1-5 サイバー演習の全体像
効果的・効率的なサイバー演習のために、演習の全体像を解説します。
1-5-1 全体の流れ
サイバー演習の設計については、図表1-20のように事前準備から、演習実施後の振り返りまでを計画的に進めていく必要があります。必要なことを順序建てて推進していくことで、手戻りのない効率的な推進ができます。
1-5-2 事前準備を行おう
サイバー演習を実施するトリガーは様々です。経営層から直接指示されることもあれば、他社の被害状況を受け、ボトムアップというかたちで、現場部門からやるべきだという声があがることもあります。その際、プロジェクトチームを組織して推進することが多いでしょう。組織ができたら必要な情報収集・整理を行い、経営側の意向も聞いた上で、スケジュールを決め、スケジュールに則り推進していきます。
1-5-3 演習計画書を作ろう
次はサイバー演習の骨格をかたちづくりましょう。サイバー演習は、まず範囲(参加対象者・部門、対象フェーズ、対象システムなど)を明確にし、目的(ルール・手順の確認、意思決定・判斷力の向上など)、手法(机上、実働、総合など)と進めていくと効果的です。また併せて、実施日時や演習当日の準備物やプログラム、レイアウトなども演習計画書にまとめていきます。
1-5-4 演習シナリオを作成しよう
演習計画書がまとまったら、次に演習の肝ともいえるシナリオづくりに入ります。シナリオについても押さえるべき勘所があり、誰が攻撃してくるのか、その動機は何か、どんな手法でそのシステムに攻撃し、どんな被害が出るのか、を整理していきます。
1-5-5 サイバー演習を開催しよう
演習シナリオが作成できたら、いよいよサイバー演習の開催に向けて最終の準備を進めていきます。まずサイバー演習で必要となる資料類(投影資料や解説資料、演習参加者アンケートなど)を用意していきます。また、演習当日の役割分担を行い、演習本番前には必ずリハーサルを行いましょう。リハーサルでうまくいけば、本番もかなりの確率で成功するでしょうし、リハーサルで改善点が見つかれば、演習本番までに改善することで、成功する確率は上がります。
1-5-6 振り返りをしっかりやろう
サイバー演習の実施が終わったら、必ず振り返りを行いましょう。振り返りをしっかり行い、参加者が感じた課題や改善点などを拾い上げ分析することで、今後の改善に大いに役立ちます。また、経営陣が参加しているのであれば、経営陣からも感想を聞きましょう。経営陣の危機感が醸成されていれば、その後のサイバー対応のスピードは飛躍的に向上します。
次回からはそれぞれのステップについて具体的に解説します。