オフィスを持たないという選択をしたGitLab
2020年10月16日に「リモートワークに関するベストプラクティス」をテーマに、GitLabの記者説明会が開催された。GitLabは、主にソフトウェア開発で用いられるオープンソースのDevSecOpsソリューションを提供しており、ゴールドマンサックスやNVIDIA、シーメンスなどの大規模な組織を含めた3,000万人を超えるユーザーを持つ企業である。そして現在では、68の国と地域で1,300人を超えるメンバーを抱えながらも、オフィスを構えないフルリモートワークを実施し成功しているという。
しかしながら、「GitLabがすべての業務をリモートワークで行えるというのは、最初から意図したものではなかった」と同社リモート統括責任者のマーフ氏は経緯を紹介する。
もともとGitLabは、ウクライナでディミトリー・ザポロゼッツ氏が2011年にオープンソースのコラボレーションツールを公開したことが始まりだったという。翌年、2012年に現在CEOを務めているシド・シブランディ氏がサービス化を持ちかけ、2014年に起業に至った。
そして、2015年には9人のメンバーと共に米サンフランシスコで、スタートアップ企業へ投資をしているY Combinatorのプログラムを卒業し支援を受けるために、最初で最後となるオフィスを構えた。
「実は、オフィスを構えて3日でメンバーが現れなくなった」とマーフ氏は明かす。その理由の多くが、通勤時間がもったいなく家族との時間が削られるというものだった。これを契機にオフィスを持たないフルリモートワークというスタイルが確立されたという。もちろん、当初は懐疑的な見方をされることもあったが、サービスが評価されていく間に投資家やユーザーからも理解を得られるまでになったとマーフ氏は説明した。
日本においても、新型コロナウイルスの影響でリモートワークという働き方に注目が集まっているが、マーフ氏は「多くの企業でポストコロナ時代においても、仕事をする場所を選ばない柔軟性が求められてくる」と主張した。
リモートワーク導入で重要なこと
一時的なもので終わらないからこそ、企業・組織にとって重要となってくるのが文書化することだとマーフ氏は述べる。「特に、新しくリモートワークを始める企業には、透明性が求められてくる。何をするにしても、企業や組織がどこに向かっているのかということを、社員に理解してもらう必要がある」と説明する。
実際に、GItLabでは全てを文書化しハンドブックとしてまとめているとマーフ氏は紹介する。これによって、何か起こった際にも、すべての社員が同じものを参照することによって、合理的な判断が行えるようになるという。
また、リモートワークを行う際には文書化以外にも、自立性を持った人材を採用するということを重要視しているとマーフ氏は紹介した。自分自身でしっかりとセルフマネジメントできるという要素がリモートワークでは大切になるからだ。
そして、多くの企業で共通する課題としてメンタルヘルスの管理も挙げられるという。「リモートワークに慣れていない人は、プライベートと仕事の時間を切り分けることが難しいことも多く、メンタルヘルスの管理は重要だ」とマーフ氏は説明する。
実際にGitLabでは、カレンダー上で通勤時間にあたる部分に予定を入れないという取り組みを行っているという。本来なら通勤をしているであろう時間を、ワークアウトや家族と触れ合うなど有意義だと思うことに充てることで、仕事とプライベートの切り替えを行いやすくしているのだ。
一方で、フルリモートワークという働き方を、すべての企業に適用することは難しいともマーフ氏は説明した。GitLabのようにデジタルワーカーが多い企業ではリモートワークへ移行しやすいが、製造業や医療関係など現場での業務が必要な場合は、部分的なところからリモートワークへ移行していく必要があるという。