SAP on AzureとVDIのニーズは拡大方向に
説明会の前半には、日本マイクロソフト 田中 啓之氏が「Microsoft Azure」の製品戦略について振り返った。今期のAzureビジネスは、主に「クラウドへの移行」「アプリの変革」「クラウド導入・活用支援」の3つを主軸にして展開させていったという。
その中でも田中氏は、「SAPジャパンと取り組んできた『SAP on Azure』に勢いがある。また、日本市場は世界的に見ても、オンプレミスのVDI市場が大きいため、力を入れてクラウド化を進めてきた」と振り返る。
新型コロナウイルスの感染が拡大する前よりクラウド移行の需要は高まっており、日本マイクロソフトではSAPの手掛けるERPパッケージソフトウェアをAzure上で稼働させる「SAP on Azure」というソリューションを提供している。
特にSAP ERPを導入している企業でも「SAP S/4HANA」への移行をきっかけに、クラウド上で稼働させることを検討しているケースも多いという。そのため、すでにSAP on Azureへの移行では100件以上の実績があるといい、昨年度には 三井物産株式会社の基幹システム移行も手掛けているという。
また、オンプレミス環境にあるVDIのクラウド化では、「Windows Virtual Desktop」にMicrosoft Azureのアクティブディレクトリ認証を組み合わせる形で、グローバル展開での引き合いが増えていると田中氏は説明する。
実際に、IDC Japanが公表している「国内パブリッククラウドサービス市場予測」によると、SaaS・Paasの2019年から2024年にかけての売上額は約20%の伸びが予想されている中で、Microsoft Azureは約80%以上の年次成長率で市場を拡大している。
また、新型コロナウイルスの影響について田中氏は「成長率は落ちてしまったが、2021年から2022年にかけて、コロナ禍を乗り切るためのシステム投資へシフトする。2022年以降はデジタルトランスフォーメーションに力を入れる企業が増えるため、コロナ禍以前よりも伸びていく予測になっている」と強調した。
CCoEの浸透にも注力
今後について田中氏は、Microsoft Azureの戦略の主軸は変わらないものの、「既存アプリケーションのAzureへの移行」と「クラウドネイティブなアプリ開発と既存アプリのモダナイズ」に再注力していくと述べる。
「新型コロナウイルスの影響を受けてアプリケーションのクラウド化を多く依頼されているが、従来のリフト&シフトは中長期的な視点に立っていえば戦略的投資ではない。アプリケーションのモダナイズに加えて、CCoE(クラウド・センター・オブ・エクセレンス)というチームを企業の中につくり、DXを推進していくことが大切」と田中氏は説明する。
このCCoEとは、企業・組織におけるクラウド戦略やガバナンスを担当するチームのことで、部門横断的にクラウド利用を促進する狙いがある。日本マイクロソフトは、昨年よりこのCCoEの設置に取り組んでおり、すでに大手十数社においてはCCoE主導の下、DXを推進させているという。今後も、この戦略には注力していくと田中氏は締めた。