的人物であり政府とのパイプ役を務める。

 1つ目の「Fast」については、翌週に政策をアップデートした例を紹介してくれた。毎週水曜日は、誰でも予約なしで好きな時間にタン氏の部屋を訪れ、話ができる日だ。例えば、台湾は経済刺激策として給付金を支給したが、当初はATMからの現金引出しができなかったという。ある人が水曜日に来て、ATMで給付金を引き出せるようにしてほしいという話を聞くや、翌週からそれが可能になった。

 2つ目の「Fairness」とは、人がテクノロジーに合わせるのではなく、誰でもテクノロジーを使えるようにすることを意味する。EC以外のリアルの小売店で3,000TWDのお金を使ったとき、その翌週にはATMから使った金額の3分の2が補助として戻る「振興三倍券」という仕組みを作ったが、ATM以外の手段を希望する人たちには紙のバウチャーで現金と引き換えられるようにもしたという。

 3つ目の「Fun」は、楽しくやることだ。政府のWebサイトもお祭りのように楽しい雰囲気にしているし、コンテンツを好きなように加工したり、自分の店の動画に加工して拡散したり、ソーシャルメディアにアップしてもいいようにしている。政府が何かしてくれるのを待つのではなく、市民を応援する体制にしたいと考えるためなのだという。

 タン氏の活動の根底にあるのはRadical Transparency(徹底的な透明性)である。2014年3月のひまわり学生運動、2014年末の中華民国統一地方選挙における「Open Government(開かれた政府)」支持などの経験を通して、市民の声を聞くことは新しい台湾の日常となった。閉じた場所で選ばれた人たちだけで会議をするのではなく、立場の異なる人たちと様々な視点を共有する姿勢が育まれている。

次のページ
便益の提供、そしてソーシャルイノベーションを起こすための柱とは?

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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

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