EnterpriseZine(エンタープライズジン)

EnterpriseZine(エンタープライズジン)

テーマ別に探す

抄録:『絵で見てわかるクラウドインフラとAPIの仕組み』 今さら聞けないクラウドAPIの基本【前編】: IaaS / PaaS / SaaS

  2020/10/05 12:00

1.1.3 IaaS/PaaS/SaaS の違い

 続いて、「販売商品」の観点で整理します。これは、IaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、SaaS(Software as a Service)と呼ばれる分類にあたります(図 1.5)。歴史的には、クラウドサービスの利用は、SaaS タイプのサービスから広がっていきました。

 これは、企業向けの CRM アプリケーションや、個人向けのメールサービスなど、エンドユーザーが直接に利用可能なアプリケーション環境をクラウド上のサービスとして提供するものです。このようなサービスは、クラウドコンピューティングという用語が登場する以前より、ASP(アプリケーションサービスプロバイダー)という名称で提供されていましたが、一種のマーケティング戦略として、「クラウドサービス」という名称で呼ばれるようになりました。

図1.5 IaaS/PaaS/SaaS が提供するリソースの違い
図1.5 IaaS/PaaS/SaaS が提供するリソースの違い

 次に、PaaS タイプのサービスでは、アプリケーションの開発/実行環境がクラウド上のサービスとして提供されます。アプリケーションの開発を始めるには、アプリケーションサーバーとバックエンドのデータベース、あるいは、開発フレームワークやコンパイラーなどの準備が必要です。

 PaaS を利用すると、これらの環境が自動的に用意されるので、アプリケーション開発者は、すぐに開発に取りかかることができます。従来のフレームワークやデータベース環境をそのまま提供するサービスの他に、そのサービスに固有の特別なフレームワークやデータストアを提供するものもあります。

 そして最後は、本書のテーマである IaaS タイプのサービスです。IaaS タイプのサービスでは、サーバー、ネットワーク、ストレージといった、IT インフラの構成要素をサービスとして提供します(図 1.6)。

 サービスの利用者には、それぞれに専用のテナント環境が用意されます。その中において、「仮想ルーター」や「仮想スイッチ」などの仮想的なネットワーク機器、「仮想マシンインスタンス」と呼ばれる仮想サーバー、そして、データ保存のための「仮想ストレージ」などを自由に追加していきます。

 つまり、仮想化された環境内で、サーバー、ネットワーク、ストレージという、IT インフラの 3 大要素を自由に組み合わせて、自分専用のサービス基盤を構築することが可能になります。

図1.6 IaaS タイプのクラウドサービス
図1.6 IaaS タイプのクラウドサービス

 先の図 1.5 に示したように、SaaS/PaaS/IaaS は、ユーザーに提供される IT リソースの範囲の違いと捉えることもできます。しかしながら、IaaS の上に PaaS が作られる、あるいは、PaaS の上に SaaS が作られるという単純なものではありません。

 たとえば、SaaS の場合、サービスの利用者から見えるのは、あくまでアプリケーションのユーザーインターフェースです。アプリケーションの機能でマルチテナント化することにより、同じサーバー上で稼働する 1 つのアプリケーションを複数ユーザーに利用させることも可能です。インフラそのものを仮想化することは、必須というわけではありません。

 一方、IaaS の場合は、サーバーやネットワークなど、インフラの構成要素そのものをユーザー個別に提供する必要がありますので、それぞれのコンポーネントを仮想化して提供することは、ほぼ必須の要件となります[※ 1](図 1.7)。

 このように、IaaS タイプのクラウドで提供されるリソースは、物理環境から切り離されて仮想化されているという点に大きな特徴があります。この後で説明するように、仮想化によって抽象化されたリソースを効率的に操作するうえで、API が大きな役割を果たすことになります。

図1.7 SaaS/PaaS と IaaS の本質的な違い
図1.7 SaaS/PaaS と IaaS の本質的な違い

 ※1 IaaS タイプのクラウドサービスには、物理サーバーを利用できるものもあります。このようなサービスにおいても、物理サーバーであることを意識せずに仮想マシンと同様の手続き(API)で利用できるため、「API から操作する」という本質は変わらないと考えて良いでしょう。

絵で見てわかるクラウドインフラとAPIの仕組み

Amazon  SEshop  その他


絵で見てわかるクラウドインフラとAPIの仕組み

著者:平山 毅、中島 倫明、中井 悦司、矢口 悟志、森山 京平、元木 顕弘、平山 毅 監修
発売日:2016年02月18日
価格:2,838円(税込)

本書について

本書では、主にIaaS(インフラサービス)を中心としたクラウドを使ったシステム構築を想定し、クラウドインフラ構築に携わるエンジニアが知っておきたい知識――クラウド共通の機能や内部構成、アーキテクチャなど――について解説します。



関連リンク

著者プロフィール

  • EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)

    「EnterpriseZine」(エンタープライズジン)は、翔泳社が運営する企業のIT活用とビジネス成長を支援するITリーダー向け専門メディアです。データテクノロジー/情報セキュリティの最新動向を中心に、企業ITに関する多様な情報をお届けしています。

バックナンバー

連載:翔泳社の本

もっと読む

All contents copyright © 2007-2020 Shoeisha Co., Ltd. All rights reserved. ver.1.5